今回は下痢止めのロペミンについて解説します。
スポンサーリンク
ロペミンとは?
それでは名前の由来からいきましょう。ロペミンはLOPEMINと表記されますが、これは一般名のロペラミド塩酸塩:Loperamide Hydrochlorideに由来しています。
ロペミンの作用を簡単に説明すると「腸に直接作用することで、腸の運動を抑える」になります。
ロペミンの作用機序と特徴
腸に到達した内容物には多くの水分が含まれています。その水分の多く(約6~8割)が小腸で吸収され、残りは大腸で吸収されます。かなり大雑把な説明になりますが、吸収される水分量が通常よりも多いと便秘に、少ないと下痢になります。
例えば腸の運動が低下したりすると、便が長時間腸内に停滞する事になりますので、その分多くの水分が吸収され、固い便になります。
また逆に腸の運動が活発になるとどんどん便が押し出されていき短時間で便が出るため水分をあまり吸収できず、水分を多く含んだ便、つまり下痢になるというわけです。
では下痢の場合どうすればいいでしょうか?腸の運動を抑えてあげればいいですよね?
そこで注目するのがアセチルコリン。副交感神経の終末から放出される神経伝達物質の一つであり、腸のムスカリン受容体に結合することで腸の運動が起こるようになっています。
ロペミンは副交感神経節後線維にあるオピオイドμ1受容体に作用(刺激)して、副交感神経終末からアセチルコリンの遊離を抑制する作用を持ちます。これにより腸管の運動が抑制され、下痢が止まるのです。
「μ1受容体を刺激?これって麻薬の作用と同じじゃない?」と思われた方もいるかもしれませんね。その通りです。例えば麻薬のモルヒネもμ1受容体を刺激する作用を持ちます。
ですがロペミンには鎮痛作用がありません。それはロペミンが血液と脳の間にある血液脳関門(blood brain barrier、略してBBB)を通過しづらいからです。脳(中枢)のμ1受容体に作用できないため鎮痛作用がないというわけですね。
ロペミンの副作用
一番注意が必要なのは便秘。ロペミンの作用は非常に強く、麻薬のモルヒネに匹敵するほどです。ひどい場合はイレウスになる場合もあります。便秘がみられたらすぐに中止するようにしましょう。
他に発疹、悪心、嘔吐、腹痛、眠気などの報告があります。
眠気が現れる可能性があるため、服用中は自動車の運転等危険を伴う機械の操作は避けるようにしましょう。
ロペミンの相互作用と注意事項
下痢止めのタンナルビン(タンニン酸アルブミン)、アドソルビン(天然ケイ酸アルミニウム)と併用するとロペミンが吸着され、作用が減弱する可能性があります。どうしても併用する場合は服用間隔を2時間以上あければ影響がないとされています。
また、ノロウイルスなど感染性胃腸炎に対しては基本使用は控えます。下痢は原因となる微生物を排泄するための防御作用。これをロペミンで邪魔してしまうと原因微生物が腸内に残り続けることになってしまい、治療が長引く可能性があります。
もちろん激しい下痢で脱水の危険性もあるということであれば使用するケースもあると思いますが、くれぐれも自己判断での服用は避けるようにして下さい。
それではロペミンについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。