プレベナー20とキャップバックスの違いは?血清型・費用・接種回数を比較

プレベナー20とキャップバックスの違いは?血清型・費用・接種回数を比較

2026年4月から、高齢者の肺炎球菌ワクチンの定期接種はプレベナー20に変わりました。同じ結合型のワクチンにキャップバックスもありますが、こちらは定期接種では使えません。公費で受けられるものと、自費で受けるもの。この2つの違いをどう説明するかで、現場はよく迷います。

この記事では、含まれる血清型の違い、日本のデータでのカバー率、接種の回数と間隔、費用と保険の扱い、年齢や接種歴による考え方の分かれ方を整理しました。厚生労働省の資料と学会の合同委員会「考え方」第8版、両剤の添付文書をもとに、薬剤師の視点でまとめています。

この記事でわかること
  • プレベナー20とキャップバックスで違いが出る3つのポイント
  • 日本のデータでの血清型カバー率と、その数字の読み方
  • 「5年ごと」「一生1回」がどこまで正しいのか
  • 年齢・接種歴・持病で考え方がどう変わるか

プレベナー20とキャップバックスの違いは、この3点に集約される

先に結論です。プレベナー20とキャップバックスは、どちらも同じ「結合型」の肺炎球菌ワクチンです。仕組みが違うわけではありません。実際に判断が分かれるのは、公費で打てるか、どの血清型をカバーするか、小児に使えるか、この3点です。

2剤の違いを3行で
  • 定期接種(公費)で使えるのはプレベナー20だけ。キャップバックスは全額自費になる
  • カバーする血清型が広いのはキャップバックス。ただし逆に、プレベナー20にあってキャップバックスに無い型もある
  • 小児にも使えるのはプレベナー20だけ。キャップバックスは成人専用

なお、どちらについても「1回打てば一生効く」とは公的な文書に書かれていません。ここは誤解が多いので、あとで章をひとつ使って整理します。

定期接種(公費)で打てるのはプレベナー20だけ

2026年4月1日から、高齢者の肺炎球菌ワクチンの定期接種は、ニューモバックスNP(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン、PPSV23)からプレベナー20(沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン、PCV20)に変わりました。

厚生労働省の高齢者の肺炎球菌ワクチンのQ&Aは、定期接種に用いるワクチンはPCV20のみである、と明記しています。つまりキャップバックス(21価肺炎球菌結合型ワクチン、PCV21)も、ニューモバックスNPも、バクニュバンス(沈降15価肺炎球菌結合型ワクチン、PCV15)も、定期接種としては使えません。

定期接種の対象は2つです。ひとつは65歳の人。もうひとつは60歳以上65歳未満で、心臓・腎臓・呼吸器の機能障害またはHIV(ヒト免疫不全ウイルス)による免疫機能障害があり、日常生活が極度に制限される人です。回数は1人1回と決められています。

予防接種法上の位置づけはB類疾病です。B類には接種勧奨も努力義務もなく、一定額の自己負担が生じます。この「自分で決めて、いくらか払う」という性格が、そのまま読者の迷いにつながっています。

カバーする血清型が広いのはキャップバックス。ただし全額自費

肺炎球菌は、菌体を包む莢膜(きょうまく)の糖の構造によって100種類以上の型に分かれます。これが血清型です。ワクチンは含まれている血清型にしか効かないので、「何価か」よりも「今この国で病気を起こしている型が入っているか」が問題になります。

日本の成人の侵襲性肺炎球菌感染症(IPD、血液や髄液など本来は菌がいない場所から菌が検出される感染症)では、2022年から2024年の原因菌をキャップバックスは78%、プレベナー20は50%カバーしていました。ただしキャップバックスは任意接種なので全額自己負担です。

しかもカバー率の高さは、そのまま「発症をこれだけ防げる」という意味ではありません。この2点をどう読むかが、この記事のいちばん大事なところです。

プレベナー20とキャップバックスを項目別に比べる

細かい違いは表で見たほうが早いので、ニューモバックスNPも並べて整理します。使い分けの軸になるのは、太字にした「定期接種」「小児への適応」「接種経路」の3行です。

