医師の診察を受け、症状に合わせて処方箋が発行され、薬局で薬局医薬品を調剤してもらうのが、現代日本の一般的なルールです。

 

ですが、医師の診察を受けずに薬局医薬品を購入できる薬局が存在していることをご存知でしょうか?

 

この記事ではそういった薬局が法律的に問題ないのか検証していきます。

スポンサーリンク

調剤薬局で扱う医薬品の分類

 

調剤薬局で取り扱う医薬品は以下のように分類されます。

 

誰でも購入することが可能な一般用医薬品(OTC医薬品)、厚生労働大臣によって指定されている要指導医薬品、調剤薬局が薬局内で製造し、直接販売する薬局製造販売医薬品、処方箋をもとに調剤する薬局医薬品です。

 

薬局医薬品はさらに細かく二つに分類され、処方箋医薬品とそれ以外の医薬品とに区分されます。

処方箋なしでの医薬品販売はすべて可能なのか?

 

処方箋なしで販売している薬局では、すべての医薬品が購入できるのでしょうか?例えば、OTC医薬品や要指導医薬品、薬局製造販売医薬品に関しては、所定の手続きのみで簡単に購入することができます。

 

問題となるのは薬局医薬品です。結論から申しますと、薬局医薬品の販売は、法律上認められている部分は確かに存在しています。ですが、一般の人には通常販売できないものも指定されているのです。

 

その判断をする上で注意しなければいけないのは、処方箋医薬品であるか否かです。処方箋医薬品は、一般の人には一部の例外的な場合を除いて販売することができません。

 

一方、処方箋医薬品以外の薬局医薬品に関しては、やむを得ない場合に販売することが認められています。

薬局医薬品販売の法的根拠

 

それでは、薬局医薬品販売の法的な理由に関して確認していきましょう。薬局医薬品の取扱いにおいては、平成26年6月12日施行の改正薬事法において規定されています。

 

まずは処方箋医薬品についてですが、原則一般の人には販売することはできません。医師の診察を受け、処方箋を介して販売することが必要になります。

 

ですが例えば、大規模地震などで医師との連絡を取ることができず、生命維持のために必要な処方箋医薬品を本人が使用する目的のために販売することなどは例外的に認められています。

 

次に、処方箋医薬品以外の薬局医薬品についてです。こちらも処方箋医薬品と同じく、原則処方箋を介して販売することが求められています。

 

ただし、大規模災害などのやむを得ない理由が存在している場合に販売が可能であり、さらにそれ以外の状況でも、必要な受診勧奨を行い、必要な管理を行っていれば販売することは可能とされています。

 

注意が必要なのは、厚生労働省が薬局医薬品の個人への販売は自粛するように通達していること。あくまで医療機関を受診するというのが基本となります。

薬局医薬品を販売する時の注意点

 

基本的に処方箋を介して販売することが必要な薬局医薬品ですので、処方箋なしで販売するには注意しなければならない点が多々あります。

販売数量の限定

どうしても販売しなければいけない状況にある場合、必要最小限の数量しか販売してはいけません。

販売記録の作成

薬局医薬品を販売した際には、品名、数量、販売の日時等を書面に記録し、2年間保管しなければなりません。販売した相手の連絡先も併せて記載することが望ましいとされていますが、連絡先に関しては保存の義務はないようです。

調剤室での保管・分割販売としての対応

薬局医薬品ですので、当然調剤室・備蓄倉庫での保管が義務付けられており、陳列することは認められません。分割販売としての処理となる為、外箱の写しや添付文書の写しなどの添付を行う必要があります。

広告の禁止

薬局医薬品をおおやけに販売しているかのような広告をすることは認められていません。ここが引っかかりそうな薬局、結構あるのではないでしょうか。

服薬指導の実施

分割販売とはいえ、医療用医薬品はOTC医薬品とは違うものです。服薬指導の実施や、相互作用などの確認、薬歴管理などを行わなければいけません。

スポンサーリンク

処方箋なしで購入した時、副作用などの責任はどうなる?

 

通常、処方箋を介して使用している医薬品では、治療に関する責任は医師が主に請け負っており、もし副作用などの問題が出た場合には「医薬品副作用被害救済制度」という制度を使用して対応することができます。

 

それによって治療にかかる医療費や、障害が出た場合の障害年金、死亡した場合には一時金の支払いなどを受けることが可能となっています。

 

ですが、処方箋なしで薬局医薬品を使用した場合はどうでしょうか?そこに医師は介在しておらず、薬剤師と患者個人の責任となってしまうのです。

 

日本国内で正規に製造された医薬品による副作用であれば、医薬品副作用被害救済制度について申し込み自体は可能です。

 

しかしこの制度はあくまで医薬品の適正な使用を条件に適応されるものであるため、処方箋なしで医薬品を使用した場合には給付を受けられない危険性があるのです。

 

独立行政法人医薬品医療機器総合機構(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency:PMDA)に確認したところ、

「そのようなことが違法ではなく可能であるということが信じられない」

「仮にそういった事例でも申請自体は可能だが、厚生労働省の審査会で認可されなければ給付を受けることはできない。厚生労働省が推奨していない使用方法であれば、認可されない可能性がある」

「ただし、今までに事例が存在していないため、はっきりとは答えられない」

との回答を得ました。

 

「医薬品の適正使用」について最近はかなり厳しくなってきており、何かあっても自己責任で片付けられる可能性があることを納得した上で利用する必要があります。

処方箋なしで薬局医薬品を購入できる薬局が増えている

 

調剤薬局では、基本的に処方箋をもとに医薬品を調剤することが目的となっていますので、一般的な調剤薬局では処方箋なしでの購入は断られてしまいます。ですがインターネットで検索してみると、一部の薬局が処方箋なしでの医薬品販売を行っていることもわかります。

 

調剤報酬が改定ごとに下げられ、直接の利益を得るために行っている薬局も中にはあるでしょう。また処方箋なしでの販売は、薬局の言値での販売になりますので、利益に直結するというのが理由にはあるかもしれません。薬価も来年からは毎年改定になりますしね。

 

ただ、改正薬事法により広告の禁止が記載されましたが、改正以前からネット上に広告を出しており、そのままにしている薬局も意外と多く見られます。

 

国の方針としてこのような薬局を認めないということになれば、いずれ検挙…なんて話にもなるかもしれませんが、国は何が何でも医療費を抑えたいので、しばらくは黙認する可能性もありますね。

まとめ

 

処方箋なしで薬局医薬品を販売すること(零売)は、原則認められてはいません。処方箋医薬品に関しては、大災害などのやむを得ない事情があれば可能であり、処方箋医薬品以外の薬局医薬品では、大災害などに関わらず、場合によっては販売することも可能です。

 

ただし違法ではありませんが、当然推奨される行為ではなく、法的にはグレーゾーンと思っておいた方がいいでしょう。あくまでやむを得ない事情がある際に可能であることが、日常的に行われるわけですからね。

 

先程お話したように、利用を考えている方は医薬品副作用被害救済制度が適用されない可能性があることを十分理解しておきましょう。

 

さて、ここまで散々否定的な意見(というか一般論)を述べてきましたが、個人的にはいいと思いますよ。セルフメディケーションの推進、ひいては医療費の抑制にも繋がりますしね。

 

ただ国が原則禁止している状態で大手を振ってやるのはどうなのって話。

 

それでは今回の記事は以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。