今回は風邪で病院を受診した時によく処方されるペレックス配合顆粒とPL配合顆粒の違いについて、またそれぞれの成分についても解説していきましょう。
ペレックスとPLの組成について
まずはペレックスとPLの1g中の組成を下の表にまとめましたのでご覧ください。
各成分 | ペレックス配合顆粒 | PL配合顆粒 |
サリチルアミド | 270mg | 270mg |
アセトアミノフェン | 150mg | 150mg |
無水カフェイン | 30mg | 60mg |
クロルフェニラミンマレイン酸塩 | 3mg | – |
プロメタジンメチレンジサリチル酸塩 | – | 13.5mg |
サリチルアミドとアセトアミノフェンについては全く同じです。無水カフェインについてはPLがペレックスよりも30mg多い。
そしてクロルフェニラミンはペレックスのみ。
プロメタジンメチレンジサリチル酸塩(以下プロメタジン)はPLのみとなっています。
それではそれぞれの成分について説明していきます。
サリチルアミドについて
サリチルアミドは非ステロイド性抗炎症薬(以下NSAIDs:エヌセイド)の一つです。
サリチルアミドについて説明する前に、まずプロスタグランジン(以下PG)について簡単にお話していきますね。
我々が感じる発熱、痛み、炎症といった症状には実はPGが関与しています。
例えば発熱については、PGは視床下部にある体温調節中枢と呼ばれる部分に働きかけ、普段は37度くらいに設定されている体温をそれ以上に上げるよう命令します。これをセットポイントを上昇させるといいます。
またPGはアラキドン酸からシクロオキシゲナーゼ(以下COX)と呼ばれる酵素により作られますが、PG自身は痛みを感じさせる作用はそれほど強くありません。
痛みについてはブラジキニンと呼ばれる物質があり、これが知覚神経に働きかけ興奮させることで生じます。
この痛みを増強させるのがPGであり、両者の作用が合わさることで痛みが発生すると考えて下さい。
サリチルアミドをはじめとするNSAIDsはCOXの働きを阻害する作用があります。つまりPGが作られるのを抑えることができるのです。
これにより熱が下がったり、痛みが抑えられるというわけですね。
ただし、サリチルアミド等のサリチル酸系と呼ばれる薬は
サリチル酸系製剤の使用実態は我が国と異なるものの、米国においてサリチル酸系製剤とライ症候群との関連性を示す疫学調査報告があるので、本剤を15歳未満の水痘、インフルエンザの患者に投与しないことを原則とするが、やむを得ず投与する場合には、慎重に投与し、投与後の患者の状態を十分に観察すること。
PL配合顆粒の添付文書 重大な基本的注意より引用
とされています。
これは意識障害、痙攣などの症状を伴うライ症候群を引き起こす可能性があるためです。インフルエンザ流行期の安易な服用は止めましょう。
ライ症候群とは?
小児においてインフルエンザや水痘等のウイルス性疾患に対し、アスピリン等のサリチル酸系、ボルタレン等のNSAIDsを投与した時に、嘔吐、意識障害、痙攣、肝機能障害等が出現し、最悪死亡する可能性がある非常に怖い病気です。
服用すると必ずライ症候群を起こすというわけではありませんが、インフルエンザの解熱についてはアセトアミノフェンが無難と言えるでしょう。
アセトアミノフェンについて
アセトアミノフェンの作用機序ですが、体温調節中枢に働きかけ、セットポイントを下げる作用があると言われています。
また視床と大脳皮質に働きかけ、鎮痛作用をもたらすとされていますが、詳しい事は未だはっきりとわかってはいません。
先ほどお話したようにインフルエンザで解熱剤を投与する場合はNSAIDSではなく、アセトアミノフェンが使用されるケースが多いですね。
アセトアミノフェンについて詳しく知りたい方はこちらの記事をどうぞ。
関連記事:カロナール・アンヒバ・アセリオ(アセトアミノフェン)の作用機序と副作用~ロキソニンとの違い
無水カフェインについて
カフェインの先頭に付いている無水。文字通り水がないカフェインです。ぶっちゃけ効果はほぼ同じと考えて頂いてよろしいかと思います。
さてカフェインが風邪薬に入っている目的ですが、2つあります。
1つは抗ヒスタミン薬による眠気の予防目的。
テスト直前の一夜漬けの際、眠気予防のためにコーヒーを飲んだ経験は誰しもあるかと思います(私だけ?)。