早見表で違いを一覧する

項目プレベナー20キャップバックスニューモバックスNP
種類結合型(PCV20)結合型(PCV21)莢膜ポリサッカライド型(PPSV23)
血清型の数202123
製造販売元ファイザーMSDMSD
国内の発売2024年8月2025年10月1988年(成人の定期接種は2014年から)
効能・効果の対象高齢者・リスクの高い者、および小児高齢者・リスクの高い成人高齢者・リスクの高い者、2歳以上の小児
小児への適応ありなし(申請中・未承認)2歳以上はあり
接種経路成人は筋肉内注射のみ(6歳未満は皮下も可)筋肉内注射のみ筋肉内注射または皮下注射
用量・回数1回0.5mL1回0.5mL1回0.5mL
アジュバントリン酸アルミニウムに吸着無添加無添加
定期接種(公費)使える使えない2026年3月31日で終了
保険給付対象外(薬価基準未収載)対象外(薬価基準未収載)脾摘後の発症予防など限られた場合のみ
保存2〜8℃・凍結を避ける(懸濁液なので接種直前によく振り混ぜる)2〜8℃・凍結を避ける2〜8℃・凍結を避ける

アジュバントというのは、免疫の反応を強めるために加える添加物です。免疫に「敵が来た」と知らせるサイレンのような役割をします。プレベナー20はリン酸アルミニウムを使い、キャップバックスは使っていません。局所の反応の出方を考えるときの材料になります。

切り替えの時期にいちばん間違えやすいのが接種経路です。ニューモバックスNPは筋注でも皮下でも打てましたが、プレベナー20は成人では筋注のみ、キャップバックスも筋注のみです。厚生労働省のQ&Aも「いずれも1回接種ですが、接種方法が異なっています」と注意を促しています。

含まれる血清型:共通は10、プレベナー20だけが10、キャップバックスだけが11

2剤は「21価のほうが1つ多い」という関係ではありません。中身の重なりは半分しかなく、残りは互いに別の型を持っています。

区分血清型
両方に入っている(10種)3、6A、7F、8、10A、11A、12F、19A、22F、33F
プレベナー20にだけ入っている(10種)1、4、5、6B、9V、14、15B、18C、19F、23F
キャップバックスにだけ入っている(11種)9N、15A、15C、16F、17F、20A、23A、23B、24F、31、35B

キャップバックスにだけ入っている11種のうち、他のどのワクチンにも含まれていない完全な独自枠は8種です。15A、15C、16F、23A、23B、24F、31、35Bがそれにあたります。残りの9N、17F、20Aはニューモバックスにも入っています。

逆側も押さえておいてください。日本呼吸器学会などの合同委員会がまとめた「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方」第8版は、キャップバックスについて「PCV7血清型に加えて血清型1、5に対する免疫原性を欠いている」と書いています。PCV7血清型とは、最初の7価ワクチンに入っていた4、6B、9V、14、18C、19F、23Fのことです。

なお15Cについては少し補足が要ります。キャップバックスに実際に入っているのは15Bの構造をわずかに変えたもので、これが15Cに対する免疫を誘導します。15Bに対しても交差反応性があることが確認されています。

小児にも使えるのはプレベナー20だけ

意外と知られていませんが、この2剤は使える年齢の幅が違います。プレベナー20の効能・効果は2本立てで、高齢者やリスクの高い人に対する肺炎球菌感染症の予防に加えて、小児に対する侵襲性肺炎球菌感染症の予防が入っています。2024年10月からは小児の定期接種にも使われています。

キャップバックスの効能・効果は成人だけです。添付文書にも小児等を対象とした臨床試験は実施していないと記載されています。MSDは2025年11月7日に小児への適応追加を申請したと公表していますが、2026年8月時点では未承認です。

「孫が打っているのと同じワクチンか」と聞かれることがあります。プレベナー20なら同じもの、キャップバックスなら大人専用、という説明で通じます。

カバー率の数字をどう読むか

結論を先に書くと、カバー率はキャップバックスが明らかに高く、しかもその差は年々広がっています。ただしカバー率は「予防できる割合」ではありません。数字の意味を取り違えると、患者への説明もずれます。

日本のデータでは、キャップバックスが78%、プレベナー20が50%

厚生労働省研究班による成人の侵襲性肺炎球菌感染症サーベイランスで、65歳以上の原因菌に対する各ワクチンのカバー率が報告されています。3,034株を解析した結果です。

ワクチン2013〜15年2019〜21年2022〜24年
キャップバックス(PCV21)79%75%78%
プレベナー20(PCV20)69%53%50%
ニューモバックスNP(PPSV23)68%53%51%
バクニュバンス(PCV15)55%32%35%

