今回はニューキノロン系抗菌薬のグレースビットについてお話していきます。グレースビットはヘリコバクター・ピロリの三次除菌で使用されることがあります。

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グレースビットとは?

 

それでは名前の由来からいきましょう。起因菌の迅速診断法である”グラム(Gram)染色”、”エース(Ace)”、そして同じく第一三共株式会社より販売されている”クラビット(CRAVIT)”を組み合わせてグレースビット:GRACEVITと命名されています。一般名はシタフロキサシンです。

 

ちなみにグレースビットは日本以外ではタイで販売されています。

 

さて、グレースビットの作用を簡単に説明すると「細菌のDNAを複製するのに必要な酵素を阻害して細菌を死滅させるとなります。それではもう少し詳しくみていきましょう。

グレースビットの作用機序と特徴

作用機序

グレースビットをはじめとするニューキノロン系抗菌薬はDNAの合成(複製)に必要な酵素、Ⅱ型トポイソメラーゼ(DNAジャイレース及びトポイソメラーゼⅣ)を阻害する作用を持ちます。これにより細菌は死滅します。

 

DNAジャイレースはDNAをらせん状(コイル状)に畳んで細胞内へ収納する酵素です。DNAジャイレースがないと細菌はDNAを収納できなくなり死滅します。DNAジャイレースはヒトにはありませんので細菌に選択的に作用することができます。

 

一方のトポイソメラーゼⅣ。こちらは複製が完了したDNAを細胞分裂後の娘細胞に分け与えるために、親細胞からDNAを切断する作用を持ちます。トポイソメラーゼⅣはヒトにもありますが、細菌のものとは種類が異なるためヒトへの毒性は低いのです。

濃度依存性

グレースビットは濃度依存性の抗菌薬であり最高血中濃度が指標となります。最高血中濃度を高めるために1回量を十分量投与する必要があります。

有効菌種

グレースビットは幅広い抗菌スペクトルを持ち、緑膿菌やマイコプラズマ、クラミジア、レジオネラなどの非定型菌にも有効です。従来のキノロン系と比較して、より強力にDNAジャイレース及びトポイソメラーゼⅣを阻害するため、キノロン耐性の肺炎球菌や大腸菌にも抗菌活性を示します。

 

またヘリコバクター・ピロリ菌にも抗菌活性を示し、保険適用外ではありますが、三次除菌療法としてグレースビットが処方されるケースも現場ではあります。

 

当院でのパターンは

タケキャブ(ボノプラザン)20mg
パセトシン(アモキシシリン)750mg
グレースビット(シタフロキサシン)100mg
上記を1日2回 7日間

ですね。医療機関によっては投与期間を14日間にしているところもあると思います。

 

ちなみに同じキノロン系のクラビット(レボフロキサシン)はダメなの?と思われる方もいらっしゃるかと思います。

 

クラビットは処方頻度が高く、耐性菌が日本人には多いため、三次除菌でクラビットを使用することはありません。除菌率も文献によっては50%以下とも言われています(ランソプラゾール+アモキシシリン+レボフロキサシンの場合)。

 

除菌療法について詳しく知りたい方は以下の記事もどうぞ。

参考記事:ピロリ菌の除菌(3剤併用)療法と検査、消化性潰瘍発症の機序

消失経路

グレースビットの排泄経路は腎排泄になります。よって腎機能障害のある患者様は排泄の遅延により血中濃度が上昇する可能性があるため1回量を減量したり、投与間隔を延長するなどして対応します。

剤形

グレースビットの剤形には錠剤と細粒が用意されています。

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グレースビットの副作用

 

主なものは下痢、吐き気、嘔吐、食欲不振などの消化器系症状とめまい、頭痛、不眠、痙攣などの中枢神経系の副作用です。他のキノロン系薬と比較して下痢の副作用発現率が高いので注意が必要です。

 

他に特徴的なものとしては光線過敏症。日光が当たった皮膚が赤くなったり水ぶくれができたりする事があります。服用中はなるべく皮膚を露出しないようにして下さい。

グレースビットの相互作用

 

内用薬の場合、アルミニウムやマグネシウム、鉄、カルシウムを含有する食品等との同時服用により、キレートと呼ばれる化合物が作られ消化管からの吸収が低下してしまいます。

 

そのため同時服用は避け、グレースビット服用後少なくとも2時間以上服用間隔を空ける必要があります。逆の場合は3時間以上空けてください。

 

また非ステロイド性抗炎症薬(以下NSAIDs)との併用で痙攣が起こりやすくなります。ニューキノロン系は抑制性神経伝達物質であるGABA(γアミノ酪酸)がGABA受容体に結合するのを邪魔する作用を持ちます。

 

そしてNSAIDSはこの作用を高めると言われており、神経の興奮を抑えられなくなることで痙攣が誘発されるのです。

グレースビットの禁忌

 

小児、妊婦(又は妊娠の可能性がある場合)は禁忌です。これは動物実験において軟骨の発達が阻害され、関節障害出る可能性があるためです。

 

また動物実験(ラット)で母乳に移行する事が報告されていますが、ヒトについてはデータがありません。授乳中の服用については医師の指示に従って下さい。

 

それではグレースビットについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。