今回は亜鉛を含む胃潰瘍治療薬プロマックについて解説します。
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プロマックとは?
それでは名前の由来からいきましょう。今回はとてもわかりやすいです。「胃を守る」は英語で「Protect Stomach」。この下線部を組み合わせてPromac:プロマックと命名されています。一般名はポラプレジンクです。
プロマックの作用を簡単に説明すると「胃粘膜を覆って保護することで創傷治癒を促したり、不足している亜鉛を補充することで味覚障害を改善する」となります。
それではもう少し詳しくみていきましょう。
プロマックの作用機序と特徴
プロマックは胃潰瘍を適応に持つ医薬品で、その構造は亜鉛を中心にしたものです。胃潰瘍以外にも、適応外処方とはなりますが、亜鉛欠乏症を原因とする味覚障害にも用いられています。
適応外とはいえ、その作用にはエビデンスがしっかりと裏付けされており、調剤報酬申請においても査定されることはなく、厚生労働省が発表している適応外使用が認められる医薬品にも名前を連ねています。
プロマックの作用機序は次のものが報告されています。
胃粘膜に対する作用
プロマックは胃粘膜の中でも特に潰瘍付近に優先して蓄積する効果があり、有効成分が長時間潰瘍部分に留まって被覆することにより、潰瘍を刺激から保護する効果があります。
さらに、胃粘液の分泌量・胃粘膜の血流量を維持する効果と細胞保護作用によって、細胞の障害を抑制し、増殖細胞を活性化させて潰瘍を早期に改善する効果を発揮します。
フリーラジカル除去作用
フリーラジカルや活性酸素などの酸化物質を除去し、さらに発生も抑制する効果がある為、酸化物質による細胞障害を緩和する効果を持ちます(抗酸化作用)。
亜鉛補充作用
細胞の新陳代謝や免疫力の維持など、体内において生命を維持するために必須の作用を持っている亜鉛ですが、アルコールの過剰摂取や偏った食生活などによって不足しやすい栄養素でもあります。
亜鉛不足の初期症状は、爪に現れる白い斑点と味覚障害が主なものとなりますが、プロマックはこれらの亜鉛欠乏にまつわる病変を改善する効果が期待できます。
味を感知するためには味蕾(みらい:舌に存在する味覚を感じる器官)が不可欠です。味蕾を構成する主成分は亜鉛であることから、亜鉛欠乏によって味覚障害が発生してしまうのです。
これは亜鉛を補充することによって改善が期待できる症状であるため、亜鉛が補充できるプロマックを適応外として使用しています。
亜鉛の過剰摂取によって下痢や腹痛などの症状が発生することは稀にありますが、基本的に人体は亜鉛などのミネラルを体内で一定に保つ作用があるため、充足していれば吸収が低下して排泄が促進され、深刻な状態となることはほぼありません。
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プロマックの副作用
プロマックでは服用した患者のうち2.9%に副作用の発現が認められており、その中でも主なものは発疹等の過敏症が0.12%、便秘が0.22%、嘔気が0.12%でした。
重大な副作用としては、肝機能検査値の上昇や黄疸、持続する倦怠感を主な症状とする肝機能異常や、亜鉛による銅の吸収阻害によって汎血球減少や貧血が起きてしまう銅欠乏症が報告されています。もし発生した場合には、服用の中止や必要成分の補充など、適切な対処が求められます。
その他の副作用として、腹部膨満感や下痢、胸やけなどの消化器症状、発疹・掻痒感などの過敏症状が報告されています。これらの症状が現れた場合はかかりつけの医師・薬剤師に相談するようにして下さいね。
プロマックの注意事項
プロマックは口腔内崩壊錠であるプロマックD錠75と散剤であるプロマック顆粒15%の2剤型が発売されていますが、その効果に違いはありません。
金属製剤であるため、一部の薬剤と併用することでキレートと呼ばれる化合物が作られ消化管からの吸収が低下してしまいます。ペニシラミン製剤(商品名:メタルカプターゼ等)とレボチロキシンナトリウム(商品名:チラーヂンS)が添付文書上では併用注意となっています。
ちなみに、上記以外のキレート形成が懸念される製剤(テトラサイクリン系抗菌薬やニューキノロン系抗菌薬)では、吸収の低下は認められませんでした。
プロマックは胃内pHに依存して亜鉛を遊離するため、食後投与で胃内pHが上昇している状況ではキレート形成できるほどの亜鉛濃度に到達しないというのが、その理由となります。
妊娠中のプロマックの使用は、添付文書では安全性が確立していないとされていますが、妊娠中は亜鉛欠乏状態に陥りやすく、胎児に対して悪影響はないとされているため、あえて服薬させるという考えの医師も存在します。
ただし、自己判断での服用は絶対にせず、必ず医師の判断の上で使用するようにしましょう。
それではプロマックについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。