今回は抗アレルギー薬であり、第二世代抗ヒスタミン剤のザイザルについてお話します。
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ザイザルとは?
ザイザルは1986年ベルギーで承認された抗アレルギー薬ジルテックの光学異性体になります。
まず光学異性体について簡単に説明していきます。構造が左右対称に鏡写しになっていることを鏡像関係といい、光学異性体とはこの対称となる立体構造を持つ化合物のことを意味します。
通常ある物質が合成される時には鏡像関係にある2つの物質が同じ量だけ混ざったものができます。ちなみにこれをラセミ体といいます。
ジルテックの場合ですと、片方(R体)はもう一方(S体)よりもヒスタミン受容体に30倍結合しやすく、また離れ難いという性質を持っている事がわかりました。
だったら”R体だけ飲めばいいのでは?”って思いますよね。実はその抜き出したR体がザイザルというわけです。一般名はレボセチリジンです。
ちなみに名前の由来はインタビューフォームには記載はありませんが、アレルギーの最終兵器ということで”XYZ”+”Allergy”を組み合わせ、Xyzalと命名されたと言われています。
ザイザルの作用を簡単にお話すると『アレルギーの原因となる化学伝達物質ヒスタミンがヒスタミン受容体に結合するのを抑えるとともに、他の化学伝達物質の放出も抑え、症状を改善する』となります。
それではまずアレルギー反応が起こるしくみについてお話していきましょう。
アレルギーのメカニズムとは?
それではまず感作(かんさ)について説明していきますね。感作とは『ある抗原に対して敏感になること』です。アレルギーの前段階と捉えればわかりやすいかもしれません。アレルギー反応はいきなりは起きないのです。
まずアレルギーの原因となる異物(抗原)が体の中に入ります。すると免疫細胞と呼ばれる部分が次に同じ抗原が入ってきた時に対抗できるよう、IgE抗体と呼ばれるタンパク質を作ります。
その後IgE抗体は肥満細胞と呼ばれる部分に結合し、抗原が来るのを今か今かと待ち構えています。これが感作と呼ばれる状態です。
そして再び抗原が体の中に入ってきた時にIgE抗体が抗原をキャッチします。これを抗原抗体反応といいます。
すると肥満細胞が刺激され、ヒスタミンやロイコトリエン、トロンボキサンA2、プロスタグランジンなどの化学伝達物質(ケミカルメディエーター)が放出されるのです。
ヒスタミンは体の中の様々な場所に存在するヒスタミン受容体に結合します。神経線維の一つであるC線維にあるヒスタミンH1受容体(以下H1受容体)に結合するとC線維が興奮し、それが脳に伝わるとかゆみとして認識されます。
またヒスタミンは知覚神経のH1受容体にも結合します。すると知覚神経が興奮し、その興奮が脳に伝わるとくしゃみ中枢が刺激されくしゃみが出ます。またその興奮が分泌中枢に到達すると鼻腺が刺激され、鼻水が出るのです。
また血管内皮細胞(血管の一番内側の細胞)にあるH1受容体に結合すると血管内皮細胞が収縮し、敷き詰められていた細胞と細胞の間に隙間ができます。すると血漿成分が漏出(血管透過性の亢進)し浮腫(むくみ)や蕁麻疹を、また漏出した成分が貯まると鼻詰まりを引き起こします。
ロイコトリエンも鼻の粘膜の血管透過性を亢進させるため、鼻の粘膜が腫れて鼻詰まりの原因となります。
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ザイザルの作用機序と特徴、ジルテックとの違い
ザイザルはH1受容体に結合することで、ヒスタミンがH1受容体に結合するのを邪魔します。また肥満細胞から化学伝達物質の放出を抑える作用も持っています。
これにより鼻水や蕁麻疹などのアレルギー症状が抑えられるのです。ちなみにジルテックもこの作用は基本的に同じです。
冒頭でお話しましたが、ジルテックのラセミ体のうち、R体だけを抜き出しのがザイザルです。R体はS体よりもヒスタミン受容体に結合しやすく、離れにくい。一方S体は眠気を引き起こす作用がR体よりも強いとされています。
R体が作用のメインとなりますので、効果の方は”ジルテック錠10mg ≒ ザイザル5mg”と考えて頂いて結構です。また上記より、理論上ザイザルの方がジルテックよりも眠気の副作用が少ないと言えます。
だったら「ジルテックで眠気が出た患者様はザイザルに変更すればOK!」…と言いたい所ですが、残念ながら必ずしもそうはなりません。ザイザルを服用された方には意外と眠気の訴えがみられるのです。
もちろん変更する価値はありますが、抗ヒスタミン剤の効果は個人差が大きいため、こればかりは実際に服用してみないとわからないというのが正直な所です。
また剤形の方ですが、ジルテックは錠剤とドライシロップ剤、ザイザルは錠剤とシロップ剤が販売されています。ドライシロップ剤は服用時水で溶解する必要がありますが、シロップ剤はそのまま服用する事ができます。
ジルテックドライシロップは2歳以上にしか適応がありません。しかしザイザルシロップは服用方法が簡便であるため、生後6ヶ月から処方することが可能です。ちなみに錠剤は両剤とも7歳以上となっています。
ザイザルの副作用
まずは眠気。ザイザル(ジルテックも)は第二世代の抗ヒスタミン剤のため、脳には移行しにくいのですがゼロではありません。そのためどうしても眠気の副作用が出る方はいます。ジルテックよりは少ない程度と認識して下さい。
そのため自動車の運転等危険を伴う機械の操作はしないようにして下さい。他にめまい、ふらつき、頭痛等がみられる場合もあります。
続いてけいれん。成人では稀ですが、小児でたまにみられる場合があります。理由として、けいれんを抑えるGABA(ギャバ:γアミノ酪酸)神経系が小児では未発達である事が挙げられます。
GABAは抑制性神経伝達物質と呼ばれ、文字通り神経の興奮を抑える作用を持っています。小児ではこれの代わりに脳内でヒスタミンがH1受容体に結合することでけいれんを抑制すると考えられています。
ザイザルはこれを邪魔するわけですから、けいれんを誘発する可能性があるのです。
次に口渇などの抗コリン作用。第二世代のザイザルは第一世代よりもH1受容体に選択的に結合しますので、抗コリン作用が弱いという特徴があります。そのため緑内障や前立腺肥大症には禁忌ではありません。
しかしこれについても一部はアセチルコリン受容体に結合してしまいますので、ゼロではありませんので注意は必要です。
他に肝機能障害が見られる場合もあります。食欲が落ちたり、体がだるくなったり、黄疸などが出現した場合は医療機関を受診するようにして下さい。
それではザイザルについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。