近年、夏季の猛暑日の増加に伴って熱中症の発生件数も増加の傾向にあります。

毎年ニュースで取り上げられつつも後を絶たない熱中症。

いったいどのようにして起こるのか?注意をすべき症状や予防法とは?効果的な水分の補給方法は?熱中症から身を守る方法について紹介します。

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熱中症の原因と起こるメカニズム

 

熱中症が起こる原因には、「環境的要因」と「身体的要因」の大きく2つの原因があります。

環境的要因

気温や湿度が高いこと、無風状態や風が弱いこと、日差しが強いことなど

身体的要因

激しい運動などで熱が体にたまること、暑さに体が慣れず体温調節がうまくいかないこと、疲れや寝不足・体調不良による自律神経の乱れなど

 

これらの要因が重なることで体の中に熱がたまると、体温が上昇し、また急激に汗をかくことで水分や塩分が不足してしまい、結果的に筋肉や血流・中枢神経など様々な場所に影響し熱中症の症状が現れます。

熱中症の種類と症状

 

熱中症というのは、暑い環境下における体温調節の異常や体内のイオンバランスの乱れによって起こる症状を総じて言うもので、熱中症と言ってもその症状は様々です。では具体的にどのような症状が起こるのかを詳しく見てみましょう。

 

熱中症の症状は、主に、「熱疲労」「熱射病」「熱けいれん」「熱失神」の4つに分類されます。

熱疲労

大量に汗をかいたことで水分が不足することにより、体が脱水状態になっている時に見られる症状です。

症状:全身倦怠感、頭痛、集中力・判断の低下、悪心・嘔吐など

熱射病

長く日射を浴びたり暑い室内に長時間居たりしたときに、体温が上昇し中枢機能が正常に働かなくなることにより起こる症状です。

症状:高体温、意識障害(意識朦朧、認知・反応の低下)、言動がおかしい、など

熱けいれん

大量に汗をかいた時、水分は補給されていてもイオンの補給が不足し、血中のナトリウム濃度が低下した時に起こる筋肉のけいれんです。

症状:筋肉痛、手足のつり、その他様々な場所の筋肉のけいれん

熱失神

皮膚の血管が拡がることにより血圧が低下し、全身の血流量が減少、更に脳の血流量が減少することにより起こる一過性の意識消失のことを言います。

症状:めまい、顔面蒼白、一時的な失神、など

熱中症の予防法

 

それでは、熱中症にかかるのを予防する為にはどのようなことに気を付ければいいのでしょうか。

 

熱中症予防のために、日本気象学会により「日常生活における熱中症予防指針」が出されています。外出時や運動時、日常生活などは、こちらを参考にして注意するといいでしょう。

 

暑さ指数(WBGT) 注意すべき生活活動の目安 注意事項
危険(31℃以上) すべての生活活動で起こる危険性 高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい。外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する。
厳重警戒(28~31℃以上) すべての生活活動で起こる危険性 外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する。
警戒(25~28℃以上) 中度以上の生活活動で起こる危険性 運動や激しい作業をする際は定期的に十分に休息をとり入れる。
注意(25℃未満) 強い生活活動で起こる危険性 一般に危険性は少ないが、激しい運動や重労働時には発生する危険性がある。

※暑さ指数(WBGT)とは、アメリカで提唱された指標で、「気温・温度・輻射熱」という3つの要素から算出された温度の指標です。ここではWBGTによる参考温度を基準にしています。

日常生活における熱中症予防指針(日本気象学会より引用 一部改変)

 

また、熱中症は急に暑くなった日に起こりやすいという特徴もあります。人間の体にはもともと環境への適応能力が備わっているのですが、急に暑くなると体温調節や汗などが適応しきらないためです。梅雨の晴れ間や梅雨明け直後など、急に暑くなった日は特に注意をしましょう。

 

熱中症の環境的要因のひとつに「風が弱い」こともありましたね。特に高齢者や乳児などの場合、体温調節の機能がうまくいかず、無風の室内や風通しの悪い環境でも熱中症にかかることがあります。温度・湿度・風通しや服装に注意をすることが、熱中症の予防につながります。

 

更に、体温調節のためには汗をかいて体の熱を逃がすことも大切なことです。しかし、汗をかくと体内の水分とイオンが失われてしまいます。予防の為にはこまめな水分補給が大切。効果的な水分補給のためには経口補水液がおすすめです。

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なぜ熱中症には経口補水液?スポーツドリンクはダメ?

