今回は麻薬性鎮痛薬のナルサス・ナルラピドについてお話していきます。

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ナルサス・ナルラピドとは?

 

それでは名前の由来から。いずれも一般名はヒドロモルフォン塩酸塩になります。

ナルサス

ナルサスはNARUSUSと表記されますが、これはヒドロモルフォンの徐放性製剤であることから、「narcotic(麻薬)」と「sustain(持続)」の下線部を組み合わせて命名されています。

ナルラピド

一方のナルラピドNARURAPIDと表記されますが、これはヒドロモルフォンの即放性製剤であることから、「narcotic(麻薬)」と「rapid(急速)」の下線部を組み合わせて命名されています。

 

ナルサス・ナルラピドの作用を簡単に説明すると「オピオイド受容体を刺激する事で痛みの伝達を抑え、がんの痛みを抑える」となります。

ナルサス・ナルラピドの作用機序と特徴

 

ナルサス・ナルラピドは脊髄後角のオピオイドμ受容体を刺激することで侵害刺激伝達を抑える作用を持ちます。侵害刺激とは「組織が傷害されるほどの強い刺激」と思って頂ければよろしいかと思います。

 

オピオイド受容体は脳、脊髄、末梢神経などに存在し、”μ(ミュー)”、”δ(デルタ)”、”κ(カッパ)”の3つのサブタイプ(種類)があることがわかっています。中でも主にμ受容体が強い鎮痛作用と関係しています。

 

ナルサス・ナルラピドが脊髄後角のオピオイドμ受容体に作用すると侵害刺激が脳に伝わるのを抑えることができます。また大脳皮質にも働きかけ、痛みの闘値を上昇させる、つまり”痛みを感じにくくする”作用も持っています。

 

このような作用によって癌の痛みを抑えることができ、患者様にとってかけがえのない日常生活を送る手助けとなるのです。

 

ヒドロモルフォンは肝臓でチトクロームP450を介さず、グルクロン酸抱合にてヒドロモルフォン-3-グルクロニドに、グルコース抱合にてヒドロモルフォン-3-グルコシドに代謝されます(メインはグルクロン酸抱合です)。

 

いずれの代謝物も活性は非常に低いです(前者がヒドロモルフォンがμ受容体に対する効力の約1/2280、後者が約1/249)。そのため腎臓への影響が少ないオピオイドといえるでしょう。

 

例えばモルヒネは活性代謝物の割合が高く、腎機能が低下した患者様だと蓄積により傾眠や吐き気などの副作用が出やすくなるため注意が必要です。

 

チトクロームP450の影響を受けないということは、相互作用が少ないということになります。これもナルサス・ナルラピドのメリットですね。

 

それではそれぞれの薬剤について簡単に説明していきます。

ナルサス

ナルサスは服用後1~2時間程度で効果が発現し、24時間持続する徐放錠。1日1回の服用で疼痛コントロールが可能となっています。

 

徐放性製剤のため噛み砕かないように注意して下さい。血中濃度が急激に上昇して副作用が発現する危険性があります。

 

用量の設定は副作用が最小限にとどまるように調節する必要があり、増量の目安として、使用量の30~50%の範囲で行うようにします。

ナルラピド

ナルラピドはレスキューで用います。レスキューとは基本となるオピオイドの量では鎮痛効果が不十分な場合に、その不足分を補うために即効性のある薬剤を追加投与することを意味します。

 

レスキューは定時に服用するナルサスの1日量の1/4~1/6を目安とします。

 

剤形はいずれも錠剤であり、ヒドロモルフォンの換算比は経口で、「ヒドロモルフォン:モルヒネ:オキシコドン=6:30:20(1:5:3.3)」となっています。

 

オピオイドの換算の目安については下の表をご参照ください。

※クリックで拡大します

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ナルサス・ナルラピドの副作用

 

オピオイドμ受容体にはμ1受容体とμ2受容体があります。それぞれの作用を以下にまとめます。

μ1受容体:鎮痛、吐き気・嘔吐、尿閉、痒み、縮瞳など
μ2受容体:鎮痛、鎮咳、鎮静、便秘、依存、呼吸抑制など

ヒドロモルフォンはμ受容体を刺激しますので、鎮痛だけでなく上記のような症状が副作用として出現する可能性があります。この中でも便秘、悪心・嘔吐、傾眠は頻度が高いため、投与開始時から予防的に制吐剤や下剤を併用します。

 

吐き気は1~2週間、眠気は数日で耐性ができて落ち着くことが多いですが、便秘には耐性が生じません。ただヒドロモルフォンはオキシコドンと比較して便秘の発症率が低いとされています。

 

それではナルサス・ナルラピドについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。