今回は漢方薬の清上防風湯(セイジョウボウフウトウ)について解説します。

スポンサーリンク

清上防風湯の名前の由来

 

配合される12種類の生薬(次項参照)のうち、主薬が防風であること。また顔面、頭部の炎症を取り除くことを清上と言い、防風と清上を組み合わせて清上防風湯と命名されています。

清上防風湯の作用機序と特徴

 

清上防風湯はニキビに適応を持つ漢方薬で、皮膚炎全般に広く使用されています。

 

含まれている生薬は黄芩(オウゴン)、桔梗(キキョウ)、山梔子(サンシシ)、川芎(センキュウ)、浜防風(ハマボウフウ)、白芷(ビャクシ)、連翹(レンギョウ)、黄連(オウレン)、甘草(カンゾウ)、枳実(キジツ)、荊芥(ケイガイ)、薄荷(ハッカ)です。

 

古代中国における清上防風湯では防風を用いていましたが、伝来された当初の日本では防風の入手が困難であったため、代わりに浜防風が配合されています。

 

防風を用いたものが明らかに薬効としては優れていると考えられますが、江戸時代からの慣例として、そのまま浜防風が用いられているのです。

 

東洋医学では漢方薬の適応を判断するため、個別の患者の状態を判断する「証」という概念を用います。

関連記事

漢方薬の処方の基本~証、陰陽、虚実、気血水とは?

 

清上防風湯に適応のある証は、実証・熱証・水滞であり、体力は充実していて、むくみやすくてほてり・赤ら顔となっているタイプの人に向いている漢方薬です。

 

添付文書には以下のように記載されています。

効能又は効果
にきび

用法及び用量
通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。

ツムラ清上防風湯エキス顆粒(医療用)の添付文書より引用

 

漢方薬の薬理的な作用機序は解明されていないものが多く、清上防風湯も例外ではありません。そこで、配合されている生薬から考察していく必要があります。

 

多くの生薬が配合されていますが、中心となっているものは発散作用のある防風です。荊芥・連翹・薄荷なども発散作用を持つ生薬であり、皮膚表面から熱や毒素を発散させて効果を発揮しています。

 

抗炎症作用・抗菌作用をもつ黄連・黄芩が腫れや炎症による発赤を解消。桔梗などによって排膿効果も期待できます。

 

胃腸炎に用いられる漢方薬である半夏瀉心湯も、ニキビに効果がある漢方薬として知られています。胃腸環境が悪い時期が続いてしまうと、口周囲などにニキビのような炎症が起きてしまいます。

 

半夏瀉心湯は胃腸の炎症を改善して腸内環境を整える作用を持っていますが、併せて抗炎症作用も持っているため、胃腸と皮膚への抗炎症作用によって、ニキビを改善する効果が期待できるのです。

 

ただし、胃腸に原因がないタイプのニキビでは効果が期待できません。患者の状態から判断し、どの漢方薬が最適であるのかを判断することが大切です。

スポンサーリンク

清上防風湯の副作用

 

清上防風湯では副作用の発現頻度が明確になる調査を行っていないため、その詳しい発生頻度は不明です。重大な副作用としては甘草に由来するものが報告されており、使用する際にはその兆候となる症状に注意が必要です。

 

低カリウム血症や血圧の上昇、浮腫を引き起こしてしまう偽アルドステロン症、前述の低カリウム血症の結果として筋肉の動きに悪影響を与えてしまうミオパチーの発生が報告されています。それらの可能性がある場合には、服用の中止やカリウム剤の投与などの適切な処置が必要になります。

ミオパチー:ここでは難病である先天性ミオパチーではなく、薬剤性ミオパチーを指しています。薬剤性ミオパチーは何らかの医薬品の影響で筋肉が痩せていき、力が入りにくいという自覚症状を伴います。服用を中止することで改善することが可能です。

 

その他の副作用として、食欲不振や胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢などの消化器症状、発疹や掻痒感などの過敏症状が報告されています。

 

さらに添付文書には記載されていませんが、山梔子を含んでいる漢方薬を長期間服薬することによって、腸管膜静脈硬化症を発症するリスクが存在します。

 

腸管膜内を流れる静脈の石灰化によって大腸に炎症を起こし、初期には下痢・腹痛などを繰り返すことが主な病態ですので、これらの症状があった場合にも速やかに服薬を中止し、かかりつけの医師、薬剤師に伝えるようにして下さい。

清上防風湯の飲み方と注意事項

 

清上防風湯は1日2~3回に分けて空腹時に服用するのが効果的です。もし服用を忘れて食事をしてしまった場合には、効果は減弱してしまう可能性はありますが、気づいた時点で服用しても構いません。

 

清上防風湯は生薬をお湯に煮出して服用するタイプの薬でしたが、使い勝手を考慮した結果として煮出した薬液を加工し、散剤としたものです。ですので、服用する時には元の形に戻した方が効果的だと言われています。

 

あまりに熱いお湯では、薬効成分が揮発してしまうため、約60℃程度のぬるま湯で溶かして服用するのがよいでしょう。

 

有効成分の重複には注意を要するものがあり、甘草を含む漢方薬の併用には注意しなければいけません。

 

前述している甘草による副作用が発現してしまう可能性があるため、甘草を含有している漢方薬はもちろん、甘草の有効成分として含有されているグリチルリチン酸を使用している医薬品も同様に注意する必要があり、併用注意となっています。

 

妊娠中の使用は、添付文書では「有益性が危険性を上回る場合」となっています。含まれている生薬は胎児や母体に対して不利益が出るようなものではありませんが、使用の可否は自己判断せず、必ず医師の指示を仰ぐようにして下さいね。

 

それでは清上防風湯については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。