この表でいちばん大事なのは縦の比較ではなく、横の動きです。キャップバックス以外はすべて右に行くほど下がっています。理由は次の章で書きますが、子どもへの結合型ワクチンの定期接種が進んだ結果、大人の肺炎球菌の顔ぶれが入れ替わったためです。

肺炎球菌性肺炎でも同じ傾向でした。2019年から2022年の多施設研究では、65歳以上の原因菌のカバー率はキャップバックス72.3%、プレベナー20が42.8%、ニューモバックスNPが42.6%、バクニュバンス28.2%でした。

「プレベナー20は成人の侵襲性肺炎球菌感染症の約7割をカバーする」という説明を見かけますが、これは2013年から2015年の69%にあたる古い数字です。直近の2022年から2024年は50%まで下がっています。厚生労働省の患者向けページも現在は「約5〜6割」と書いています。

「カバー率」と「予防できる割合」は別のもの

ここを混同すると説明を間違えます。カバー率は「原因になった菌のうち、ワクチンに入っている型が何%だったか」であって、「その%の患者を防げる」という意味ではありません。ワクチンに入っている型でも、免疫のつき方には個人差があります。

厚生労働省の小委員会でも、参考人から「予防される血清型の割合ではなく、カバーされる血清型の割合と記載したほうがよい。必ずしも予防効果があるわけではない」という指摘が出て、事務局が表記を検討すると答えています。

実際の数字で見ると違いがはっきりします。厚生労働省は、プレベナー20について「血清型に依らない侵襲性肺炎球菌感染症全体の3〜4割程度を予防する効果がある」としています。カバー率の5〜6割とは別の数字です。つまり、カバー率をそのまま予防率として伝えてはいけません。

患者さんに「78%効くんですね」と受け取られると、あとで話がこじれます。「その型が原因になったときに備えられる範囲が広い」という言い方に置き換えると、誤解が減ります。

キャップバックスがカバーしない血清型が、65歳以上でも7%残っている

カバー率が広いことと、常に優れていることは同じではありません。プレベナー20がカバーしてキャップバックスがカバーしない血清型、つまり4、6B、9V、14、18C、19F、23Fによる感染は、65歳以上の侵襲性肺炎球菌感染症で2023年から2024年でも7%を占めています。米国では4%です。

この7%は低下傾向にありますが、消えてはいません。とくに注目されているのが血清型4です。

厚生労働省の小委員会では参考人から、カナダや米国コロラド州、スペインの一部地域で血清型4の流行があり、侵襲性の高いこの型が国内に入れば広がる可能性は否定できない、という指摘が出ています。同じ場で、だからこそプレベナー20は今後も有用ではないか、とも述べられています。

委員からも「将来的に両方が使えたほうがよいのか」「地域によって血清型が変わる場合に使い分けができたほうがよいか」という議論が出ています。つまり、どちらが上という決着は公的にはついていません。

なぜ「成人専用」のワクチンが必要になったのか

キャップバックスは、成人の肺炎球菌の疫学に合わせて設計された初めてのワクチンです。この背景を知っておくと、なぜカバー率の表があんな動き方をするのか、なぜ子どもと大人で入っている型が違うのかが一本でつながります。

結合型と莢膜ポリサッカライドでは、免疫のつき方が違う

この仕組みが分かると、なぜ定期接種のワクチンが結合型に切り替わったのか、なぜ「5年ごとに打ち直す」という運用が変わったのかが説明できます。

肺炎球菌は莢膜という糖の殻をかぶっていて、これが白血球に食べられるのを邪魔します。ニューモバックスNPは、その糖そのものを抗原として入れたワクチンです。添付文書には、糖は主にT細胞に頼らない仕組みで抗体を誘発する、と書かれています。糖だけを見せるので、免疫の司令塔であるヘルパーT細胞が関与しません。

結合型はここが違います。糖を、無毒化したジフテリア毒素(CRM197)というタンパク質にくっつけてあります。タンパク質が付くとヘルパーT細胞が反応し、抗体を作るB細胞が成熟して、記憶B細胞まで作られます。糖を「名札のない不審物」として見せるのではなく、「名札を付けて渡す」ようなものだと考えると分かりやすいと思います。

つまり、記憶が残る形で免疫がつくのが結合型です。だから同じ血清型が入っていれば、結合型のほうが高い有効性を期待できます。厚生労働省がPPSV23からPCV20への変更理由として挙げているのも、まさにこの機序の違いです。

