エブランチル（ウラピジル）の作用機序と副作用|前立腺肥大症

今回は前立腺肥大症、神経因性膀胱、高血圧治療薬であり、α1受容体遮断薬の「エブランチル」についてお話していきます。

エブランチルとは？

まずは名前の由来からいきたいところですが、エブランチルには特に由来はないようです。一般名はウラピジルです。

エブランチルの作用機序を簡単にお話すると「肥大した前立腺により狭くなった尿道を拡げることで尿が近い、出にくいなどの症状を改善する、また血管を拡張することで血圧を下げる」となります。

それではまず前立腺肥大症についてお話していきましょう。

前立腺肥大症は文字通り”前立腺が肥大した病気”です。加齢とともに発症する方が増え、80歳では約8割の方に前立腺の肥大がみられるとも言われています。

ただ肥大や症状の程度には個人差があり、必ずしも全員に対して治療が必要であるというわけではありません。

前立腺が肥大する原因ですが、いくつか説があります。ただ”男性ホルモンが関与していることは間違いない”とされているものの、未だハッキリと解明されていません。

いずれにせよ肥大した前立腺により、尿の通り道である尿道が圧迫され狭くなってしまいます。すると尿がスムーズに排泄されなくなり、以下のような症状が出現します。

日中トイレが近い”昼間頻尿”
夜中トイレが近い”夜間頻尿”
急に尿がしたくなり我慢できない”尿意切迫感”

尿がすぐに出ない”排尿遅延”
尿の勢いが弱くなる”尿勢低下”
排尿中に尿が途切れてしまう”尿線途絶”
排尿時にお腹に力を入れないと出ない”腹圧排尿”

排尿後も尿が残っている感じがする”残尿感”

尿道が閉塞して尿がほとんど出なくなる”尿閉”

こういった症状が続くと日常の生活の質（Quality of Life）に多大なる影響を与えるため治療が必要となります。

それでは今回のお薬”エブランチル”の作用機序についてお話していきましょう。

尿道、前立腺、膀胱の筋肉にはα1受容体が多く存在します。実はα1受容体にはα1A、α1B、α1Dの3種類があり、α1Aは前立腺に、α1Dは前立腺と膀胱に、α1Bは血管に多く分布しています。

α1A受容体は排尿と蓄尿をコントロールしており、交感神経により刺激を受けるとこれらの筋肉が収縮し尿道が閉まるようになっています。

前立腺が肥大するとα1A受容体の数が増加するため、交感神経の刺激を過剰に受けることになります。すると必要以上に尿道が締め付けられてしまい、先ほどお話したような症状が現れてしまうのですね。

そこでエブランチルです。

エブランチルはα1A受容体に対する交感神経の刺激をブロックする作用を持っています。これにより前立腺や尿道の筋肉の過剰な緊張を緩め、尿道が広がることで症状が改善するのです。

更にエブランチルは血管平滑筋のα1Bに対しても作用します。末梢血管が拡張することで降圧効果が期待できます。

ハルナール、フリバス、ユリーフなどはα1A又はα1Dの選択性が高く、血圧低下の副作用が少ないというのが特徴でしたが、エブランチルは選択性が低いことを逆に利用して高血圧症にも適応があるのですね。

その選択性からエブランチル、ハイトラシン、ミニプレスを第一世代α1遮断薬、ハルナール、フリバス、ユリーフを第二世代α1遮断薬と分類されることがあります。

またエブランチルは尿道平滑筋を緩めることにより、尿道全域にかかる力を低下させる作用をもつため、神経因性膀胱に伴う排尿困難にも適応があります。

神経因性膀胱とは文字通り”神経に原因がある膀胱”。膀胱の働きは大脳や脊髄をはじめ様々な神経により管理されています。

何らかの原因によりこの神経が障害されることで起こる排尿障害や蓄尿障害のこと神経因性膀胱と言います。エブランチルはα1遮断薬の中で唯一適応があります。

主なものはめまいや立ちくらみ、嘔気、嘔吐などです。めまいや立ちくらみは血圧の低下により起こるため、第二世代のα1遮断薬よりも頻度は高いですね。

特に飲み始めに注意が必要であり、既に高血圧の薬を服用している方などは少量から開始する場合もあります。高所の作業、自動車の運転など危険を伴う作業に従事する方はこれらを念頭に置き、十分注意するようにして下さい。

エブランチルはカプセル内に徐放性の顆粒を含んでいます。カプセルが飲みづらい場合はカプセルを外して服用してもOKですが、中の顆粒を噛み砕かずに服用するようにして下さい。

それではエブランチルについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。