今回は抗真菌薬でイミダゾール系のニゾラールについてお話していきます。
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ニゾラールとは?
それでは恒例名前の由来からいきましょう。実はニゾラールは海外でも発売されており、販売名がNizoral:ニゾラールです。海外の販売名をそのまま日本でも適用した形になります。一般名はケトコナゾールです。
ニゾラールの作用を簡単に説明すると「真菌の細胞膜を構成するエルゴステロールが作られるのを邪魔することで症状を改善する」となります。それではまず表在性皮膚真菌症についてお話していきましょう。
表在性真菌症とは?
真菌感染症は大きく表在性(皮膚)真菌症と深在性真菌症に分類されます。これは文字通り前者が毛髪、爪、角質、表皮など私達の体の表面でとどまるもの。後者は皮膚の真皮以下の皮下組織、場合により臓器にも及ぶものを意味します。
表在性真菌症の原因となる菌は白癬菌やカンジダ、癜風などがありますが、約90%は白癬菌が原因です。これらは皮膚の常在菌であるため、免疫力が低下した時などにみられる場合があります。
原因No1の白癬菌ですが、部位により特に以下のように呼ばれます。白癬菌は足にいれば足白癬(いわゆる水虫)、足の爪に侵入すると爪白癬(爪水虫)、股間であれば股部白癬(いんきんたむし)、頭であれば頭部白癬(しらくも)、身体であれば体部白癬(たむし)となります。
白癬菌はケラチナーゼという酵素を出して、皮膚の角質の構成成分であるケラチンというタンパク質を溶かし、それを食べて増殖します。そのため皮膚の角質や爪、髪の毛などケラチンが多く含まれる部位に発生しやすいのです。
白癬菌やカンジダ、癜風等真菌の細胞膜の主な構成成分はエルゴステロールです。ちなみにヒトの細胞膜は主にコレステロールになります。つまりエルゴステロールが作られる過程を邪魔することができれば、ヒトの細胞膜に影響せず真菌を死滅させることができることがわかります。
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ニゾラールの作用機序と特徴
それではまずエルゴステロールの合成経路をみてみましょう。
さてたくさん酵素が出てきました(青い□で囲った部分です)。外用抗真菌薬の作用機序は上図のいずれかの酵素の働きを邪魔するというものになります。
イミダゾール系に属するニゾラールはラノステロールC-14脱メチル化酵素を阻害します。これによりエルゴステロールの合成が抑えられ、症状が改善するのです。
ニゾラールの剤形にはクリームとローションがあります。使い分けは処方する医師により異なりますが、最もよく使用されているのがクリームです。浸透性が高く、使用感もいいことが挙げられます。
ローションもクリーム同様使用感がよく浸透性も高いですが、刺激が強いため傷やただれている部位では使用を控える場合があります。そのような部位では刺激が少なく安全性が高い他剤の軟膏が処方されることが多いかと思われます。
塗る時間はお風呂から上がった後が望ましいでしょう。角質層が柔らかくなり薬剤の浸透性が高まるので効果的です。
また、ニゾラールには白癬、カンジダ症、癜風に加え、唯一”脂漏性皮膚炎”の適応があります。
皮脂は皮脂腺から分泌され、肌の乾燥を予防する役割を担っています。しかし食生活の乱れやストレスなどが原因で、分泌される皮脂の量が増えてしまうと、皮脂を好物とする皮膚の常在菌(真菌のマラセチア)が増殖し、脂漏性皮膚炎を引き起こすと言われています。
脂漏性皮膚炎は皮脂の分泌が盛んな部位、頭や顔、わきの下、胸などに多くみられます。頭皮や髪の生え際ではフケが多くなり、それ以外の部位では皮膚が赤くなったり、剥がれたりします。
治療により軽快、改善しても数ヶ月で再発するケースも珍しくありません。場合によりステロイド外用薬を併用することもあります。
ニゾラールは白癬、カンジダ症、癜風については1日1回の塗布、脂漏性皮膚炎については1日2回の塗布が必要となります。覚えておきましょう。
ニゾラールの副作用と注意事項
主な副作用は接触性皮膚炎、発赤、掻痒、刺激感などがあります。これについては他の外用抗真菌薬と変わりません。
使用にあたっての注意をいくつかお話しておきます。真菌は症状がある部分だけでなく、その周囲にも潜んでいることがあります。特に足白癬(水虫)の場合は病巣部のみならず、足の裏やかかとまで広い範囲で薬を塗る必要があります。
また真菌は自覚症状が消失し、一見改善したように見えても実はまだ残っていることがあります。皮膚の生まれ変わりであるターンオーバーは個人差があるものの4週間程度とされており、最低でも4週間は継続して使用する必要があります。
更にその後も治療を継続すると再発予防効果があるとされていますが、こちらは皮膚科の先生の指示に従って下さい。くれぐれも自己判断で使用を中止しないことが大切です。
それではニゾラールについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。