今回は潰瘍性大腸炎治療剤のレクタブルについて解説します。
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レクタブルの名前の由来
「Rectum:直腸」と「Bubble:泡」を組み合わせてRECTABUL:レクタブルと命名されています。
レクタブルの作用機序と特徴
レクタブルは重症を除く潰瘍性大腸炎に適応を持つ日本初の注腸フォーム剤であり、2017年12月7日に発売された医薬品です。
諸外国では2006年から使用されており、2017年には世界36か国で使用された実績があります。
日本では喘息治療吸入薬であるシムビコートに配合されている成分ですが、潰瘍性大腸炎に対する抗炎症効果を狙い、泡状にして注入できるように改めて開発されました。
開発途中に「医療上の必要性が高い未承認薬・適応外薬検討会議」に早期承認の要望が出されるほど、その効果は潰瘍性大腸炎患者のQOLを改善できると期待されていたのです。
レクタブルは直腸及びS状結腸に到達した医薬品が局所に密着して留まり、投与後にも漏れにくいという特徴を持っています。
薬効成分は下降結腸上部では8%程度しか届かず、横行結腸では0%の到達率となっているため、病変が直腸及びS状結腸にある場合では非常に効果的ですが、それよりも上部に病変がある場合には効果が期待できません。
局所作用型副腎皮質ホルモン(ステロイド)であり、経口薬のような全身性の副作用を減らした上で、局所における抗炎症効果を最大限に発揮できるように設計されています。
その抗炎症効果は、グルココルチコイド受容体を介して種々の抗炎症タンパク質産生を促すとともに、炎症性物質である多くのサイトカインの産生を抑制して抗炎症効果を発揮します。
また、ホスホリパーゼの働きを抑制することで、炎症性物質を生み出すアラキドン酸代謝経路を抑制する作用も持っており、二つの経路で強力に炎症を緩和します。
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レクタブルの副作用
レクタブルでは使用者の54.3%に副作用が認められています。
主な副作用は血中コルチゾール減少(41.1%)、血中コルチコトロピン減少(35.4%)です。
その他の副作用では、5%未満の副作用として肝機能検査値異常、高血圧、血中TG増加、CK増加などが報告され、1%未満の副作用として、頭痛・不眠・めまいなどの精神神経症状、胃潰瘍、痔核などの消化器症状、白血球増加症などの血液症状、ざ瘡などの皮膚症状、末梢性浮腫などが報告されています。
頻度不明の副作用として数多くの種類が挙げられていますが、これらは外国からの情報をもとに記載しているもので、実際に日本国内で問題とはなっていません。
レクタブルの使い方と注意事項
レクタブルは注腸フォーム剤であるため、ノズルの先端を直接肛門から直腸に挿入して1日2回投与します。ステロイドによる治療であるため、免疫抑制作用による易感染には注意しなければいけません。
また、接触性皮膚炎を誘発する可能性があるセタノール及びプロピレングリコールを含有する製品であるため、腸管外に付着した場合には速やかに拭き取るようにしましょう。
ブデソニドに過敏症の既往歴がある患者では、禁忌とされています。局所作用型で全身性の副作用は少なくなっていますが、骨密度の減少、消化管潰瘍、糖尿病、緑内症などの可能性が完全に否定されているわけではありません。
使用の前に患者の状態をしっかりと把握し、水痘・麻疹の既往の確認や生ワクチンの使用制限、肝炎ウイルスの活性化などの可能性に配慮した対応が必要になります。
またレクタブルはCYP3A4で代謝されるため、CYP3A4阻害剤であるイトラコナゾール、エリスロマイシン、シクロスポリン、コビシスタット等の医薬品やグレープフルーツジュースはレクタブルの血中濃度上昇の可能性があり、併用注意となっています。
吸入剤のデータではありますが、イトラコナゾールの経口剤とブデソニドの吸入剤の併用により、ブデソニドのAUC(血中濃度-時間曲線下面積:利用可能な薬の量)が4.2倍に上昇したデータが存在しています。
妊娠中の使用は、有用性が危険性を上回る場合にのみ使用することになっています。動物実験の段階で催奇形性の報告があるため、できる限り使用は避けるべきものだと言えるでしょう。また、乳汁中に分泌されてしまうため、授乳中の使用も控えるのが望ましいと思われます。
それではレクタブルについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。
出典:レクタブル2mg注腸フォーム14回:添付文書
レクタブル2mg注腸フォーム14回:インタビューフォーム
東北大学大学院薬学研究科 平澤典保氏著:ステロイドの基礎
EAファーマ株式会社:レクタブル2mg注腸フォーム14回製品情報