シックデイ(sick day)
という言葉をご存知でしょうか?日本語訳をすればそのまま「病気の日」となりますが、糖尿病治療を受けている方が知っておくべき大切な言葉です。
一般の人では特に問題にならないような風邪や下痢が、糖尿病患者の場合にはシックデイとして時に重篤な症状となってしまう危険性があります。
今回は、シックデイについての概要と、シックデイの対処法についてお伝えします。
スポンサーリンク
シックデイとは?その原因と症状
シックデイは糖尿病患者が風邪や下痢などの体調不良を起こしている期間を指していいます。糖尿病患者は一般の人よりも病気に対する抵抗力が低下しており、免疫力が弱くなっている状態です。
血糖値が高い状態で維持されていると、血液中の免疫を担当している細胞がダメージを受けて活動が低下してしまい、結果として一般人では問題にならないような病気が、重篤な状態を引き起こしてしまうことにつながります。
そのため、糖尿病患者では感染症や風邪などの体調不良を起こしている時に、正しい知識で対処していくことが大切なのです。
シックデイとされるのは、インフルエンザや肺炎などの感染症、下痢や嘔吐などの消化器症状の他、歯科治療などによって出血が多くなる場合も当てはまります。
こういった状況になってしまった時には、自己判断で療養するのではなく医師の判断を仰ぐことが必要です。
糖尿病患者が体調不良を起こしている場合、その血糖値は通常時とは全く違った挙動を示します。まず、体調不良を起こした人体は、それに対処しようと様々なホルモンを分泌します。
体内に起きている異常を改善しようとして、副腎皮質ホルモンが分泌されて病気による炎症を抑える働きが起きますが、副腎皮質ホルモンには血糖値を上昇させる効果が存在するため、シックデイ時には通常時よりも高血糖になりやすくなるのです。
それだけではなく、副腎皮質ホルモンにはインスリンの働きを抑制する効果まであるため、それも加わって血糖値の上昇がどんどん促進されてしまうことになります。
シックデイは要注意!意識障害を起こす危険性も…
シックデイでは高血糖のみが心配なのではなく、逆に低血糖を起こしてしまうこともあります。
食欲がなくほとんど食事ができていない時に、いつも通り医薬品を使用してしまうと低血糖を誘発することがあるため注意が必要です。
高血糖のまま維持されているということは、膵臓の働きが低下してインスリンの分泌が少なくなったり、インスリンの働きが低下していたりといった状況が考えられます。
インスリンの働きが弱まってしまうと、糖の利用ができなくなり、エネルギーを維持するために脂肪が分解されていきます。
この脂肪を分解する際に生まれるケトン体が酸性の性質を持っているため、ケトン体を多く含んだ血液は急激に酸性に傾いてしまい、ケトアシドーシスという重篤な状態になってしまいます。
ケトアシドーシスの兆候としては、呼吸が浅くなり低血圧や頻脈が起きてきます。
のどが渇きやすく、下痢などの消化器症状が発現し、呼気にフルーツのような甘い匂いが混ざってくることも兆候として知られており、そのまま症状が進行してしまうと昏睡状態に陥ってしまいます。
高血糖状態のなかでも、インスリンの働きが維持できている時には、ケトアシドーシスにはならずに高浸透圧高血糖症候群となってしまうケースも存在します。
高血糖と水分不足によって血液の濃度が濃くなってしまい、のどの渇きや強い倦怠感などを感じてしまうのです。そのままにしていると、意識障害・けいれんなどの症状を起こしてしまいます。
スポンサーリンク
シックデイになった時はどうすればいい?シックデイ・ルールを把握しよう!
糖尿病患者の場合、軽い風邪だと考えていても急速に悪化してしまう危険性を持っています。自己判断で対応を考えず、体調を崩した場合には速やかに受診し、医師の指示を仰ぐようにしましょう。
あらかじめシックデイの対処法(シックデイ・ルール)を医師と相談しておけば、慌てることなく対応することが可能になります。
シックデイになってしまった時には、できるだけ早く正常な状態に戻る努力をしていきましょう。
対処法としては通常の風邪などと同じく、体を温めて安静にし、絶食はせずにできるだけ消化の良い食事を摂るようにしていきます。
糖尿病治療を行っていると、予期せず低血糖に陥ってしまうこともあるため、炭水化物や糖分などのエネルギー源となるものを摂るようにしてください。
水分補給を怠ってしまうとケトアシドーシスや高浸透圧高血糖症候群などの原因となってしまうため、1日に1リットル以上を目安に水分を摂取するように心がけましょう。
脱水状態ではミネラル分も同様に失われているため、水よりも経口補水液などを活用してください。血糖の状態に異常がないか、こまめにチェックすることも大切です。
シックデイの時、糖尿病治療薬は継続?中止?
医薬品による治療を行っているのなら、シックデイとなった時の服用方法を医師に相談しておきましょう。
基本的にインスリン注射は中断することなく継続しますが、内服薬の場合には病状や食事の摂取できた量に応じて中止や減量をする場合があります。
自分の使用している医薬品のタイプによって対応が変化しますので、その点も医師の指示をもらうのが望ましいでしょう。
一般的な医薬品別の対応を記載しておきますが、糖尿病治療は個人個人で状態が異なるため、自己判断で服薬の可否を決定しないようにしてください。
・スルホニルウレア薬・グリニド系(アマリールやスターシスなど):食事の量によって適宜減量する。たとえば、食事量が半分なら、薬も半量にすることが多い。
・α-グルコシダーゼ阻害薬(ベイスンやセイブルなど):消化器症状がある場合には中止する。
・ビグアナイド系(メトグルコやグリコランなど):シックデイの間は中止
・インスリン抵抗性改善薬(アクトス):シックデイの間は中止。
・DPP-4阻害薬(グラクティブやジャヌビアなど):シックデイの間も通常通り継続
・SGLT2阻害薬(スーグラやルセフィなど):シックデイの間は中止
・GLP-1受容体作動薬(ビクトーザやトリルシティなど):消化器症状がある場合には中止。
・インスリン注射:シックデイの間も通常通り継続
まとめ
糖尿病患者の場合、軽い体調不良などと安易に考えていては、思いがけない重病になってしまう危険性があります。
シックデイとなった時の対処方法をきちんと担当医師と相談し、自分のシックデイ・ルールを把握しておくことが大切なのです。
糖尿病治療をしているのにシックデイについて説明されていないのなら、一度医師に確認することをオススメします。
それではシックデイについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。