今回は抗真菌薬のネイリンカプセルについて解説します。薬価については未収載です。

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ネイリンカプセルとは?

ネイリンカプセルは、爪白癬に適応を持つ抗真菌薬です。2018年1月19日に製造販売承認を受け、経口の抗真菌薬としては20年ぶりの新規医薬品となっています。

 

名前の由来ですが、爪(NAIL)に薬物が入る(IN)という作用から、両者を組み合わせてNAILIN:ネイリンと命名されています。一般名はホスラブコナゾール L-リシンエタノール付加物カプセル(ちょっと長いですね…)です。

 

これは抗真菌作用を発揮するラブコナゾールのプロドラックとして、ホスラブコナゾールL-リシンエタノール付加物が用いられており、体内に吸収されると速やかに代謝されて有効成分のラブコナゾールへと変化するようになっています。

 

ネイリンカプセルの作用機序と特徴

ネイリンカプセルは爪の伸長周期に合わせて用法が設定されており、1日1回1カプセルを12週間経口投与します。服薬期間の延長は保険請求上難しいかもしれません。

 

すでに変色してしまった爪を改善する効果はないため、爪の生え代わりが無い限りは色調の改善はありません。伸長期間経過後にも症状が持続している場合は、他の治療方法も考慮するべきでしょう。

 

真菌感染症は完治が難しい病態である為、治療期間中は自己判断での中止はせず、しっかりと医師の指示通りに使用を続ける必要があります(これ重要です)。

 

真菌感染症には、皮膚表面・角質までが感染している「表在性真菌症」、皮下組織や爪まで感染が進行している「深在性皮膚真菌症」、内臓まで感染が進行している「深在性真菌症」の3段階があります。

 

表在性の場合には外用薬の使用で症状の改善が期待できますが、深在性皮膚真菌症以上の状態では、通常は内服薬を使用しなければ改善は難しいものとなっています。

 

特に爪は外用薬が浸透しづらいため、外用薬のみではなく内服薬も併用しての治療が推奨されているものです。

 

爪白癬を引き起こす真菌は、人間の細胞と同じように細胞膜を持っています。ただし、その構成成分に違いがあり、人間の場合にはコレステロールが主成分なのに対し、真菌ではエルゴステロールが主成分となっています。

 

ネイリンカプセルはその点に着目した作用機序を持っており、エルゴステロールの生合成を阻害することによって、新たに真菌が分裂するのを抑制します。

ネイリンカプセルの効能効果・用法用量

ネイリンカプセルの効能効果・用法用量をみる

効能又は効果
〈適応菌種〉
皮膚糸状菌(トリコフィトン属)

〈適応症〉
爪白癬

用法及び用量
通常、成人には1日1回1カプセル(ラブコナゾールとして100mg)を12週間経口投与する。

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ラミシール、イトリゾールとの違い

ラミシール(一般名:テルビナフィン)は、真菌の細胞膜の構成成分であるエルゴステロールとスクアレンの合成を阻害する静菌的効果と共に、一部の真菌に関しては直接細胞膜を破壊する殺菌的効果も発揮します。

 

イトリゾール(一般名:イトラコナゾール)では、真菌の細胞膜の構成成分であるエルゴステロールの合成を阻害しています。

 

イトリゾールはネイリンカプセルと同系統であるアゾール系に分類されるため、その作用に大きな違いはありません。

 

ラミシールはアリルアミン系であるために作用機序は異なりますが、通常の真菌に対しては細胞膜の合成を阻害するという、ほぼ同様の効果となっています。

 

ただ注意点として、ラミシールでは肝機能障害について警告が出されており、イトリゾールでは併用禁忌の医薬品もあるため、今のところ使い勝手の良さや安全性の面ではネイリンカプセルが優位となっています。

 

ただし、今後の臨床使用によって情報が蓄積することにより、警告の発令や併用禁忌が追加される可能性もあるため、絶対的に優れているとは判断できません。

 

抗真菌能力では、ラミシール・イトリゾールよりも弱い数値が示されていますが、爪への移行性などを考えれば効果に大きな違いは生まれないものと考えられます。

ネイリンカプセルの副作用

ネイリンカプセルを使用した患者のうち、23.8%に副作用の発現が認められています。主な副作用はγ-GTP増加(15.8%)、ALT増加(8.9%)、AST増加(7.9%)、腹部不快感(4%)血中Al-P増加(2%)となっています。

 

重大な副作用には、各種肝機能検査値の上昇を伴う肝機能障害が報告されています。定期的な肝機能検査を実施し、異常があれば服薬を中止する等の対処が必要になります。

 

その他の副作用として、便秘や腹部不快感、消化不良などの消化器症状、白血球数・赤血球数の変動などの臨床検査値の異常、膀胱炎、高尿酸血症、口角口唇炎などが報告されています。

 

これらの症状が見られた場合はかかりつけの医師・薬剤師に伝えるようにしましょう。

ネイリンカプセルの注意事項

ネイリンカプセルは肝薬物代謝酵素CYP3A4を阻害すします。そのため、CYP3A4によって代謝される医薬品(シンバスタチンやミダゾラム等)の血中濃度が上昇する可能性があり、併用には注意が必要です。

 

また、ネイリンカプセルが分類されるアゾール系抗真菌薬は、ワーファリン(ワルファリンカリウム)と併用することで著しい抗凝固能(INR)の上昇が確認されています。ネイリンカプセルでの確認はありませんが、同様に注意が必要です。

 

妊婦又は妊娠している可能性がある場合には、ネイリンカプセルは使用することができません。動物実験では、通常の用量未満で胎児の骨形成不良や水晶体混濁などの催奇形性が認められ、生存率の低下も認められています。

 

またラブコナゾールの半減期が長いため(最長消失半減期 600mg投与:209.77時間)、投与終了後も3ヶ月間は避妊する必要があります。

 

授乳中の使用に関しても、動物実験(ラット)において乳汁への分泌が確認されているため避けた方が良いでしょう。

 

それではネイリンカプセルについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

出典:
ネイリンカプセル 添付文書・インタビューフォーム
ラミシール 添付文書・インタビューフォーム
イトリゾール 添付文書・インタビューフォーム
MSDマニュアル プロフェッショナル版 皮膚真菌感染症