保険調剤薬局の責務は「保険薬剤師に厚生労働省令で定めるところにより調剤に当たらせるほか、療養の給付を担当しなければいけない」というモノです。

 

健康保険の健全な運営を確保する必要がある調剤薬局にて、新たな動きがあります。それは生命保険・医療保険の取扱いです。

 

今回は調剤薬局での保険代理店としての役割と必要性などについてお話していきます。

スポンサーリンク

健康保険、生命保険・医療保険とは

 

保健調剤薬局であれば、健康保険については毎日のように気を付けなければいけない分野ですね。日本では国民皆保険制度が実施されているため、一部を除く日本国民は何らかの公的医療保険に加入しています。

 

全額支払うことになっては非常に高額になってしまう医療費について、その人の収入よって負担金を決定する、すべての人が医療を受けられるようにするための制度です。

 

それに対して生命保険及び医療保険とは、民間で実施されているものになります。相応の掛け金を支払うことで、有事の際にはそれに見合った給付金を受け取ることができるというモノです。

 

健康保険では治療を受けた際にすぐに適応させることができますが、生命保険・医療保険では後日申請することにより審査を受ける必要があり、給付が認められなければ給付金を受け取ることができません。

一部の保険薬局が民間の生命保険を取り扱い開始

 

公的医療保険である健康保険を扱う保険薬局が、民間の生命保険・医療保険の取扱いを始めています。日本調剤が生命保険会社大手の第一生命と提携を開始し、調剤薬局でありながら保険代理店としても活動を始めました。

 

医療提供施設として薬局が認められたのは2006年のこと、まだ記憶に新しいお話です。過去の薬剤師・調剤薬局は、医療提供施設として認められるため、薬剤師の地位向上と職能の発揮に専念してきました。

 

長い間調剤薬局が医療提供施設として認められなかったのは、調剤薬局が営利を目的とした会社が運営していることも原因の一つといわれています(もちろん全てではありません)。日本では医療を提供する施設は営利目的の活動をするべきではないとされているためです。

 

そんな中、調剤薬局内で明らかな営利目的を持った業務である民間の生命保険・医療保険を販売するというのは、先人が努力の末に勝ち取った立場に対してどのような影響を与えていくのか、よく考えなければいけないことでしょう。

スポンサーリンク

保険薬局が保険代理店となるメリット・デメリット

 

薬局内で保険の専門家に対して相談できるというのは、自分の病状についての詳細を把握したうえで、それに伴って保険加入の可否を即座に判断できるというメリットが存在しています。

 

治療によっては公的医療保険では高額になってしまう場合もあるため、民間医療保険による補助を考えることができるのはメリットと言えるかもしれません。

 

企業としても新たな事業を始めるにあたり、今持っている顧客に対してアプローチできるものを新商品とするのが理にかなったマーケティング手法です。

 

そのため、健康に不安を持っている現在の顧客である患者に対して、もしもの時の保障を謳って生命保険の販売を行うことは利益を生み出しやすい構造といえます。

 

ただし、薬局で医療に関する商品以外を販売していくことは、医療提供施設として認められたばかりである調剤薬局の、今後の動向を左右しかねない事である点がデメリットとなるでしょう。

 

高額になってしまった医療費に対して、還付申請や高額療養費制度に対する説明をするべきところ、利益を優先して民間保険をすすめるといったことがあるとすれば、それは由々しき事態です。

調剤薬局の今後の方向性は?

 

調剤報酬は改定があるたびにマイナス改定となっています。薬価は毎回引き下げられ、調剤報酬は据え置きとは言われていますが、算定するのが困難な項目もあるために実質的にマイナス改定といえるでしょう。

 

収入が減っているのが現状の中、新たな収入源として保険代理店業務に進出する保険薬局ができたのは、今後のことを考えると、ある意味仕方のないことなのかもしれません。

 

出来ることなら現在の保険薬局の業務を国に認めてもらい、調剤報酬による十分な成果を得られることを目標とした運営を行っていきたいものですが、政府の動向次第では、こういった医療に関係のない業務を行う保険薬局も増えていく可能性は高いのかもしれません。

まとめ

 

保険薬局が民間の生命保険・医療保険を取り扱う保険代理店となることは、今のところメリットも存在しており、頭ごなしに否定できるものではありません。

 

新たな薬局の形として、顧客の求めるものを提供できており、本来の医療提供施設としての役割も十分に果たしていただければ、それは素晴らしいことと言えるでしょう。

 

今後の動向次第でどのようにもなってしまう今回の試み。一部の薬局により行われたことが、業界全体のマイナスイメージになってしまわないようにして頂きたいものです。

 

それでは今回の記事は以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。