子どもへの接種で、大人の肺炎球菌の顔ぶれが変わった

日本では2010年に7価の結合型ワクチンが子どもに導入され、13価、15価、20価と広がってきました。ワクチンに入っている型は子どもの鼻やのどから減っていきます。子どもは肺炎球菌の主な運び手なので、大人にうつる菌も一緒に減ります。これが間接効果です。

ただし菌のほうも空いた席に別の型が座ります。ワクチンに入っていない型が入れ替わりで増えることを血清型置換といいます。その結果、大人の侵襲性肺炎球菌感染症では、従来のワクチンに入っていない型の割合が目立って増えました。

だからキャップバックスは、子どもの接種プログラムが成熟した国の「大人に残っている型」に狙いを絞って作られました。子ども向けのワクチンから型を足していく作り方をやめた、というのがこのワクチンの本質です。ここが分かると、血清型4や1、5が入っていない理由も腑に落ちます。子どもへの接種で押さえ込まれた型を、あえて外しているからです。

裏を返せば、この設計は小児の接種率が保たれていることが前提になります。小委員会でも、小児で高い接種率を実現して初めて高齢者側の戦略が成立する、という指摘が出ています。

ペニシリンが効きにくい型は、キャップバックスにだけ入っている

感染症の治療という視点から見ると、もうひとつ見逃せない特徴があります。国内の髄膜炎由来株404株(2013年から2024年)のうち、ペニシリンGに耐性を示した株は156株、38.6%でした。その耐性株の血清型分布で多かったのが23A、15A、35Bです。

この3つはいずれもキャップバックスにだけ入っている型です。つまり、治療が難しくなりやすい型が、キャップバックスの独自枠に集まっています。抗菌薬が効きにくい菌ほど予防の価値が上がる、という意味で、感染対策の観点からは覚えておく価値のある事実です。

効果の比較で分かっていること、分かっていないこと

ここは慎重に読む必要があります。2剤を直接比べた試験は存在しますが、比べたのは抗体の反応であって、肺炎や重症化がどれだけ減ったかではありません。厚生労働省の小委員会でも、13価を除いて直接的な臨床での有効性データはない、と明言されています。

直接比較は、11か国で行われた第Ⅲ相の二重盲検試験(STRIDE-3)です。共通する10血清型ではキャップバックスがプレベナー20に対して非劣性、つまり劣ってはいないことが示され、キャップバックスにだけ入っている11血清型のうち10型で優越性の基準を満たしました。

15Cだけは基準に届いていません。安全性のプロフィールに明らかな差はなかったと報告されています。

国内では、未接種の65歳以上を対象にキャップバックスとニューモバックスNPを比べた試験(STRIDE-9)も行われ、独自の8血清型で優越性が示されました。ただしこの試験ではニューモバックスNPも筋肉内注射で投与されています。現場では皮下接種されることも多いので、副反応の出方が試験と一致しない可能性があります。

つまり、これらの試験から言えるのは「独自の血清型について抗体がしっかり上がる」までです。「肺炎が何割減る」という話ではありません。

年齢が上がるほど、ワクチンの効果は落ちる

これは接種を先延ばししている人の判断に直結する事実です。13価結合型ワクチンの大規模試験の事後解析では、65歳の時点で接種した場合の予防効果が65%だったのに対し、75歳での接種では40%に低下したと報告されています。

厚生労働省の小委員会も、13価の有効性は少なくとも4年から5年持続し、有効性は高齢になるほど低下すると報告されている、とまとめています。つまり「もう少し様子を見てから」という選択は、効果の面ではあまり有利になりません。定期接種の対象年齢が65歳に置かれているのも、この年齢での接種がもっとも費用対効果に優れると分析されたためです。

プレベナー20そのものの有効性についても触れておきます。国内の承認は13価との免疫原性の比較に基づくもので、発症予防を直接検証した試験ではありません。

ただし米国の1,650万人規模の調査では、侵襲性肺炎球菌感染症に対して25.6%、肺炎に対して15.2%の有効性が報告され、減少幅がもっとも大きかったのは85歳以上と免疫不全状態の人でした。

何回打つのか:「5年ごと」も「一生1回」も、そのままでは正しくない

この章がいちばん誤解の多いところです。答えを先に書くと、制度としての公費の助成は1人1回、そして医学的な再接種の必要性は現時点で結論が出ていません。「5年ごと」も「一生1回」も、どちらも公的な文書の書き方とは違います。

