今回はインフルエンザと風邪の違いや症状などについてお話していきたいと思います。
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インフルエンザの種類と潜伏期間
インフルエンザとはインフルエンザウイルスに感染することで起こる病気の事を言い、A型、B型、C型の三種類があります。
C型については多くの方が幼少期に感染し、症状も鼻水等通常の風邪症状が多いです。
終生免疫(一度かかると二度とかからない)となることが多く、流行しないためC型についてはワクチンもありません。
流行を起こすのはA型とB型で、特にA型は大流行する事があります。
A型とB型はウイルス表面にヘマグルチニン(以下HA)とノイラミニダーゼ(以下NA)を持ちます。
ヘマグルチニンとノイラミニダーゼはタンパク質で、A型のヘマグルチニンは16種類、ノイラミニダーゼは9種類あり組み合わせ総数は144種類にもなります(これらを亜型といいます)。
更にヘマグルチニンとノイラミニダーゼは年どころかシーズン内でも微妙に変異しますから実際は144種類にとどまりません。
ちなみにB型はヘマグルチニン、ノイラミニダーゼともに1種類しか持ちません。
いわゆる新型インフルエンザはA型のヘマグルチニンとノイラミニダーゼが大きく変異したものと思って下さい。みんなが免疫を持たないため、世界的に大流行してしまうというわけです。
また、一般的にA型ウイルスはB型よりも重症化しやすく、肺炎などの合併症を起こしやすいと言われていますが、症状だけではA型かB型の区別は困難です。
潜伏期間は基本1~3日ですが、4~5日の場合もあります。
ヘマグルチニンとノイラミニダーゼの働き
ヘマグルチニンとノイラミニダーゼの働きについても簡単にお話しておきましょう。
インフルエンザウイルスは細胞の中に入って増殖しようと企みますが、どこからでも入れるわけではないのです。
そこで細胞膜の表面にあるシアル酸という糖の一種にヘマグルチニンが結合します。
するとウイルスは細胞膜に包まれて細胞内に入ることができるようになります。ここで一旦シアル酸とヘマグルチニンの結合は外れます。
その後細胞内に侵入したウイルスはすごい勢いで増殖します。
しかし一つの細胞内でいくら増殖した所で意味がないので、ウイルスはたくさんの細胞に感染させようとします。
増殖したウイルスが細胞外に出ようと思い、細胞膜表面に移動すると、ヘマグルチニンとシアル酸が再び結合してしまいます。
このままでは他の細胞に移動できません。
そこで登場するのがノイラミニダーゼです。
ノイラミニダーゼはヘマグルチニンとシアル酸の結合を切り離す事ができます。こうしてウイルスが他の細胞に移動できるようになることで感染が拡がっていくのです。
インフルエンザの検査
判定には専用の検査キットを用います。鼻やのどの粘液を長い綿棒でぬぐってウイルス抗原を調べます。
ただ発症初期ではウイルス量が少ない場合があり、実はインフルエンザでも陰性と判定される場合があります。ちなみにこれを偽陰性といいます。
その場合は受診した患者だけでなく、患者の家族の症状や学校、職場での感染状況などを考慮した上で、結果は陰性でも抗インフルエンザ薬を処方する場合もあります。
インフルエンザと普通感冒(風邪)の違いとは?
インフルエンザ | 普通感冒(いわゆる風邪) | |
原因 | インフルエンザウイルス | ライノウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルスなど多数 細菌等も原因となるが、80~90%がウイルス |
発症 | 急激に現れる | 比較的ゆっくり現れる |
発熱 | 高い 40℃前後まで上昇することも |
基本的になし あっても37℃程度の微熱 |
症状 | のどの痛み、咳、鼻水、頭痛、筋肉痛、関節痛など | のどの痛み、咳、鼻水など |
合併症 | 肺炎、気管支炎など | 基本的になし |
発生状況 | 流行性 一時期に集中して現れる |
散発性 ある程度の間隔をあけて |
経過 | 5~7日程度で軽快 | 3~7日程度で軽快 |
インフルエンザと普通感冒を比較できるように上の表にまとめました。ちょっとだけ解説していきますね。
まずは原因です。インフルエンザはもちろんインフルエンザウイルスが原因です。
普通感冒の原因ウイルスは表に書いた以外にもあります。ウイルスだけではなく、細菌などの場合もありますが、約80~90%はウイルスが原因です。
またインフルエンザは急激に発熱、頭痛、筋肉痛が現れます。
体もだるくなり、発熱は40℃を超す場合もあります。その後少し遅れて咳や鼻水などの症状が現れるのが特徴です。
合併症は普通感冒の方はほぼありません。しかしインフルエンザについては肺炎や気管支炎などを合併する可能性があります。
特に以下に当てはまる場合は重症化したり、合併症を起こしやすいと言われハイリスク群と呼ばれます。
・65歳以上の高齢者
・妊婦
・慢性肺疾患(肺気腫、気管支喘息、肺線維症、肺結核など)
・心疾患(僧帽弁膜症・うっ血性心不全など)
・腎疾患(慢性賢不全・血液透析患者・腎移植患者など)
・代謝異常(糖尿病・アジソン病など)
・免疫不全状態の患者
インフルエンザはなぜ冬に流行するのか?
