季節の変わり目は体も不安定になりやすいものです。暑い夏から秋冬にかけての変化は特にそうで、風邪を引くことも多くなり、インフルエンザウイルスも流行を始めていきます。
その治療では西洋薬が一般的ですが、漢方薬にも治療を得意としているものがあります。その中の一つが麻黄湯です。今回は麻黄湯(マオウトウ)についてお話していきます。
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麻黄湯の名前の由来は?
麻黄湯は4つの生薬から構成されており(詳しくは後述)、主薬は麻黄(マオウ)なります。麻黄湯はこれに由来します。
麻黄湯の特徴と飲み方
麻黄湯は杏仁(キョウニン)、麻黄(マオウ)、桂皮(ケイヒ)、甘草(カンゾウ)が含まれる漢方薬。咳や鼻づまりなどの風邪の症状や節々の痛みに対して使用されています。
基本的には体力があり、発熱しても汗をかいていない人(ここ重要!)に向けて処方されるお薬で、発汗を促すことによってその薬効を発揮していきます。使用する方を間違えると症状が悪化したり、副作用に悩まされる可能性があるため注意が必要です。
麻黄湯はただの風邪のみならず、インフルエンザに対しても効果を発揮することが最近の研究によって判明しています(こちらについては後述します)。
麻黄湯の文字にも含まれている「湯」というのは、その漢方薬の形を表しています。つまり、もともとはお茶のような液体状の薬だったわけです。液体だったものから抽出して、現在流通されている粉の形としています。
薬の効果を最大限発揮させるには、当然もとの形に則した形が良いとされており、麻黄湯の場合には液体状に戻してあげることが推奨されています。発汗を促すための漢方薬であるため、お湯で飲むことが体にもプラスに働くことでしょう。
ただし、効果をきちんと発揮させるためには適したお湯の温度が必要です。だいたい40℃~60℃が適切な温度とされており、熱湯には入れないように注意しましょう。
熱湯に入れてしまうと薬としての成分が揮発してしまう危険性があるからです。ぬるめのお湯に溶かしての服用が、薬の効果をより発揮するコツとなります。
また発汗作用を持つ麻黄湯には生姜湯を混ぜて飲むと効果的。味も飲みやすくなりますのでおすすめです。
麻黄湯の副作用
麻黄湯に関する副作用は、配合されている生薬に由来するものです。
甘草が含まれているため、注意しなければいけないのはそれに由来する偽アルドステロン症やミオパチーです。これらは高血圧や低カリウム血症による筋力の低下などが主症状になります。
ただし、配合されている用量から考えれば、発生することはないとは言えませんが非常に少ないと言えるでしょう。他の漢方薬の併用により甘草の量が多くなっていなければ、心配しなくてもよいと言えます。
次に気を付けていただきたいのが、麻黄による症状です。麻黄にはエフェドリンが含まれているため、交感神経が刺激されることにより不眠や頻脈などの症状が出ることがあります。心臓に疾患を抱えている方などには、特に注意していただきたい部分です。
ちなみにエフェドリンはドーピングの検査対象となっています。スポーツ選手は風邪やインフルエンザに罹患しても麻黄湯は飲まない方がいいでしょう。
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麻黄湯はインフルエンザに有効?
麻黄湯の効果は発汗を促して体内の熱を発散させるものですが、そのほかにも炎症を抑える作用とウイルスの増殖を抑える作用が研究により判明しています。
通常であればウイルスに感染した細胞は自己消化機能によって排除されていきますが、インフルエンザウイルスはこの自己消化機能を阻害することが知られています。さらにその細胞を排除するため、体内では炎症反応を起こして様々な物質が放出されています。
麻黄湯はそこに作用することにより自己消化機能の回復が得られ、炎症物質の過剰な分泌が抑えられることで、抗ウイルス作用が発揮されると考えられています。
効能又は効果
悪寒、発熱、頭痛、腰痛、自然に汗の出ないものの次の諸症:
感冒、インフルエンザ(初期のもの)、関節リウマチ、喘息、乳児の鼻閉塞、哺乳困難用法及び用量
通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。ツムラ麻黄湯エキス顆粒(医療用)の添付文書より引用
通常麻黄湯は「1回1包(2.5g)1日3回 毎食前(毎食間)」で処方されることが多いと思いますが、インフルエンザに対して使用する場合、初回のみ2包(5g)服用したり、2~3時間の間隔で服用するように指示されることがあります。
以前当院に在籍していた医師が漢方に詳しく、毎年インフルエンザシーズンになると上記にように処方していたのを思い出します。
また抗インフルエンザ薬とは作用機序が異なるため、併用されるケースもあります。抗インフルエンザ薬について知りたい方は以下の記事もどうぞ。
参考記事:抗インフルエンザ薬の特徴と比較一覧 | 作用機序や副作用など
麻黄湯は妊婦・授乳婦は飲んでもいい?
西洋薬はダメで漢方薬は良い。そんなのは迷信です。先程お話した通り、麻黄湯の主成分である麻黄にはエフェドリンという成分が含まれています。
このエフェドリンは発汗を促し、気管支の機能を補助して風の諸症状を改善させるのですが、末梢の血流を少なくしてしまう効果があります。
妊婦が服用した場合、胎児に十分な血流が供給されない危険性があるために、産婦人科学会では使用してはいけないものと分類されています。
ただし、母体の危険性が上回る場合には使用を考慮します。もちろんその際は担当の医師ときちんと相談して服用するようにして下さい。長期間の使用は胎児への影響を考えて避けるべきですが、短期間であれば影響は少ないと考えられています。
授乳婦も服用することが可能です。母乳中に移行したとしてもごく微量であり、赤ちゃんに対して悪影響が出る可能性は低いと考えられます。ただこちらも妊婦同様、担当の医師に確認した上で服用するようにして下さいね。
まとめ
漢方薬で風邪といえば葛根湯が有名ですが、麻黄湯もしっかりとした実績のある漢方薬です。
近年の研究では、インフルエンザに対しても西洋薬と同等の効果を発揮すると考えられています。今回の記事で少しでも麻黄湯に関して理解が深まれば幸いです。
それでは麻黄湯については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。