爪白癬(爪水虫)に適応がある外用薬は今までありませんでした。

 

今回は日本初!爪白癬の新薬クレナフィン爪外用液10%について解説していきたいと思います。

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爪白癬の原因、症状、他人にうつる?

まずは爪白癬についてお話していきますね。

 

爪白癬とは要は爪の水虫であり、原因菌は白癬菌(はくせんきん)と呼ばれ、カビ(真菌)の仲間です。

 

中でも日本で多く見られるのは

・Trichophyton rubrum(トリコフィトン・ルブルム)

・Trichophyton mentagrophytes(トリコフィトン・メンタグロフィテス) 

の2種類です。

 

白癬菌は感染する場所により名称が変わります。

 

足にいれば足白癬(いわゆる水虫)、足の爪に侵入すると爪白癬となるわけですね。爪白癬は足の親指によく見られます。

 

感染するのは9割足ですが、手(手白癬)や体(体部白癬:ぜにたむし)、頭(頭部白癬;しらくも)などにもみられる場合があります。

 

さて、白癬菌はケラチナーゼという酵素を出します。このケラチナーゼが皮膚の角質の構成成分であるケラチンというタンパク質を溶かし、白癬菌はそれを食べて増殖していきます。

 

初期症状としては爪が白や黄色く濁ったり、ボロボロ欠ける、変形する、厚くなる、などが挙げられます。

 

痛みや痒みなどの自覚症状が比較的少ないのも特徴の一つですね。ただ治療せず放置すると皮膚にまで入り込み、痛みが発生する事もあります。

 

爪白癬はうつります。また自然に治ることはありません。同居の家族にうつさないためにも…

・左右の爪の色や形が違う

・爪が白や黄色く濁っている

・今までより爪が切りにくく感じる

といった症状があればぜひ受診するようにしましょう。

今までの爪白癬の治療法(内服薬)

通常の抗真菌外用薬(塗り薬)を塗っても爪が硬く、白癬菌も奥深くにいるためなかなか到達できません。

 

そのため基本的に今までは内用薬(飲み薬)で治療していました。内用薬しか適応がなかったのです。

 

たまに爪白癬に対してルリコン液1%やゼフナート外用液2%などが処方されているのを見かけますが、改善効果は期待できませんし、そもそも適応がありません。

 

皮膚科医に聞いたことがありますが、改善は期待しておらず、進行抑制的な意味合いで使っているケースもあるようです。

 

クレナフィンのお値段がかなり高いこともあり(後述します)、経済性も考慮しての処方ということもあるかと思います。

 

話を戻しますが、今までの爪白癬の治療薬(内用薬)による治療は二種類あります。

ラミシール錠125mg(一般名:テルビナフィン)

1日1回 1回1錠を6ヶ月間服用します。症状により治療期間は変化する場合があります。

 

重い肝機能障害や赤血球・白血球・血小板が減少の副作用がみられる可能性があるため、肝臓の悪い方や、血液に障害のある方は使用できません。

 

また、肝機能、血液検査を定期的に行う必要があります。

 

ちなみに先発品のラミシールの薬価は167.7円/錠 180日で30186円。後発品の最安値で61円/錠となります。180日で10980円。

 

先発品と後発品では添加物や剤形が異なる事で「効果が全く同じである」とは言えませんので単純に比較はできませんが、結構価格差がありますね。

イトリゾールカプセル50(一般名:イトラコナゾール)

こちらはちょっと飲み方が特殊でパルス療法と呼ばれる治療法になります。

 

1回2カプセルを1日2回食直後に服用します。これを1週間服用し、3週間休む。これを3回繰り返します。実質の服用期間は3週間です。

 

ちなみにイトリゾールが食直後なのは理由があります。

 

イトリゾールは脂溶性(水に溶けにくい)性質があり、空腹時では吸収が悪くなってしまうのです。吸収には脂肪分や胆汁の助けが必要なため、食直後となっているのですね。

 

また、イトリゾールの欠点として、相互作用(飲み合わせ)が非常に多い事が挙げられます。

 

これから服用する方もいるかもしれませんので、併用禁忌の薬を以下に記載しておきます。

・ピモジド、ブロナンセリン(抗精神病薬)
・キニジン、ベプリジル(抗不整脈薬)
・トリアゾラム(睡眠薬)
・シンバスタチン(脂質異常症薬)
・アゼルニジピン、ニソルジピン、エプレレノン、アリスキレン(降圧薬)
・エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン(片頭痛治療薬)
・エルゴメトリン、メチルエルゴメトリン(子宮収縮薬)
・バルデナフィル(ED治療薬)
・シルデナフィル、タダラフィル、リオシグアト(肺動脈性肺高血圧症治療薬
・ダビガトラン、リバーロキサバン(抗凝固薬)

すごい数ですね!

 

更に併用注意の薬も入れると、とんでもない数になりますので、ここでは割愛します。一緒に服用することで一方の作用が強くなる物が多いです。

 

他にも肝臓の悪い方は症状を悪化させる可能性があるため、また妊娠の可能性がある人、妊婦も胎児に奇形を生じる可能性があるため使用することができません。

 

イトリゾールは本当に制限が多いのです。

 

先発のイトリゾールの薬価は315.6円/カプセル。21日で26510.4円。後発品の最安値で130.5円/カプセル。21日で10962円。

 

ラミシール、イトリゾールともに内服後に腸から吸収されると、爪に移行して留まることで持続的な効果を発揮します。その結果爪の奥深くの白癬菌を退治することができるのです。

 

爪白癬は自覚症状がなくなったり、見かけ上治ったと思っても、そこで治療を止めてはいけません。

 

きちんと決められた指示通りに服用する事が大切です。中途半端な治療だと白癬菌は復活します奴らは徹底的に退治する必要があるのです。

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クレナフィン爪外用液10%の名前の由来とは?