脳にはアデノシンと呼ばれる物質があります。このアデノシンがアデノシンA2A受容体と結合する事により眠気を引き起こされます。
カフェインはアデノシンA2A受容体と結合することによりアデノシンがアデノシン受容体に結合するのを邪魔します。これにより眠気を予防することができるのです。
もう一つは鎮痛補助作用。主にこれは頭痛目的と考えられます。頭痛が生じている時は脳の血管が拡張しているのです。
カフェイン摂取により脳の血管が収縮する事で炎症が鎮まり、その結果頭痛が改善します。
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抗ヒスタミン薬について
まずクシャミや鼻水が出るしくみについてお話します。
アレルギーの原因となる抗原が体内に入ると、免疫細胞が作ったIgE抗体と呼ばれるタンパク質と結合することで肥満細胞が刺激され、ヒスタミンが遊離されます。
ヒスタミンが結合するヒスタミン受容体は3つあります。その中でアレルギーや炎症に関わっているのはH1受容体です。
ヒスタミンがH1受容体に結合すると、クシャミや鼻水等の症状が出現するわけです。
ではどうするか。抗ヒスタミン薬はH1受容体を阻害することで、その症状を緩和する作用を持ちます。
今回のクロルフェニラミンとプロメタジン。2つはいずれも第一世代抗ヒスタミン薬と呼ばれています。
抗ヒスタミン薬には第一世代から第三世代まであり、数字が大きいほど新しいです。
さて、脳には有害物質が簡単に入らないよう、血液脳関門(blood brain barrier、略してBBB)という血液と脳の間に関所のようなものが存在します。
血液脳関門を通過する条件としては、脂溶性である、分子量が小さい(500以下)等があります。もちろん例外もあります。
第一世代抗ヒスタミン薬は脂溶性が高く、脳内に入りやすいという特徴があるため、一般的に眠気の副作用が出やすいのです。
またH1受容体だけを阻害すればいいのですが、構造が似ているアセチルコリン受容体も阻害してしまいます。
その結果、口の渇きや便秘、尿が出にくいといった、いわゆる抗コリン作用も出現してしまうのです。
前立腺肥大や緑内障の患者様には禁忌となっているのはそのためですね。世代が新しいものはその部分が改善されています。
ただクロルフェニラミンは第一世代ながら眠気の作用が比較的弱いとされています。
そのためペレックスの方がPLよりも無水カフェインの量が30mg少ないと考えられます。
「じゃあペレックスだけでPLはいらないのでは?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、未だにPLも結構処方されています。
ではどちらがいいのでしょうか…?
実は抗ヒスタミン薬の効果や眠気の副作用については個人差が非常に大きいと言われています。
つまり服用された患者様に効果があり、眠気等の目立った副作用がなければどちらでもいい、という事になるでしょう。
ペレックスとPLの含有量比較と用法・用量
ペレックスにはペレックス配合顆粒と小児用ペレックス配合顆粒があります。
両者を比較すると…「ペレックス配合顆粒1g = 小児用ペレックス配合顆粒6g」となります。
一方PL配合顆粒と同成分の薬剤には「ピーエイ配合錠」と「幼児用PL配合顆粒」があります。
3剤を比較すると…「PL配合顆粒1g = ピーエイ配合錠2錠 = 幼児用PL配合顆粒6g」となります。
・PL配合顆粒
通常,成人には1回1gを1日4回経口投与する。なお,年齢,症状により適宜増減する。
・ピーエイ配合錠
通常,成人には1回2錠を1日4回経口投与する.なお,年齢,症状により適宜増減する.
・ペレックス配合顆粒
通常、成人1回1gを1日3~4回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
・小児用ペレックス配合顆粒
通常、1回2~4歳は1g、5~8歳は2g、9~12歳は3gを1日3~4回服用する。なお、症状により適宜増減する。
処方される側として以上を押さえておけば概ねよろしいかと思います。
それではペレックスとPLの違いについては以上とさせて頂きます。最後まで読んでいただきありがとうございました。
・出典
PL配合顆粒 添付文書・インタビューフォーム
ピーエイ配合錠 添付文書・インタビューフォーム
ペレックス配合顆粒 添付文書・インタビューフォーム
小児用ペレックス配合顆粒 添付文書・インタビューフォーム