今回は抗精神病薬でフェノチアジン系のピーゼットシー・トリラホンについてお話していきます。

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ピーゼットシー・トリラホンとは?

 

まずは名前の由来から。いずれも一般名はPerphenazine:ペルフェナジンになります。

 

ピーゼットシー:PZCは一般名のPerphenazine:ペルフェナジンに由来しますが、トリラホンは不明です。

 

ピーゼットシー・トリラホンの作用を簡単に説明すると「ドパミンの働きを調整することで、統合失調症の症状を改善する」となります。

 

それではまず統合失調症についてお話していきましょう。

統合失調症とは?

 

統合失調症とは、妄想や幻覚などの症状が起きてしまう精神疾患です。脳内でうまく情報の伝達・統合ができなくなってしまうために様々な症状が引き起こされてしまいます。

 

情報の統合ができなくなる、つまり統合を失調する病気であるため、統合失調症と言われています。

統合失調症の原因と起こるメカニズム

 

統合失調症の原因と言われているものはいくつか存在していますが、そのどれか一つが原因となることは少なく、多くの場合、様々な原因が複雑に絡み合って発症します。

 

統合失調症の原因となるものは、遺伝や胎児期の障害、脳の萎縮などがありますが、はっきりと断定できるものではありません。さらに、発症しやすくなる性格上の問題や環境からのストレスなど、その原因は千差万別です。

 

実際になぜ発症するのかも、まだはっきりとはわかっていません。ですが、脳内の情報伝達に何らかのトラブルが生じて起きているということは少しずつ判明してきました。

 

脳内の情報伝達物質であるドパミンやセロトニンの過剰分泌、もしくは逆に分泌不足によるものであるとされています。

統合失調症の症状

 

統合失調症の症状は非常に多彩で、そのすべての症状を理解するのは困難です。その中でも代表的な症状は陽性症状と陰性症状とに区別され、それらは脳内伝達物質の分泌量が関与して発生しています。

 

陽性症状とは実際にはないものが存在していると感じる症状、陰性症状とは感情が鈍くなり、意欲が起きなくなってしまうという症状です。

陽性症状

陽性症状の代表が幻覚・妄想です。実際には存在していない感覚を感じてしまうのが幻覚であり、幻覚の中でも代表的なものに幻聴があります。自分を否定する言葉や、監視しているような言葉が頭の中に聞こえてきてしまうというのが一般的な症状です。

 

妄想とは、非現実的なものを実際に起きていると信じ込むことであり、周囲の人が悪口を言っているなどの被害妄想や自分がアイドルであると思い込むなどの誇大妄想があります。陽性症状は主に中脳辺縁系におけるドパミンの過剰が原因と考えられています。

陰性症状

陰性症状は陽性症状から遅れて起きることが多い症状です。感情が鈍くなり行動に対する意欲が低下してしまう症状ですが、陽性症状に比べるとその症状がわかり辛いことにより、病気ではなく社会性がないなどの誤解を生んでしまう側面を持っています。陰性症状は主に中脳皮質系におけるドパミンの低下が原因と考えられています。

 

統合失調症である場合、自分が病気にかかっているという認識ができなくなってしまうことが往々にしてあります。これも統合失調症に特徴的な症状と言えるでしょう。

統合失調症の分類とそれぞれの特徴

 

統合失調症は代表的な分類が3つ存在しています。「破瓜型」「妄想型」「緊張型」の3つが代表的な病型で、そのほかにも「分類不能型」「統合失調症後抑うつ」「残留型」「単純型」が存在していますが、今回は一般的な3つを紹介します。

破瓜(はか)型

日本で最も多い病型で、アメリカでは「解体型」とも呼ばれています。十代前半の若い世代を中心に発症し、陰性症状が主症状です。感情が鈍くなっている時と過度に敏感になっている時が混在しており、意思疎通が困難な病型です。