「5年ごとに打ち直す」はニューモバックスが唯一の選択肢だった時代の運用

合同委員会の「考え方」第8版は、第7版以降、高齢者における結合型ワクチンの利用が拡充されたことから、ニューモバックスNP接種後の同ワクチンの再接種を原則として選択肢としない、と書いています。

そもそもニューモバックスNPの添付文書には、過去5年以内に同じワクチンを接種した人では、注射部位の疼痛や紅斑、硬結といった副反応が初回よりも頻度が高く、程度も強く出ると報告されている、と書かれています。再接種する場合は必要性を慎重に考慮し、前回から十分な間隔を確保するように、とも記載されています。

「5年ごと」という言葉が広まったのは、この5年という記載と、他に選択肢がなかった時代の運用が結びついたためだと考えられます。2026年4月以降は、同じワクチンを打ち直すのではなく、結合型を打つという選択肢のほうが前に出ています。

「結合型なら一生効く」と言い切れない理由

記憶B細胞ができるのだから一生持つはずだ、という理屈は分かります。ただし公的な文書はそこまで言っていません。

合同委員会「考え方」第8版(2026年4月1日)の図の注記には、次のように書かれています。PCV20およびPCV21接種後のワクチン効果の持続は5年程度と考えられるため、免疫原性の観点からは接種後5年以降の再接種が必要と考えられる。しかしながら、現時点で再接種の免疫原性、安全性のデータはない。

読んで分かるとおり、「5年程度と考えられる」と「再接種のデータはない」が同時に書かれています。「一生効く」とも「5年後にまた打ちましょう」とも言っていません。分からないことを分からないまま書いてある、というのが正確な読み方です。

「1回で一生予防できる」という説明は、一次情報と整合しません。患者に伝えるときは「今のところ公費で受けられるのは1回」「将来また打つべきかどうかは、まだ結論が出ていない」と分けて話すのが安全です。

制度としての回数は1人1回。前回のワクチンからは1年以上あける

定期接種の回数は1人1回です。これは公費助成の回数であって、医学的に生涯1回で十分だと確定したという意味ではありません。ここを分けて説明すると、患者の受け取り方が変わります。

間隔についても目安があります。ニューモバックスNP、または13価・15価・20価の結合型ワクチンを接種した場合、接種から1年以上の間隔を置いて、プレベナー20またはキャップバックスを接種することができる、というのが第8版の記載です。「接種することができる」であって「接種すべき」ではない点に注意してください。

接種歴・年齢・持病で、答えはどう変わるか

ここまでの内容を、実際の相談の形に落とします。ただし最終的にどのワクチンを接種するかは、接種する医師が個別に判断するものです。以下は、その相談の材料として整理したものだと考えてください。

未接種の人(65歳ちょうど/66歳以上/60〜64歳で該当する障害がある人)

状況公的な位置づけ確認すること
65歳・未接種プレベナー20の定期接種の対象。任意接種としてキャップバックスを選ぶこともできる自己負担額と、任意接種にした場合の全額自費との差
66歳以上・未接種現時点では公費の対象外。任意接種としてプレベナー20またはキャップバックスの接種が考えられる接種歴の記録。長期療養特例に該当しないか
60〜64歳・該当する障害があるプレベナー20の定期接種の対象身体障害者手帳1級相当かどうかを市区町村に確認

66歳以上の人から「なぜ自分は対象外なのか」と言われることがあります。2014年度から2023年度までは65歳以上を5歳刻みで対象にする経過措置がありましたが、2024年3月末で終了しました。

2025年10月23日の基本方針部会でも、65歳を超える人への経過措置を現時点では設けない、と結論されています。すでにニューモバックスNPの接種機会が十分に確保されていたこと、有効性が高齢になるほど低下すること、自治体の事務負担などが理由です。

同時に、経過措置についてはキャップバックスの定期接種化を検討する際にあらためて検討する、70歳で接種機会を設けることを軸に今後検討する、とも述べられています。決まってはいませんが、検討の対象からは外れていません。

基礎疾患・免疫不全がある人

ここは推奨の強さが2段階に分かれています。言葉の違いをそのまま伝えてください。

  • 基礎疾患がある患者:その重症度に応じて、プレベナー20またはキャップバックスの接種、あるいは15価と23価の連続接種を「検討することが望ましい」
  • 免疫不全状態のある患者:プレベナー20またはキャップバックス、あるいは15価と23価の連続接種が「推奨される」