そこで登場したのが爪白癬の外用薬クレナフィンです。

 

名前の由来ですが、爪白癬になった爪を清浄(Clean)にする。またこの薬剤の一般名がエフィナコナゾール(Efinaconazole)であること。

 

上記2つの一部「Clean」 と 「fin」を合わせて「Clenafin:クレナフィン」と命名されました。

クレナフィンの特徴と作用機序(作用のしくみ・メカニズム)とは?

クレナフィンは今までの塗り薬と違い、爪の奥まで染みこんで作用するのが最大の特徴です。

 

理由として先ほどお話した角質層の構成成分であるケラチンとの親和性が他の抗真菌外用剤よりも低い事が挙げられます。

 

続いて作用機序について説明していきます。

 

真菌(カビ)自身を取り囲む細胞膜は主にエルゴステロールという物質により構成されています。

 

エルゴステロールはラノステロールと呼ばれる物質から作られます。ラノステロールからメチル基(-CH3)を取るとエルゴステロールになります。

 

ラノステロールからメチル基を取ることを脱メチル化といい、それを行う酵素がラノステロールC-14脱メチル化酵素です。

 

クレナフィンはラノステロールC-14脱メチル化酵素に選択的に結合し、酵素の働きを失わせます。

 

その結果、エルゴステロールが作られなくなり、細胞膜が壊れることで、白癬菌が死滅するというわけですね。

クレナフィンの効能効果・用法用量・使い方

効能又は効果
〈適応菌種〉
皮膚糸状菌(トリコフィトン属)

〈適応症〉
爪白癬

 

用法及び用量
1日1回罹患爪全体に塗布する。

 

用法及び用量に関連する使用上の注意
本剤を長期間使用しても改善が認められない場合は使用中止を考慮するなど、漫然と長期にわたって使用しないこと(48週を超えて使用した場合の有効性・安全性は確立していない)。

 

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クレナフィンを開封したのが以下の画像です。先端がハケのようになっており塗りやすくなっています。手を汚さずに塗れるのはいいですね。

 

爪の下の皮膚にも行き渡るように、皮膚と爪の間もしっかり塗ります。ただし皮膚に付いた薬液はしっかり拭き取るようにして下さい。

 

塗るタイミングはお風呂に入った後がいいでしょう。

 

足の爪の生え変わりは約1年かかりますので、48週の使用が基本となりますが、半年で完治するケースもあるようですね。これは素晴らしい!

 

外用薬は基本塗った部位周囲にしか作用しません。

 

そのため内用薬のような、全身性の副作用が起こる可能性は低く、他剤との相互作用も気にしなくてよいのがメリットです。

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クレナフィンのお値段は?

非常に素晴らしいクレナフィンですが、気になる点があります。それは…薬価です。1本3.56gで、なんと5712.02円です。

 

1本でどれくらいもつかですが、患者さんにより塗る爪の枚数や大きさに個人差がありますので一概には言えません。

 

ただ国際共同第Ⅲ相臨床試験では3.8枚の爪にクレナフィンを2週間塗布したところ、平均2.5mL使用したとのデータがあります。

 

クレナフィンは1本4mLになりますので、4枚の爪に使用する方であれば、1本で約3週間使用できることになりますね。

 

また、平成30年9月に添付文書の改訂があり、今までは開封後4週間までしか使用できませんでしたが、開封後12週間までの安定性が確認されました。

 

塗る枚数が少ない人でも1ヶ月に1本処方する必要があったため、これはうれしい改訂ですね。

クレナフィンの副作用

副作用は塗った部位の皮膚炎や水疱(水ぶくれ)など。皮膚炎が大部分を占めます。これは皮膚に付いた薬液を拭き取らなかった事が原因で起こることが多いようですね。

 

先ほどもお話しましたが、副作用防止のためにも皮膚に付いた薬液はきちんと拭き取るようにして下さいね。

 

副作用の内容自体は、他の抗真菌薬の外用剤とほぼ同様ですが、クレナフィンの方が頻度は高いです。

 

これは添加物にエタノールを使用している事に加え、元々皮膚刺激性が強い外用抗真菌剤が高濃度で配合されていることも関係しているとされています。

クレナフィン査定の可能性は?

クレナフィンは添付文書上、直接鏡検か培養により爪白癬の確定診断がなければ処方できないことになっています。ただ自施設に設備がなくても外注で対応する事は可能です。

 

ですが…上記を行っていないにもかかわらずクレナフィンを処方している医療機関は実は結構あります。

 

今の所、直接鏡検や培養をとらないことでの査定は全国でも報告はないようです。ただ適正使用のためには確定診断をつけた上での処方をお願いしたいところです。

クレナフィンの市販・通販は?

クレナフィンは処方箋医薬品です。医療機関を受診して医師が処方し、処方箋をもとに薬剤師が調剤してはじめて手に入ります。

 

市販、通販での購入は不可能です。最近流行りの「処方箋なしで薬が買える薬局」でも購入することはできません。

 

ないとは思いますが、万が一クレナフィンを処方箋なしで販売している薬局があればそれは違法であるため、購入は避けて下さい。

 

それではクレナフィンについては以上とさせて頂きます。最後まで読んでいただきありがとうございました。