今回は漢方薬の参蘇飲(ジンソイン)について解説します。
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参蘇飲の名前の由来
含まれる12種類の生薬(次項参照)のうち、主薬である人参と蘇葉から一文字ずつ抜き出して組み合わせ、参蘇飲と命名されています。
参蘇飲の作用機序と特徴
参蘇飲は咳や風邪に適応を持つ漢方薬で、含まれている生薬は以下になります。
- 半夏(ハンゲ)
- 茯苓(ブクリョウ)
- 葛根(カッコン)
- 桔梗(キキョウ)
- 前胡(ゼンコ)
- 陳皮(チンピ)
- 大棗(タイソウ)
- 人参(ニンジン)
- 甘草(カンゾウ)
- 枳実(キジツ)
- 蘇葉(ソヨウ)
- 生姜(ショウキョウ)
東洋医学では漢方薬の適応を判断するため、個別の患者の状態を判断する「証」という概念を用います。
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参蘇飲に適応のある証は虚証・寒証・気虚で、体力が低下気味で冷え性、特に胃腸虚弱がある人に向いている漢方薬です。
参蘇飲は配合生薬が多いために速やかな効果は期待できませんが、風邪の症状全般に穏やかな効果を発揮していくことで知られており、風邪の引きはじめや、風邪の症状が治まってきているのに咳が残って長引く状態に改善効果が期待できます。
添付文書には以下のように記載されています。
効能又は効果
感冒、せき用法及び用量
通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。ツムラ参蘇飲エキス顆粒(医療用)の添付文書より引用
漢方薬は薬理的な作用機序が解明されていないものが多く、参蘇飲も例外ではありません。そのため、含まれている生薬からその効果を考察していく必要があります。
人参・大棗で体力を補い、人参・半夏・生姜・陳皮・蘇葉で胃腸虚弱を整え、陳皮・桔梗・枳実・前胡によって咳を鎮めます。
蘇葉・葛根は軽い発汗効果も持っているため解熱効果を発揮し、前胡・甘草・桔梗で喉の痛みを改善します。桔梗には膿を排出する効果があるので、鼻水の症状にも効果的です。
胃腸虚弱でも使用できるため、高齢者や子供であっても使用しやすい漢方薬であり、添付文書では子供への使用経験は少ないとなっていますが、実際には小児科においても使用された経験も比較的多いです。
一般的に体力が低下している虚証の患者の風邪では桂枝湯が第一選択薬となるため、参蘇飲が選ばれることは稀です。
ただし、胃腸虚弱が著しい場合や喉の痛みが強い場合には、桂枝湯よりも参蘇飲の方が効果的であるという研究結果が存在するため、患者の病態に応じて使い分けることになるでしょう。
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参蘇飲の副作用
参蘇飲では副作用の発現頻度が明確になる調査を行っていないため、その詳しい発生頻度は不明です。重大な副作用としては甘草に由来するものが報告されており、使用する際にはその兆候となる症状に注意が必要です。
低カリウム血症や血圧の上昇、浮腫を引き起こしてしまう偽アルドステロン症、前述の低カリウム血症の結果として筋肉の動きに悪影響を与えてしまうミオパチーの発生が報告されています。それらの可能性がある場合には、服用の中止やカリウム剤の投与などの適切な処置が必要になります。
その他の副作用として、発疹・蕁麻疹などの過敏症状が現れることがあります。服用中にこれらの症状が現れた場合は、かかりつけの医師、薬剤師に伝えるようにして下さい。
参蘇飲の飲み方と注意事項
参蘇飲は1日2~3回に分けて空腹時に服用するのが効果的です。もし服用を忘れて食事をしてしまった場合には、効果は減弱してしまう可能性はありますが、気づいた時点で服用しても構いません。
服用に当たっては、約60℃のぬるま湯で溶かして服用する方が効果的だと言われています。あまりに熱いお湯では薬効成分が揮発する可能性があるため、注意してください。
有効成分の重複には注意を要するものがあり、甘草を含む漢方薬の併用には注意しなければいけません。
前述している甘草による副作用が発現してしまう可能性があるため、甘草を含有している漢方薬はもちろん、甘草の有効成分として含有されているグリチルリチン酸を使用している医薬品も同様に注意する必要があり、併用注意となっています。
妊娠中の使用に関して、添付文書では「有益性が危険性を上回る場合に使用すること」となっています。
ただし、参蘇飲は古くから妊婦の風邪に対して処方されてきた実績があり、医師の判断の上で使用する分には、安全性は高いものだと言えるでしょう。
含まれている生薬である半夏が、わずかに流産の可能性をアップするという実験結果はありますが、生姜と同時に使用することでリスクは消失するというデータがあります。
とはいえ、服用の際は自己判断は避け、必ず医師の判断を仰ぐようにして下さいね。
それでは参蘇飲については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。