ここでいう基礎疾患には、糖尿病、慢性肺疾患、アルコール依存症、慢性心疾患、慢性肝疾患が含まれます。免疫不全状態としては、固形がん、抗がん剤治療、ステロイド療法、慢性腎疾患・透析、自己免疫性疾患、脾臓の機能を失った状態などが挙げられています。

実際、2013年から2022年の国内サーベイランスでは、65歳以上の侵襲性肺炎球菌感染症患者1,740例のうち、基礎疾患があった人が58.1%、免疫不全状態だった人が31.2%を占めていました。発症している人の多数派がハイリスク者だということです。

なお、脾臓を摘出した患者では話が少し変わります。保険給付の対象になるのはニューモバックスNPだけで、プレベナー20とキャップバックスはどちらも薬価基準未収載のため保険給付の対象外です。費用負担の面では、この点が判断に効いてきます。

ニューモバックスなどを打ったことがある人

過去に定期接種としてニューモバックスNPを接種した人は、原則として定期接種の対象外になります。ただし前回の接種から1年以上あけていれば、任意接種としてプレベナー20またはキャップバックスを接種することができます。

ここで見落とされやすいのが、任意接種で打ったことがある人の扱いです。第8版の一部修正(2026年6月15日)では、対象外になるのは「過去に定期接種として」接種した人だと書き分けられました。

そのうえで、任意接種による接種歴のある65歳の人で個別通知が届いていない場合は、定期接種を受けられるかどうかを居住する市区町村へ問い合わせることが望ましい、という一文が加わっています。

つまり、自費で打った経験がある人を一律に「対象外です」と案内するのは早すぎます。運用は自治体ごとに異なるので、確認する価値があります。

もうひとつ、プレベナー20を打った人にキャップバックスを上乗せする、という話も出てきます。第8版は1年以上あければ接種することができる、としているので、選択肢としては存在します。

ただし厚生労働省の資料は、プレベナー20の接種歴がある人にキャップバックスの接種を推奨している国はない、と明記しています。「できる」と「推奨される」は別だと押さえておいてください。

費用と、キャップバックスが公費になる見込み

金額の差は小さくありません。そして「待てば公費になるのか」という疑問には、2026年8月時点では「まだ決まっていない」としか答えられません。

定期接種の自己負担額は市区町村で違う

定期接種の自己負担額は市区町村が決めるため、全国共通の金額はありません。ひとつの例として福岡市では、2026年3月31日まで(ニューモバックスNP)が4,200円、2026年4月1日以降(プレベナー20)が5,900円になっています。結合型に切り替わったことで自己負担が上がりました。

合同委員会も、定期接種ワクチンが結合型に切り替わることで個人の費用負担が増加すると考えられる、と書いています。生活保護受給世帯や市県民税非課税世帯などを対象に自己負担を免除する制度を設けている自治体も多いので、金額を理由に迷っている人には確認をすすめてください。

キャップバックスは全額自費。保険が使えるのはニューモバックスの限られた場面だけ

キャップバックスは定期接種で使えないので、接種すれば全額自費です。金額は医療機関が自由に設定するため施設によって異なります。おおむね1万円台半ばを提示する施設が多いものの、公定価格ではありません。金額は必ず受診先に確認してもらってください。

保険については、両剤とも添付文書の25項に「本剤は保険給付の対象とならない(薬価基準未収載)」と明記されています。一方でニューモバックスNPは薬価収載されており、薬価は1筒4,735円です。ただし保険給付は「2歳以上の脾摘患者における肺炎球菌による感染症の発症予防」などに限定されています。

つまり、脾臓を摘出した患者で保険を使えるのは現状ニューモバックスNPだけです。カバー率だけを見て結合型をすすめると、費用の面で行き詰まることがあります。

定期接種化の検討はどこまで進んでいるか

2026年2月26日のワクチン評価に関する小委員会でキャップバックスが審議されました。結論は、成人の肺炎球菌感染症に係るファクトシートの追補版を作成し、その内容を踏まえて再度議論する、というものです。定期接種化は決定していません。

委員からは、有効性・安全性・費用対効果について議論に進むだけの知見はそろってきている、という評価も出ています。合同委員会の第8版も、現在、定期接種化に係る検討が行われている、と記載しています。

海外の状況も参考になります。厚生労働省の資料によれば、多くの国でキャップバックスは薬事承認されているものの、高齢者への公的接種に導入している国は限られています。「海外ではもう標準だから」という説明は正確ではありません。

