今回は「内耳障害にもとづくめまい」に対して処方される医薬品「セファドール」について解説します。メリスロンとの違いについても触れていきます。

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セファドールとは?

 

名前の由来ですが、頭部を意味するCephaloと一般名のジフェニドール:Difenidolの下線部を抜き出しCephadol:セファドールと命名されています。

 

セファドールの作用を簡単に説明すると「内耳内の血流を改善し、神経興奮を抑制することでめまいを改善する」になります。

 

それでは作用機序についてもう少し詳しくみていきましょう。

セファドールの作用機序と特徴

 

冒頭でお話しましたが、セファドールは「内耳障害にもとづくめまい」に適応があります。内耳障害とは、人間の平衡感覚をつかさどる内耳に何らかの不具合が生じ、それによってぐるぐると周囲が回転しているようなめまいが発生している状態を指しています。

 

内耳障害となる場合に多いのが、内耳内にリンパ液が過剰に溜まってしまっている状態です。つまりリンパ液をなんとかできれば症状の改善が期待できることになります。

 

セファドールは内耳内の血流を調節し、血流の流れが滞っている部分を緩和し、スムーズに血流循環させる効果を持っています。血流循環が促進されることでリンパ液の代謝も促進され、内耳障害が改善されるのです。

 

さらにセファドールは、めまいによる過剰な神経興奮を抑制する効果も持ち合わせています。めまいによる神経興奮を抑制することで、早期にめまいから回復することができるとされており、血流改善効果も相まって効果的にめまいを改善させることが可能になるのです。

セファドールの副作用

 

セファドールには重篤な副作用の報告はなく、比較的使用しやすい医薬品といえるでしょう。ただし、抗コリン作用を持つためにそれに伴った副作用は発生しやすくなります。

 

眼症状では調節障害や散瞳等の発生報告があり、消化器症状としては口渇が投薬したうちの4%ほど報告され、副作用の中でも発生頻度が高いものとなっています。実際私が患者様とお話しても口渇を訴える方は結構いますね。

 

他に報告されている副作用としては以下のようなものがあります。

・精神神経系症状:浮動感・不安定感・頭痛・頭重感、幻覚、錯乱など
・皮膚障害:発疹・蕁麻疹等
・肝臓症状:肝機能異常(肝機能検査値の上昇等)など
・消化器症状:口渇、食欲不振、胃・腹部不快感、胸やけ、悪心・嘔吐、胃痛など
・その他の症状:傾眠、動悸、顔面熱感、口内違和感、排尿困難など

副作用のなかでも、眼症状と皮膚症状が発生した場合には投与の中止が必要となり、幻覚や不安定感が発生した場合には減量や中止を考慮する必要があります。速やかに医療機関を受診するようにして下さい。

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セファドールの注意事項

 

セファドールには服薬してはいけない禁忌が存在します。この成分に過敏症の既往歴がある患者では禁忌となり、重篤な腎機能障害のある患者でも、排泄遅延による副作用発現の危険性があるために禁忌とされています。

 

慎重投与としては、緑内障の患者、薬疹・蕁麻疹等の既往歴がある患者、前立腺肥大等尿路に閉塞性疾患のある患者、胃腸管に閉塞がある患者があげられます。これらは先程お話したセファドールが持つ抗コリン作用に起因します。

 

抗コリン作用により眼圧の上昇が起きれば緑内障が悪化する可能性がありますし、排尿困難の悪化や胃腸管の閉塞が悪化してしまう危険性も考えられます。唯一、薬疹・蕁麻疹の既往歴という患者に関しては、副作用としてそれらの症状が誘発されてしまう危険性があるためのもので、その他の慎重投与とは異なるものと考えていいでしょう。

 

セファドールには制吐作用があるため、ジギタリス中毒や脳梗塞などが原因で起きる嘔吐を抑制してしまう場合があります。早期に対策することで予後(病後の経過)の改善が期待できる場合が多いものですので、こういった可能性があることを考慮して使用する必要があります。

セファドールとメリスロンの違い

 

どちらも内耳障害によるめまいを改善することが期待できる医薬品ですが、両者には違いがあります。

 

まず作用機序ですが、メリスロンは内耳の血流量の増加と毛細血管の透過性の亢進により、リンパ液の過剰を改善する効果をもちます。これによりめまいに対して効果を発揮しますので、メニエール病によるめまいに対して特に効果的と考えられています。

 

一方セファドールは内耳の血流量を調節し、不足している側には供給を促します。さらに、めまいによる神経の過剰興奮を抑制することで、めまいからの早期回復を促します。

 

似た効果をもつ2剤ですが、その作用機序の違いから併用も可能であり、実際に処方されるケースもあります。

 

また副作用においても、メリスロンは構造がヒスタミンに似ているため、ヒスタミンに似た副作用が発生しやすくなります。胃酸の分泌亢進や気管支の収縮が発生する可能性があり、消化性潰瘍や気管支喘息などの既往歴のある患者には慎重投与となっています。

 

一方のセファドールではそういった副作用はありませんが、抗コリン作用による副作用が発現する可能性があります。適応だけでなく、副作用の観点から両者を使い分けることもあります。

 

剤形についてはメリスロンは錠剤のみ。セファドールは錠剤に加え、顆粒があります。

 

それではセファドールについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。