今回は痛風・家族性地中海熱治療剤のコルヒチンについて解説します。
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コルヒチンとは?
名前の由来ですが、これはそのままですね。一般名のColchicine:コルヒチンから命名されています。
コルヒチンの作用を簡単に説明すると「白血球が剥離した尿酸に集まるのを抑えることで痛風発作を予防する」となります。
それではもう少し詳しくみていきましょう。
コルヒチンの作用機序と特徴
尿酸は食べ物や体内の細胞に含まれるプリン体から作られ、主に尿に溶けて腎臓から排泄されるようになっています。これにより体内の尿酸の量は一定に保たれているわけです。
しかし尿酸は元々溶けにくいという性質があり、その量が多くなると尿酸が結晶化し、関節に沈着します。
関節から剥離した尿酸結晶を白血球が異物と認識すると、白血球が関節の炎症部位に集まり(白血球遊走)、尿酸結晶を食べます(貪食)。
更に白血球は尿酸結晶を食べながら炎症の原因となる起炎物質を放出します。これにより痛風発作が発生するのです。
そこで登場するのがコルヒチンです。
コルヒチンは白血球が炎症部位に移動するのを抑え、また尿酸結晶を食べるのを抑える作用をもちます。これにより痛風発作の緩解及び予防が期待できるのです。
痛風発作の予防を目的とする場合、関節が腫れる、ムズムズするなど発作の前兆を感じたら速やかに服用することが大切です。既に発作が起きた後で服用しても十分な効果は得られません。
コルヒチンには尿酸の合成を抑制したり、排泄する作用はなく、鎮痛作用も抗炎症作用もありません。あくまでも発作を予防し、早く改善させるための薬と認識して下さい。
痛みに対しては非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)であるナイキサンなどを短期間に大量に服用する(NSAIDsパルス療法)ことで、疼痛緩和と炎症抑制効果が期待できます。
NSAIDsが使用できなかったり、無効の場合にはプレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイドで対応します。
短期間に発作が頻回に繰り返してしまう場合には、毎日1錠コルヒチンを服用する「コルヒチン・カバー」という治療を選択することもあります。
また、コルヒチンは平成28年度3月より家族性地中海熱への適応も追加されています。
家族性地中海熱は難病に指定されており、発作的に胸部の疼痛や関節の腫れ、発熱を繰り返してしまう病気です。地中海沿岸部に多く、遺伝するために家族性地中海熱という名称になっています。
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コルヒチンの副作用
コルヒチンの副作用ですが、主なものは下痢、腹痛、嘔気などの消化器症状になります。
重大な副作用は以下の3つ。初期症状も合わせて記載します。
・再生不良性貧血、顆粒球減少、血小板減少:立ちくらみやめまいなどの貧血症状、咽頭痛や発熱、出血傾向など
・横紋筋融解症、ミオパチー:原因の分からない筋肉痛、褐色尿、全身の倦怠感、検査値としてCPKの上昇など
・末梢神経障害:指先のしびれや冷感など
その他にも掻痒感、発疹などの過敏症状、血尿や検査値としてBUN上昇などの腎臓症状、肝機能検査値の異常や脱毛などが報告されています。
これらの症状が現れた場合はかかりつけの医師・薬剤師に相談するようにして下さい。
コルヒチンの注意事項
コルヒチンは主に肝薬物代謝酵素CYP3A4によって代謝され、P糖タンパクによっても排出されています。よってこれらを阻害する医薬品と併用した場合、血中濃度の上昇を招く可能性があります。
CYP3A4を阻害する薬剤としてはアタザナビルなどの抗HIV薬やクラリスロマイシン、イトラコナゾールなどの抗菌薬、ジルチアゼム、ベラパミルなどのカルシウム拮抗薬、グレープフルーツ(ジュース)等があります。
また、P糖タンパクを阻害する薬剤としては免疫抑制剤のシクロスポリンがあります。お薬手帳を忘れずに提示するようにして下さいね。
また、大量服用や誤飲によって悪心・嘔吐、呼吸抑制、麻痺などが起きる可能性があり、死亡例も存在しています。用法をしっかりと守って服用することが大切で、1日当たり1.8mgまでの投与とすることが望ましいです。
大量服用・誤飲をしてしまった時には、過剰症が起きるまでに3~6時間の猶予があるため、服用後6時間以内なら胃洗浄や吸引して対応します。血液透析などでは除去できないため注意が必要です。
マウス実験において催奇形性の報告があるため、妊娠中の女性には禁忌とされています。しかし例外として、家族性地中海熱の女性には、有益性投与が認められています。
また、乳汁にも移行するため、授乳婦にもオススメできません。男性が服用した場合にも、ダウン症児や先天性異常児が出産される可能性があると言われているため、服用中は避妊する必要があります。
それではコルヒチンについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。