制度と推奨は改定されます。ここに書いた内容は2026年8月時点の公的情報に基づいています。接種の可否・費用・対象については、お住まいの市区町村と接種を受ける医療機関で最新の情報を確認してください。

接種の実務と、患者への説明

最後に、接種する側が押さえておく実務をまとめます。切り替えの年は手順そのものが変わっているので、確認の意味で目を通してください。

接種経路と部位、他のワクチンとの同時接種

  1. 用量はどちらも1回0.5mL。プレベナー20は懸濁液なので、接種直前によく振り混ぜる
  2. 接種経路は筋肉内注射。キャップバックスは添付文書に筋肉内注射のみに使用すること、と明記されている
  3. 部位は通常、上腕の三角筋中央部。臀部や、神経幹・血管が存在する可能性のある部位には注射しない
  4. 他のワクチンとの同時接種は、医師が必要と認めた場合に可能。ただし混合はせず、別の部位に接種する

インフルエンザワクチンとの同時接種は、キャップバックスで専用の試験が行われています。小委員会では、安全性は同時接種の有無で大きな違いがなく安全に接種できる、と説明されました。免疫原性は23Bを除く血清型で非劣性、インフルエンザワクチン側もA型H3N2亜型を除いて非劣性とされています。

一部の型で基準に届いていない点も含めて押さえておくと、質問されたときに答えられます。

接種を受けられない人・注意が必要な人

接種を受けられないのは、ワクチンの成分やジフテリアトキソイドでアナフィラキシーを起こしたことがある人です。また、明らかな発熱がある人、重篤な急性疾患にかかっている人は、治ってから接種します。

接種前に必ず確認したいのが、抗凝固療法を受けているかどうかです。血小板減少症や凝固障害のある人も含めて、筋肉内注射では接種部位の出血のおそれがあります。皮下接種という逃げ道があったニューモバックスNPと違い、プレベナー20もキャップバックスも筋注しか選べないので、事前の申告がより重要になりました。

そのほか、免疫不全と診断されている人や近親者に先天性免疫不全症の人がいる場合、心臓・腎臓・肝臓・血液の病気がある場合、過去に予防接種後2日以内に発熱や全身の発疹が出た場合、けいれんを起こしたことがある場合は、接種前に医師へ伝えてもらいます。

副反応と、受診をすすめる症状

プレベナー20では、注射部位の疼痛・圧痛が59.6%、筋肉痛38.2%、疲労30.3%、頭痛21.7%、関節痛11.6%と報告されています。キャップバックスでは注射部位疼痛が36.0%、疲労が10%以上とされています。重大な副反応として、両剤ともショック・アナフィラキシーが記載されています。

この2つの数字を並べて「キャップバックスのほうが痛くない」と説明することはできません。集計のもとになった試験も評価方法も違うからです。直接比較の結果として言えるのは、キャップバックスとプレベナー20を比べた試験で、あらかじめ規定した注射部位疼痛の発現割合がキャップバックス群で低く、それ以外は概ね同程度だった、というところまでです。

接種後に伝えておくことは3つです。当日は激しい運動を避けること。接種部位を清潔に保つこと。そして、局所の異常な反応や体調の変化、高熱、けいれんなどが出たら速やかに医師の診察を受けること。とくに呼吸困難、蕁麻疹、顔や喉のむくみ、血圧低下を疑う症状は、ためらわずすぐに医療機関へつなげてもらいます。

あわせて、高齢者の肺炎は典型的な高熱や咳が出ないことがある点も伝えておくと役に立ちます。息切れ、意識がぼんやりする、食欲が急に落ちるといった変化があれば早めに受診するように、と添えてください。ワクチンは肺炎を100%防ぐものではありません。

患者にどう説明するか

現場でそのまま使える言い回しを挙げます。相手が迷っている場面ごとに、押さえる点が違います。

よくある質問説明の軸
「どっちがいいんですか」どちらが上と決まってはいない、と先に言う。公費で1回受けられるのはプレベナー20、より広い型に備えたいなら自費でキャップバックス、と条件で並べて医師に相談してもらう
「78%効くんですよね」カバー率は原因菌の型が入っている割合であって、その割合の人が発症しなくなるという意味ではない、と言い換える
「これ1回で一生大丈夫?」公費で受けられるのは1回。将来また打つべきかどうかは、まだ結論が出ていない、と分けて話す
「5年後にまた来ればいい?」それはニューモバックスの時代の話で、同じワクチンを打ち直す運用は原則として選択肢から外れた、と伝える
「前に自費で打ったから対象外ですよね」定期接種で打った場合と任意接種で打った場合で扱いが違うことがある。市区町村に確認してもらう