インフルエンザは毎年冬(12月~3月)に流行しますが、その理由を御存知でしょうか?
インフルエンザウイルスは気温が低く乾燥を非常に好みます。そう…まさに冬の環境に一致しますね。
一方私達の方はどうでしょうか。
私達は1日に多量の空気(約2万リットル)を吸いますが、その中には細菌やウイルスなどばい菌も多く含まれています。
これらの異物は鼻や口から粘液に取り込まれるのですが、その時に活躍するのが線毛です。
鼻からのどまで生えている線毛は小刻みに動いており、この働きにより異物を体外に排出する事ができるのです。
しかし気温が低下すると粘膜の毛細血管が収縮する事で線毛の動きが鈍くなってしまいます。
また粘液も乾燥して粘度が増すことで、結果的に線毛の運動を妨げる事になります。
そうなると当然細菌やウイルスは体の中に入りやすくなるのです。
「インフルエンザウイルスは絶好調、私達は絶不調」
これにより感染しやすい状況が生まれるというわけですね。
予後(経過)は重症化しなければ平均1週間程度で改善します。ただし5日経っても熱が下がらない場合は合併症を起こしている可能性があるので注意が必要です。
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抗インフルエンザ薬について
インフルエンザに対して主に処方される薬は以下の4成分です。
・タミフルカプセル75、タミフルドライシロップ3%(一般名:オセルタミビル)
・リレンザ(一般名:ザナミビル)
・イナビル吸入粉末剤20mg(一般名:ラニナミビル)
・ゾフルーザ錠10mg/ゾフルーザ錠20mg(一般名:バロキサビル)
・ラピアクタ点滴静注液バッグ300mg、ラピアクタ点滴静注液バイアル150mg(一般名:ペラミビル)
これらはそれぞれ剤形が異なりますが、作用機序はいずれもノイラミニダーゼ阻害となっており、インフルエンザウイルスの増殖を抑える作用を持ちます。
これら以外にも必要に応じて解熱剤なども処方されます。
抗インフルエンザ薬について詳しく知りたい方はこちらの記事もどうぞ。
参考記事:抗インフルエンザ薬の特徴と比較一覧 | 作用機序や副作用など
インフルエンザの感染経路
インフルエンザの感染経路は飛沫感染、接触感染です。
飛沫感染とは?
感染者が咳やくしゃみをした時の水しぶき(飛沫)に含まれる病原微生物を、周囲の人が吸い込むことで感染する経路です。
接触感染とは?
感染者が咳やくしゃみをした時の水しぶき(飛沫)に汚染された環境や物に接触することで病原微生物が付いた手を介して感染する経路です。
インフルエンザの予防法
それでは予防法についてお話していきます。
予防法1:うがい手洗い
やはりこれが基本です。私達は汚染された手で無意識に手や鼻、口を触っているのです。外出後は必ず行いましょう。
インフルエンザウイルスはアルコールも有効。手洗い後のアルコールの使用はより確実です。
また外出時は携帯用のアルコールがあると、洗面所がない場所でも使用できますので便利です。ただし取り扱いには十分注意して下さいね。
おすすめの消毒薬は従来のエタノールを酸性に傾けることで、ノロウイルスにも有効な手ピカジェルプラスです。
予防法2:適度な温度と湿度を保つ
これは先ほどお話したように、インフルエンザウイルスにとってベストな環境を作らないこと。
私達の繊毛運動を高めるためでもあります。湿度は50~60%は維持した方がいいでしょう。
予防法3:体調を万全に保つ
寝不足が続いたり、疲労が蓄積すると免疫力が低下します。また食生活の乱れやストレスも免疫力低下につながります。
そのため流行シーズン中(に限らずですが!)はバランスのとれた食生活と睡眠をしっかりとり、ストレスや疲労を溜めないことが大切です。
予防法4:人混みを避ける
流行シーズン中の人混みは可能な限り避けましょう。特に上に書いたハイリスク群の方は特に注意が必要です。
やむを得ない場合は必ずマスクを着用しましょう。
予防法5:マスクを着用する
インフルエンザに感染している方がマスクをすると、咳やクシャミによる水しぶきを100%ではないですが、マスク内に留めることができます。
感染していない方も水しぶきの直接の吸入を予防できますし、上でも書いた無意識に鼻や口などを触るのもマスクの上からになりますので接触感染の予防につながります。
予防法6:インフルエンザワクチンを接種する
ワクチンには発症抑制と重症化の予防効果があります。ただし卵アレルギーのある方については主治医と相談して下さい。
インフルエンザワクチンについて詳しく知りたい方はこちらの記事もどうぞ。
参考記事:インフルエンザワクチンのまとめ|持続効果、妊婦への接種の是非、副反応等について
それではインフルエンザについては以上とさせて頂きます。最後まで読んでいただきありがとうございました。