医師に処方権があるように、薬剤師には調剤権が存在しています。薬剤師の根幹にかかわる部分である権利ですが、昨今はその権利の拡大について議論されています。

 

そもそも調剤権とはどのようなものなのか、その権利の拡大とはどういったことなのかこの記事ではお話していきたいと思います。

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薬剤師の調剤権とは?その法的な根拠と現状

 

薬剤師の調剤権は薬剤師法第19条によって規定された権利です。一部の例外を除いて、「薬剤師でなければ処方箋をもとに医薬品の調剤をすることはできない」という権利ですが、権利というからには義務も存在しています。

 

同じく薬剤師法に規定されているものですが、調剤の求めに応じる義務です。正当な理由がなければ、調剤の求めを断ることはできません。

 

ただ医薬分業とは言われていますが、実際には例外として医師は自身の処方した薬は自身で調剤することが許されています。

 

医療的な観点があっての必要な項目ではありますが、薬剤師から見れば調剤権の侵害と捉える場合もあるのではないでしょうか。

 

2016年10月に開かれた日本薬剤師会学術大会にて社会保険組合連合会理事により発言された「医師の処方権と薬剤師の調剤権に格差があり、同等に近づけることが2018年調剤報酬改定の重要課題の一つ」という言葉が発端で議論が白熱している現在ですが、今のところその法的な改定に及ぶかどうかは不明です。

調剤権の拡大とは?

 

なぜ調剤権の拡大について議論されているのかというと、政府の方針としてセルフメディケーションを推進したいという背景があるからです。

 

調剤権が拡大された場合に考えられる状況は、薬剤師の判断により規定回数まで定時処方を繰り返すことのできるリフィル処方箋の実装と、薬局での健康相談というフィルターにより早期発見・早期治療による医療費の軽減、軽症患者の過度の受診抑制です。

参考記事リフィル処方箋の導入によって何が変わる?メリットとデメリットについても解説

 

健康保険を使用する機会の低下により、セルフメディケーションが推進され、結果的に医療費の削減につながることになるでしょう。

 

ただし、リフィル処方箋などは患者の医療機関離れを促進する結果につながると考えられ、受診回数が減るということは医療機関の収入も減収するということになります。

 

また、医師から信頼を得ている薬剤師がいる一方、そうでない薬剤師がいるのもまた事実であり、簡単に実現するものではありません。

 

以前から看護師にも処方権の一部を与える(特定看護師)という議論もされていますが、結局その話も進まないままであるため、医師の持つ処方権に匹敵する調剤権というものの実現は非常に困難であると言えます。

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調剤権拡大に伴うメリット・デメリット

 

調剤権の拡大によって得られるメリットは数多くあります。患者側から考えれば、医療機関に掛かる手間が減り、それに伴って医療費も削減できます。それは政府にとってもうれしい結果となるのです。

 

薬剤師としても、患者との距離が近くなることで今まで以上の信頼を得ることが可能になり、薬剤師の地位向上につながることでしょう。

 

医師としても、軽症患者や安定状態の患者から重症患者や急患に割ける時間を増やすことが可能になり、今まで以上に高水準の医療を実現することができるのではないでしょうか。

 

ただし、調剤権を拡大することで薬剤師の責任は重くなっていきます。今まで医師の責任となっていた多くの医療が薬剤師によって行われるようになれば、その責任から逃れるすべはありません。これは当然のことです。

 

また、現状の調剤薬局は薬剤師不足もあって、かなり多忙な店舗が多くを占めています。その中で、現状の医療水準を落とさず、すべての患者に満足のいく医療を届けることができるのか、疑問が残ります。

まとめ

 

調剤権の拡大が実現できれば様々なメリットが得られますが、その反面薬剤師に責任が重くのしかかります。その責任に耐えられるだけの自信と知識、人間性を兼ね備えていなければ、拡大された調剤権を行使することは難しいでしょう。

 

ただし欧米などの薬剤師先進国では既に実現されていることです。すぐにはないとは思いますが、将来日本で実現される可能性はあります。いざその時になった時に慌てないよう、日々知識を学び、人間性を磨いておく必要あります。

 

それでは調剤権の拡大については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。