今回はセフェム系抗菌薬のメイアクトMSについてお話していきます。
平成29年7月6日、明治製薬よりAG(オーソライズドジェネリック)のセフジトレンピボキシル錠100mg「OK」も発売されます。
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メイアクトMSとは?
それでは名前の由来からいきましょう。
メイアクトMSは”MEIACT MS”と表記されます。前半のMEIACTは「MEIJI+Action」、後半のMSは「MEIJI+SEIKA」に由来します。どちらも製造販売元のMeijiSeikaファルマの社名が使われています。一般名はセフジトレンピボキシルです。
メイアクトMSの作用を簡単に説明すると「細菌の細胞壁の合成を抑えることで、細菌を死滅させる」となります。それではもう少し詳しく見ていきましょう。
メイアクトMSの作用機序と特徴
セフェム系抗菌薬はβラクタム系抗菌薬に分類されます。βラクタム系抗菌薬はセフェム系の他にペニシリン系、カルバペネム系、モノバクタム系、ペネム系などがあります。いずれもβラクタム環と呼ばれる構造を有しているのが特徴です。
作用機序
作用機序の方ですが、まずは細胞壁について説明します。細胞壁は細菌の最も外側にある丈夫な膜で、主にペプチドグリカンという物質で構成されています。そしてペプチドグリカンを合成する酵素の一つにペニシリン結合タンパク(penicillin‐binding protein:以下PBP)があります。
βラクタム系抗菌薬はPBPと結合しPBPの働きを失わせます。これにより細胞壁の合成を抑えることができる、つまり細菌を死滅させることができるのです。
ちなみに細胞壁はヒトには存在しません。そのため細菌に選択的に作用することができるのです。同様に細胞壁を持たないマイコプラズマ、細胞壁にペプチドグリカンを含まないクラミジア等に対してもβラクタム系抗菌薬は無効のため注意が必要です。
時間依存型
MIC(最小発育阻止濃度)
を超える時間(Time above MIC)をどれだけ長くできるかが重要となります。
基本的にβラクタム系は半減期が短く、頻回に投与する必要があります。メイアクトMSも半減期が約1時間と短いため、1日3回の服用が必要となります。
有効菌種
メイアクトMSは第三世代のセフェム系抗菌薬です。グラム陽性菌からグラム陰性菌まで幅広い抗菌スペクトルを持ち、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)、β-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌(BLNAR)にも有効とされています。
ただしセフェム系抗菌薬全般に言えることですが、腸球菌には無効です。
消失経路
メイアクトMSは腎排泄型の抗菌薬です。腎機能が低下している患者様には排泄が遅延することで血中濃度が上昇する可能性があるため減量して使用することになります。
剤形と味
メイアクトMSの剤形には錠剤と細粒があります。細粒は小児用となっていますが、錠剤の嚥下が困難な成人にも使用することができます。
また、成分のセフジトレンピボキシルは苦味があり細粒にはバナナ味をつけることで苦味をマスクしています。
細粒についてはバニラアイスクリームや牛乳などに混ぜると相性が良く、スポーツドリンクや乳酸菌飲料は相性が悪いです。ただ味には個人差がありますので参考程度に。
カゼインは入っていない
メイアクトMSには以前カゼインが含まれていました。カゼインは牛乳などの乳製品に含まれるタンパク質の1つであり、牛乳アレルギーの患者様には使用することができなかったのです。
現在はカゼインが入っておりませんので牛乳アレルギーの患者様にも処方可能となっています。それと同時に味もオレンジミルク味からバナナ味に変更されました。
メイアクトMSの副作用
アナフィラキシー
一番注意が必要なのはアナフィラキシー。アナフィラキシーとは短時間の間に複数のアレルギー症状が同時に出現する状態を指します。特に血圧の低下や意識障害などを伴う状態をアナフィラキシーショックといい、命に関わる場合もあります。
息苦しい、喉がつまる、喉がかゆい、めまい、耳鳴り、吐き気や腹痛、皮膚がかゆい、皮膚が赤くなる、蕁麻疹が現れる、などが短時間に複数現れた場合は直ちに病院を受診するようにしましょう。自分で病院に行くのが難しければ救急車を利用しても構いません。
メイアクトは経口薬のため、吸収されるまでに時間がかかります。そのため注射薬よりも症状発現が遅くなる可能性がありますが、早ければ5分以内、通常30分以内には症状が発現します。これらは覚えておいて下さい。
発疹
発疹が現れることがあります。発疹は投与開始後数日経過してから現れるケースが多いです。
偽膜性大腸炎
他には抗菌薬の使用により腸内細菌のバランスが崩れ、吐き気や下痢などが現れる場合があります。中でもクロストリジウム・ディフィシルと呼ばれる嫌気性菌が異常に増える偽膜性大腸炎を起こす場合もあります。症状としては下痢、発熱、腹痛などがあります。
偽膜性大腸炎はクリンダマイシンなどで頻度が高いですが、最近ではどの抗菌薬でも起こりうると言われていますので注意が必要です。
出血傾向、舌炎、口内炎
またビタミンの吸収に関与する腸内細菌が減少する可能性があり、ビタミンKが欠乏すると出血しやすくなったり、ビタミンB群が欠乏すると舌炎、口内炎などが現れる場合があります。
低カルニチン血症と低血糖
メイアクトをはじめとする第三世代経口セフェムは非常に吸収が悪いです。そこで吸収を高めるため構造中にピボキシル基と呼ばれる部分を持たせています。
ピボキシル基を持つ薬剤は代謝されるとピバリン酸と活性本体となり、ピバリン酸はカルニチン抱合を受けて尿中に排泄されます。つまりカルニチンの量が減ってしまうのです。
なぜカルニチンが減るとマズイのでしょうか?
それはカルニチンが減少すると空腹、飢餓状態における脂肪酸のβ酸化ができなくなり、糖新生が行われなくなるためです。結果低血糖を惹き起こします。痙攣や意識レベルの低下がみられる場合もあります。
服用開始翌日に発現するケースもありますが、14日を超えると有意に発現率が高まります。小児、乳幼児はカルニチンが少ないため特に注意が必要となります。
以上から漫然と処方するのは厳禁です。これだけ見ても不要な抗菌薬処方を控える必要があるのはご理解頂けるかと思います。
それではメイアクトMSについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。