今回は糖尿病治療薬でαグルコシダーゼ阻害薬(α-glucosidaseinhibitor以下α-GI)のグルコバイについてお話していきます。

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グルコバイとは?

 

まずは名前の由来です。後述しますが、グルコバイはα-グルコシダーゼ(α-Glucosidase)と呼ばれる酵素群を阻害します。製造販売元の会社名バイエル(Bayer)です。

 

この2つを組み合わせて『glucobay(グルコバイ)』と命名されました。一般名はアカルボースです。

 

作用を簡単に説明すると、「腸管からの糖の吸収を遅らせて、食後高血糖を改善する」となります。それでは詳しく見てきましょう。

グルコバイの作用機序

 

他の糖尿病薬でもお話しましたが、食事を摂ってもそのままの形では吸収されません。単糖類という形になってはじめて吸収されるのです。

 

食物に含まれる糖質は糖がたくさん結合している多糖類という状態で存在します。

 

これが唾液や膵液のアミラーゼという酵素により麦芽糖(マルトース)、ショ糖(スクロース)、乳糖(ラクトース)等の二糖類と呼ばれるものに分解されます。

・麦芽糖(マルトース):グルコース+グルコース
・ショ糖(スクロース):グルコース+フルクトース(果糖)
・乳糖(ラクトース) :グルコース+ガラクトース

 

続いて小腸の粘膜にある酵素で二糖類は更に細かく分解されます。マルターゼという酵素は麦芽糖を切断、スクラーゼはショ糖を切断、ラクターゼは乳糖を切断します。

 

その結果グルコース、フルクトース、ガラクトースなどの単糖類に分解されます。この単糖類になってはじめて腸から吸収されるのです。ちなみに単糖類になった瞬間に腸から吸収されます。

 

もう一つ小腸にはグルコアミラーゼという酵素があります。グルコアミラーゼは多糖類の端からグルコースを一個ずつ切断していく酵素です。

 

そして上のマルターゼ、スクラーゼ、ラクターゼ、グルコアミラーゼ等を”総称”してαグルコシダーゼといいます。

 

グルコアミラーゼとマルターゼにより、最終的にはどちらもグルコースができますが、2つの酵素は全くの別物なので注意して下さいね。

 

さてグルコバイですが、上で説明した酵素のうちαアミラーゼ、マルターゼ、スクラーゼ、グルコアミラーゼを主に阻害します。

 

するとどうでしょうか?多糖類、二糖類の分解が阻害されるため、単糖類になるまでに時間を要してしまいます。

 

つまり糖がゆっくりと吸収されることで、食後の急激な血糖値の上昇を抑えることができるのです。その結果インスリンの分泌が抑えられ、膵臓の負担も軽くなるというわけですね。

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グルコバイの副作用

 

作用機序でお話した通り、インスリンの分泌を介さない作用のため単独では低血糖は起こりにくいです。ただゼロではありませんし、他のインスリン分泌を促進するSU薬などと併用すると起きやすくなります。

 

低血糖の際は必ずブドウ糖を摂って下さい。

 

理由は上の説明をみればわかりますよね。砂糖などの二糖類ではグルコバイにより分解が阻害され吸収が遅れるためです。服用中はブドウ糖を忘れずに携帯しましょう。

 

副作用で多いのは腹部膨満感(お腹の張り)、下痢、放屁などの消化器系の副作用です。これは吸収されなかった糖が大腸に到達し、腸内細菌により発酵されガスを発生するためです。

 

グルコバイはベイスンよりも消化器系副作用が出やすいと言われています。理由はグルコバイがαアミラーゼを阻害するためです。

 

αアミラーゼを阻害すると、多糖類が二糖類に分解されにくくなります。結果大腸に到達する糖が増加するため、消化器系の副作用が出やすくなってしまうのです。

 

消化器系副作用は2週間から1ヶ月くらいで落ち着くことが多いとされていますが、腸閉塞を起こすこともありますので注意が必要です。

 

また肝機能障害も頻度は低いですが報告されています。ひどく体がだるかったり、食欲低下、目や皮膚の色が黄色くなる(黄疸)など見られる場合は直ちに医療機関を受診して下さい。

 

上記の消化器系の副作用は少量から開始する事で軽くすることができる場合があります。その場合は1回50mgから開始し、状態を見ながら増量していきます。

 

また飲み忘れた場合の対応ですが、食事中に気づいた場合は服用、食後に気づいた場合はその回はスキップ(飛ばす)ようにして下さい。食後に服用しても効果が期待できません。

 

そうならないためにも、αグルコシダーゼ阻害薬は箸を持ったらまたは食事の一口目と服用、これをきちんと守って下さいね。

 

それではグルコバイについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。