都心などの主要都市では薬剤師数が十分に確保され、心配されていた薬剤師不足は解消したかのように思えます。ですが、少し地方に目を向けてみれば、依然として薬剤師が不足している現状は改善していません。
全国で薬学部が増設されましたが、6年制の導入などによって薬学部の敷居は高いままであり、その恩恵は想定していたよりも小さく収まってしった印象があります。
絶対的に薬剤師が不足している今、新たな制度としてテクニシャン(薬剤師助手)制度が注目を浴びていますが、いったいどういう制度なのか、薬剤師に対する影響はどのようなものなのか、まとめてみました。
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テクニシャン制度とは?その業務内容は?
テクニシャン制度は、現在日本で認められているものではありません。アメリカなどの薬剤師先進国において導入されている制度です。
欧米での薬剤師の業務内容は日本の薬剤師とは異なっており、ほぼピッキングなどの調剤は行っておりません。その主な業務は処方鑑査や服薬指導などの専門性を持った頭脳労働です。
では、その他の部分は誰が補っているのか? そこにテクニシャンが関わってくるのです。
テクニシャンが行う業務は薬剤師の補助です。薬剤師がその職能を存分に発揮するために、薬学的な専門知識を必要としない部分をテクニシャンが担っています。錠剤のピッキングなどの調剤行為、事務的な作業など、その業務は多岐にわたります。
テクニシャン制度導入よる薬剤師への影響
テクニシャン制度が実施された場合、現在薬剤師が担っている業務のかなりの部分をテクニシャンに委託することが可能になります。その結果、薬剤師は通常業務の雑事に悩まされることなく、存分に薬剤師としての職能を発揮することができるようになるでしょう。
ですが、テクニシャンはあくまでも薬剤師の補助ですので、薬剤師の監督のもとに業務を遂行することになります。今までは違った業務として、テクニシャンの指導や監督責任などが求められることになります。
今までの調剤薬局は、患者視点で考えれば正しい薬を早くもらえればそれで良い場所でした。医療提供施設であるのに、納得のいく医療を提供できないという薬剤師のジレンマが存在していたのです。それは、薬剤師の仕事が外に見えづらいことに起因しているのではないでしょうか。
テクニシャン制度が実施されれば、薬剤師の業務が外に発信されやすくなり、そういった点も改善されていくかもしれません。
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今後求められる薬剤師像
テクニシャン制度が実施されることで、薬剤師に求められる業務は専門性が増していきます。調剤薬局であっても各種専門薬剤師認定制度を利用して学んでいくことが求められ、患者対応に関しても薬学的かつ医学的な観点からのアプローチが必要となるでしょう。
それだけではなく、医師よりも身近な医療従事者として患者との距離感が近くなることにより、精神的なケアまでも視野に入れた対応を求められることになります。
薬剤師は勉強家が多く、知識を多く持っている人はたくさんいますが、それによって患者を見るのではなく、薬ばかりに目が向いていることもしばしばです。
テクニシャン制度が実施されれば、薬剤師としての仕事に対する意識転換も必要となってくるでしょう。
まとめ
日本では現在、法律的に薬剤師にしか許されていない行為であっても専門知識を必要としない部分が多くあります。
薬剤師数が不足しているためにそういった雑事に悩まされ、本来発揮されるべき職能が発揮できていない現状を、テクニシャン制度は打破することにつながるのではないでしょうか。
ただし、このテクニシャン制度が日本で実施された場合、薬剤師の不足はカバーできるかもしれませんが、ここで薬剤師の存在意義を示すことができなければ、逆に淘汰されていく可能性もあります。
テクニシャンの給料は当然ですが薬剤師より低く設定されます。そうなると例えば今まで薬剤師3人体制の調剤薬局の場合、人件費を抑えるために「薬剤師1人+テクニシャン2人」といった体制を経営上取る薬局も出てくるでしょう。
つまり何が言いたいかというと、薬剤師免許があっても働く場所がなくなるといった可能性も決して否定できないということです。
薬剤師は専門知識を常にアップデートさせていかなければいけない職業です。現在の立場に甘んじて、己を磨かない薬剤師に生き残る場所はありません。テクニシャンと間違われるような仕事しかしていないとなると薬剤師の立場は今後一層厳しいものになります。
テクニシャン制度が実施されたら仕事が楽になる、といった程度の認識ではなく、これを機会に自分の仕事を見直していく必要があると私自身感じています。
それではテクニシャン制度については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。