今回は片頭痛治療剤のイミグランについて解説します。
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イミグランとは?
それではまず名前の由来からいきましょう。イミグランはIMIGRANと表記されますが、これは片頭痛を意味するMigraineに由来しています。一般名はスマトリプタンです。
イミグランの作用を簡単に説明すると「片頭痛の発作時に服用することで、脳の血管を収縮させ頭痛を抑える」になります。
それではまず、片頭痛について解説していきましょう。
片頭痛とは?
片頭痛とは女性に多く見られる頭痛の一種で、頭の片側でズキンズキンと脈動するように痛みを感じる発作性の頭痛のことをいいます。
片頭痛と診断するためには、まず以下の前提条件が必要となります。
・頭痛が起きている間に悪心や嘔吐、光過敏・音過敏を感じている
・一度頭痛が起きると4時間~72時間持続する
これを満たした上で、更に以下の4つの項目のうち、2つ以上を満たす必要があります。
・片側に痛みを感じている
・脈動するように痛みを感じている
・中等度以上の強い頭痛を感じている
・歩行などの日常的な行動で頭痛が悪化する、又は頭痛のために日常行動を避ける
片頭痛に特異的なものとして有名な前兆症状ですが、前兆症状がある場合とない場合に分けられます。
前兆症状としてはキラキラした光や目のちらつきなどの視覚的なものが多くみられ、その他にもしびれや言語障害などが起きる例もあります。
発作が誘発される原因は様々言われており、ストレスや疲れ、睡眠不足や食事の影響、天候や気圧などによっても発生することがわかっています。
片頭痛が起きるはっきりとしたメカニズムは解明されていませんが、それについての仮説が提唱されています。
まずは1960年代から提唱されている「血管説」について紹介します。
片頭痛が起きる前兆症状が局所的な血管収縮によって発生し、その後に血管が拡張することによってその周辺に炎症を起こし、片頭痛を引き起こしているという説です。
この説の根拠になるものが脳内神経伝達物質であるセロトニンです。
セロトニンは血管を収縮させる効果を持っているのですが、何らかの原因によってセロトニンが分泌されることによって血管が収縮し、その後セロトニンが時間経過によって消失することで血管が過度に拡張してしまうことが原因とされています。
しかし、この仮説では吐き気や光過敏などの随伴症状が起きる理由に関しては明確な説明ができておらず、原因とするには根拠が弱いものでした。
その後、随伴症状から原因を考えた際に生まれたのが「神経説」です。
神経の活動に異常をきたしてしまったことで脳の血流が一時的に低下してしまい、神経伝達の不備によってさまざまな随伴症状が起きているという仮説ですが、今度は頭痛の説明に対して根拠が弱くなってしまいました。
こういった経緯を経て、現代では血管説と神経説を合わせた仮説である「三叉神経血管説」が有力な仮説として用いられています。
三叉神経が何らかの原因によって異常に興奮することによって、その末端から神経伝達物質であるセロトニンが分泌されてしまい、その結果として血管が収縮・拡張してしまうことによって炎症が発生し、頭痛を起こしているというものです。
この炎症反応の他にも、三叉神経が過剰に興奮することで、副交感神経などの自律神経系も併せて興奮してしまうことが発生し、さまざまな随伴症状を引き起こす原因となるのです。
この仮説によって、片頭痛のメカニズムを合理的に説明することが可能になりました。
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イミグランの作用機序と特徴
イミグランは血管壁にあるセロトニン受容体の一種5-HT1B受容体に作用(刺激)することによってセロトニン様の効果を発揮し、血管の拡張を抑制します。
また、三叉神経の5-HT1D 受容体に作用することで、三叉神経終末から放出されるCGRPの放出を抑制させる効果も併せもちます。これによって痛みの感受性を低下させ、炎症を抑制しているのです。
片頭痛の治療で用いる医薬品は、普段から継続して服用し、その発作・悪化を抑制する医薬品と、前兆症状の段階で服用し、悪化を抑える医薬品、実際に発作が起きてから治療のために服用する医薬品に分けられます。
イミグランは発作が起きてから服用して効果を発揮するタイプの医薬品であり、予防的な服用や前兆症状が起きているときに使用しても、その効果は期待できません。
片頭痛発作が起きたタイミングで、早期に使用することがより効果的に使用するコツです。
イミグランの剤形には錠剤、点鼻液、注射があり、服用後の効果発現時間はそれぞれ30分、15分、10分程度となっています。初回用量や服用間隔について以下にまとめました。
商品名 | 初回用量 | 投与間隔 | 追加用量 | 1日上限量 |
イミグラン錠50 | 50mg | 2時間 | 50mg 2回目以降は100mgも可 | 200mg |
イミグラン点鼻液20 | 20mg | 2時間 | 20mg | 40mg |
イミグラン注3 | 3mg | 1時間 | 3mg | 6mg |
イミグランキット皮下注3mg |
イミグランの副作用
イミグランでは服用した患者のうち、約12%に副作用の発現が報告されています。
発生しやすい副作用は悪心・嘔吐、眠気、体の痛み、倦怠感です。ただし、これらの副作用は片頭痛の随伴症状だったものを副作用と誤認しているものも含まれるため、純粋にイミグランのみが原因だとは言い難い部分でもあります。
重大な副作用として報告されているものは、急な血圧の低下や呼吸不全、顔面蒼白などの症状を起こすアナフィラキシーショック、痙攣・意識消失を伴うてんかん発作、胸痛や不整脈を伴う虚血性心疾患となります。
これらの症状が見られた場合には速やかに投与を中止し、適切な処置を行うことが求められます。
その他の副作用として、振戦・ジストニア、眠気やめまいなどの精神神経症状、一過性の視力低下やちらつきなどが起きる眼症状、動悸や徐・頻脈、血圧変動などの循環器症状、じんましんや皮疹などの過敏症状、呼吸困難や異常な冷感・熱感などの感覚異常を伴う違和感などが報告されています。
イミグランの相互作用、注意事項
イミグランには併用禁忌の医薬品が複数あります。
エルゴタミンなどの麦角アルカロイド製剤や、同系統のトリプタン系製剤でセロトニン受容体に作用する医薬品は、相互に効果が増強し、血管収縮・血管攣縮を起こしてしまう危険性があるため併用禁忌となっています。
イミグランは代謝酵素であるMAO(モノアミン酸化酵素)によって分解されるため、覚せい剤原料のMAO阻害薬(エフピーOD錠2.5)と併用することで効果が増強するため、こちらも併用禁忌です。
また、セロトニン受容体に作用する医薬品であるため、抗うつ薬のパキシルなどのSSRI、サインバルタなどのSNRIの併用はセロトニン作用が増強する可能性があり、不安な気持ちになったり、イライラしたり、興奮、震え、体が固くなる、発熱、動悸などの症状が現れるセロトニン症候群がみられる可能性があります。
妊娠中の使用に関して添付文書では有益性がある場合にのみ使用となっていますが、トリプタン系の医薬品で悪影響が出たという報告はなく、その中でもイミグランは使用経験が多いです。
他の製剤よりも比較的安全性が高いと言えますが、自己判断ではなくしっかりと医師の判断のもとで治療を継続することが大切となります。授乳についてはイミグラン服用後12時間以上あければ影響がないとされています。
それではイミグランについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。