健康被害が起きたときの枠組みも、聞かれたら答えられるようにしておきたいところです。定期接種で受けた場合は予防接種法に基づく救済給付の制度があります。任意接種の場合は枠組みが異なるため、詳しくは市区町村や接種先に確認してもらってください。自費でキャップバックスを選ぶという判断には、この違いも含まれます。

感染制御認定薬剤師として現場で感じるのは、迷う人の多くが「損をしたくない」で止まっているということです。金額と血清型の話だけでなく、いま何歳か、次に打てる機会がいつかを一緒に並べると、話が前に進みやすくなります。

よくある質問

ニューモバックスは効果がないと言われますが、本当ですか

集団としての効果が見えなかった時期があり、そこから広まった見方だと考えられます。個人への有効性は確認されており、ワクチン血清型の肺炎球菌性肺炎に対して33.5%、侵襲性肺炎球菌感染症に対しては65歳以上で39.2%と報告されています。合同委員会は中等度の有効性と表現しています。

バクニュバンス(15価)は選択肢になりますか

定期接種では使えません。65歳以上の侵襲性肺炎球菌感染症のカバー率は35%で、3剤の中では最も低い数字です。一方で23価との連続接種という組み方の入口になり、合同委員会も選択肢の一つとして挙げています。判断は接種する医師と相談してください。

過去の接種歴が分からないときは、どうすればよいですか

定期接種で受けた分については、お住まいの市区町村で接種歴を照会できる場合があります。接種済証を発行している自治体もあります。記録が手元に残っていないことは珍しくないので、まず市区町村の担当課に問い合わせてもらってください。

対象年齢のうちに病気で打てなかった場合、もう受けられませんか

長期にわたる療養が必要な病気のために接種できなかったと認められた場合は、長期療養特例として定期接種を受けられます。接種可能となった日から1年以内という条件があります。該当するかどうかは医学的な判断が必要なので、市区町村に相談してもらってください。

ワクチンを打っていれば、肺炎にはならないのですか

肺炎球菌ワクチンは肺炎球菌による感染症に備えるもので、肺炎そのものを100%防ぐものではありません。肺炎の原因は肺炎球菌だけではなく、ワクチンに含まれない血清型もあります。息切れや食欲低下など普段と違う様子があれば、早めの受診をすすめてください。

まとめ:プレベナーとキャップバックスの違いは、公費・血清型・年齢の3軸で整理する

この記事の要点
  • 2026年4月から定期接種はプレベナー20。キャップバックスもニューモバックスも定期接種では使えない
  • 65歳以上の侵襲性肺炎球菌感染症のカバー率は、キャップバックス78%、プレベナー20が50%(2022〜24年)
  • ただしカバー率は予防率ではない。プレベナー20にあってキャップバックスに無い型が7%残っている
  • 直接比較で示されたのは抗体の反応であって、肺炎の減り方ではない
  • 「5年ごと」も「一生1回」も公的な書き方ではない。公費は1回、再接種の要否は結論が出ていない
  • 小児にも使えるのはプレベナー20だけ。接種経路はどちらも筋注

この記事の結論をひとつに絞るなら、「カバー率の広さだけで決める話ではない」ということになります。血清型のカバーはキャップバックスが広い一方で、プレベナー20にしかない型が今も一定の割合を占めています。しかも、発症予防を直接比べたデータはありません。

実務で確認する順番は、まず年齢と接種歴です。65歳ちょうどで未接種なら、定期接種の通知が届いているかを見る。66歳以上なら、公費の対象外である代わりに任意接種でどちらも選べる。過去に自費で打ったことがある65歳なら、市区町村に扱いを問い合わせる。ここまで整理してから費用の差と血清型の話に進むと、判断がぶれません。

持病がある人、免疫を抑える治療を受けている人、脾臓を摘出した人では、推奨の強さも保険の扱いも変わります。迷う点があれば、接種前にかかりつけの医師や薬剤師に相談してもらってください。

参考文献

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この記事を書いた人

あおい|病院薬剤師
感染制御認定薬剤師/日病薬病院薬学認定薬剤師

病院で働く薬剤師です。似た名前の薬や制度の違いを、添付文書・インタビューフォーム・厚生労働省の通知にあたって整理しています。記事には情報の時点を記載し、参考文献には版と日付を残しています。