日本では明治のころから医薬分業が進められ、医療機関と調剤薬局の運営は別にするべきものとされていました。
当然それは建物の構造に関しても適応されるべきもので、現在の調剤薬局は構造的にも経営的にも医療機関とは別であるべきものとされています。
ですが、昨今新たな医療機関と調剤薬局の関係として、敷地内薬局というものが認められました。敷地内薬局とはどういったものか、確認していきましょう。
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敷地内薬局とは?
厚生労働省からの通知により、2016年10月から薬局と医療機関の独立性をめぐる規制が緩和されることになり、これによって今まで禁止されていた同一敷地内での営業が可能になりました。
今までは同一敷地内であれば独立性を保つためにフェンスの設置などが求められていましたが、それがなくなることになったのです。
ただし、今回の改定により医療機関内に設置してある調剤所と同様にはならないように注意されており、同じ建物内での営業や専用通路を使って行き来できるようになっている場合には認可されないとなっています。
認可がおりない例として厚労省が挙げた中には、上記に加え、公道から調剤薬局の存在が認知できなければならないこと、医療機関の休診日に調剤薬局に来局できなくなるような構造ではないことがあります。
そのほかにも、約束処方や患者誘導の事実があれば、一体的な経営と目されてしまいます。
敷地内薬局のメリット
患者にとっては医療機関と薬局の距離が縮まることで、その利便性が向上します。高齢になって歩行が困難になっていたり、体調を崩して移動することが大変だったりする場合には、非常に有益であるといえるでしょう。
薬局として考えても、一度公道に出てからでなければ来局できないという状況は、少なからず患者の来局を妨げていた原因でした。それが解消されることで、収益の面からみてもメリットが生まれることになります。
医療機関にとっても賃貸することで収益を増やすことが可能になり、経営上大きなプラス要素となることでしょう。薬局側としてもこの機会に病院との精神的な距離を短くすることができれば、治療方針などにさらに深く切り込むことも可能になるかもしれません。
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敷地内薬局のデメリット
今回の改正により、医療機関の敷地内に出店することも可能になったわけですが、それは医療機関から土地や建物を賃貸することにつながります。つまり、今までの同等の立場で営業していた医療機関と薬局の関係が、大家と店子の関係になるわけです。
大家と店子の関係になってしまえば、気に食わない店子なら追い出してしまえとなるかもしれません。
実際には借地借家法で借主の権利は守られていますが、処方箋を発行するかしないかは自由なことですし、賃貸料などが契約により薬局側に不利に働く可能性は否定できません。
さらに、医療機関と薬局のつながりが強くなるということは、処方箋の最終監査機関としての調剤薬局の職能に問題が及んでしまう可能性もあります。
政府が促進してきた、地域に根差した薬局と薬剤師を実現するためには、敷地内薬局は不利に働くことでしょう。調剤報酬では地域に根差したかかりつけ薬局が優遇されていることを考えれば、今後は敷地内薬局に不利な調剤報酬改定となっていくかもしれません。
まとめ
患者にとっての利便性は確かに向上し、メリットも多くある敷地内薬局ですが、その反面、政府がこれまで促進していた面分業とは正反対の法律となってしまいました。
門前医療機関の影響がさらに強くなり、今後薬局の独立性をどのように担保していくのかが重要な問題となると想定されます。
医療機関と調剤薬局の結びつきにより処方せんの監査機能が損なわれれば、利便性を取って安全性を捨てた状態になり、医薬分業の意味すら怪しくなってしまうでしょう。
患者の利便性を良くした上で、より安全に薬を使用することができる体制作りが医療機関と調剤薬局の双方に求められているのではないでしょうか。
それでは敷地内薬局については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。