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経口補水液とは、熱中症の予防や脱水症状の改善のために効率的に水分を補給できるように、塩分と糖分を加えた飲料のことを言います。

 

普段、人間の体の中では主に大腸で水分が吸収されますが、脱水症状や下痢を起こしている時はこの大腸での水分吸収があまりできず、更にイオンの流出が起こっていることが多くあります。

 

この時、補給する水分の中に塩分と糖分を加えると、小腸でナトリウムイオン(塩分)とブドウ糖(糖分)が吸収されるのに伴って水分も吸収されることがわかっています(共輸送系)。

 

つまり、脱水症状の時に経口補水液を補給することで、通常の水分吸収を担う大腸からではなく、小腸から水分とイオンを補給することができるのです。

 

さて、脱水時には水よりも経口補水液の方が吸収がいいことは分かりましたが、では、同じく塩分と糖分を含むスポーツドリンクではどうでしょう?

 

この二つを比べるために、経口補水液とスポーツドリンクに含まれる糖分の違いについて見てみましょう。

 

経口補水液は自分で作ることもできますが、市販で売られているものの中で最も有名なのは、厚生労働省認可の個別評価型病者用食品である「OS-1(オーエスワン):大塚製薬」ですね。こちらのOS-1に含まれる糖分はブドウ糖です。

 

一方、色々なメーカーから発売されているスポーツドリンクを見てみると、含まれる糖は「ブドウ糖果糖液糖」、「砂糖」、「果糖のみ」、「糖分なし」など様々です。ちなみに、砂糖は分解されるとブドウ糖と果糖に分かれるので、水に溶かすと「ブドウ糖果糖液糖」と同じになります。

 

ここで注目すべきは、ブドウ糖のみが配合されたスポーツドリンクはなく、そのほとんどが果糖メインになっていることです。

 

果糖はブドウ糖に比べて甘みが強く、まるでジュースのように美味しいと言うメリットがあります。しかし、小腸からの糖類の吸収率を比べたある研究では、ブドウ糖溶液と果糖溶液を比べると果糖溶液の方が明らかに水分の吸収率が悪かったという結果が出ています。

 

小腸にはナトリウムイオンとブドウ糖と水分を吸収する仕組みはあるのですが、果糖はその仕組みでは吸収されないので同時に起こる水分吸収も起こりません。つまり、小腸での水分吸収を期待するのであれば、果糖よりブドウ糖の方が効果的だということです。

 

また、一般的なスポーツドリンクとOS-1を飲み比べてみると、スポーツドリンクは甘みが強く、OS-1は少し塩気のある味がします。これは、OS-1の方が電解質濃度が高く糖質濃度が低いためです。経口補水液では、効率良く水分吸収が行われるように浸透圧も計算されているのです。

 

もちろん、スポーツドリンクが水分補給によくないというわけではありません。どちらも塩分と糖分が含まれており、スポーツ後の水分補給・電解質補給の場合であればスポーツドリンクで十分です。

 

しかし、脱水時や水分補給に緊急性が高いような場合は、経口補水液の方が適していると言えるでしょう。

まとめ

 

高温・多湿・無風に日射などの「環境的要因」と、激しい運動や体温調節の不慣れ・体の不調などの「身体的要因」がいくつか重なることにより発症する熱中症。特に高齢者や乳幼児では屋内外を問わず発症する危険性があり、甘く見ると命にかかわることもある疾患です。

 

予防のためには、温度・湿度・風通しや服装に注意をすること、梅雨の晴れ間や梅雨明けなどの急に暑くなった日は特に注意をすること、汗をかいたあとはこまめに水分補給することなどが効果的です。

 

また、脱水時の水分補給には、水ではなくブドウ糖と塩分が配合された経口補給液を飲むことで、効果的に失われた水分とイオンを補給することができます。

 

熱中症の予防方法や正しい対処方法を知り、夏季の熱中症から身を守りましょう。

 

それでは熱中症と経口補水液については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。