妄想型

幻覚・妄想の陽性症状が主症状の病型で、世界では最も患者数が多い病型です。陰性症状はほぼなく、治療の面では進めやすいと言われています。

緊張型

若い世代で発症しやすい病型です。幻覚や妄想も症状としておきますが、それよりも特徴的なのが、急激な叫び声や暴力などの興奮状態と呼びかけに反応を示さず体を硬くして動かなくなる昏迷状態を呈することです。緊張型は薬の効果が出やすい病型なので、治療は比較的進めやすいと言われています。

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ピーゼットシー・トリラホンの作用機序と特徴

 

先程陽性症状は中脳辺縁系におけるドパミンの過剰が、陰性症状は中脳皮質系におけるドパミンの低下が原因とお話しました。つまりこの状態をなんとかできれば、症状の改善が期待できますよね。

 

ピーゼットシー・トリラホンはドパミンD2受容体拮抗作用を持ちます。ピーゼットシー・トリラホンがドパミンD2受容体に結合することで、ドパミンが受容体に結合できなくなります。これにより過剰なドパミンの働きが抑えられるため、陽性症状を改善することができるのです。

 

またピーゼットシー・トリラホンには賦活効果(意欲を高める効果)があるため、陰性症状にも効果が期待できます。そのためうつ病にも用いられることがあります。

 

更にピーゼットシー・トリラホンは化学受容器引金帯(chemoreceptortrigger zone:CTZ)におけるD2受容体を遮断するため制吐作用も持ち合わせています。術前・術後の悪心・嘔吐、メニエル症候群の眩暈、耳鳴にも適応があります。

※延髄第四脳室底のCTZにはドパミンD2受容体やセロトニン5-HT3受容体などが存在し、これらの受容体が血液中の様々な刺激物により刺激を受けると、延髄の嘔吐中枢を刺激します。

 

剤形ですが、ピーゼットシーには糖衣錠、散剤、筋注が、トリラホンには普通錠と散剤があります。

ピーゼットシー・トリラホンの副作用

 

ドパミンD2受容体遮断作用により、錐体外路症状(EPS:extra pyramidal symptom)や高プロラクチン血症が出てしまう可能性がありますが、ピーゼットシー・トリラホンは定型抗精神病薬の中では比較的少ないです。

※ドパミンはプロラクチンの分泌を抑制する作用を持ちます。

症状としては以下のようなものがあります。

錐体外路症状

パーキンソン症候群:手足のふるえ、筋肉のこわばり、動きが遅くなるなど
ジストニア:眼球上転(いわゆる白目)、舌の突出など
アカシジア:じっとしていられない、足がムズムズする、そわそわするなど
ジスキネジア:口をもぐもぐさせる、舌を左右に動かす、勝手に手足が動くなど

高プロラクチン血症の症状

乳汁分泌、無月経、射精障害など

 

他に麻痺性イレウスの報告もあります。食欲不振や悪心・嘔吐、便秘、腹痛、腹部膨満感などがみられた場合は麻痺性イレウスの可能性があります。ピーゼットシー・トリラホンは先程お話した通り、制吐作用があるため、症状が不顕化する可能性もあるので注意が必要です。

 

α1受容体遮断作用があるため血圧が低下する可能性があります。投与初期、増量時は特に注意するようにして下さい。

 

稀ではありますが、悪性症候群にも注意が必要です。37.5℃以上の高熱が出る、発汗、手足の震え、身体のこわばり、頻脈、血圧上昇、意識障害、嚥下困難(飲み込みが悪くなる)などの症状が現れた場合は直ちに病院を受診するようにしましょう。

 

また、眠気や集中力の低下などがみられる場合がありますので、服用中は自動車の運転等危険を伴う機械の操作は避ける必要があります。

統合失調症は薬物治療以外も大切

 

統合失調症の治療は、基本的に薬物療法が中心になります。ですが、薬物療法のみに頼るのではなく、本人や家族の心理的なケアも併用しなければ、再発率が高くなってしまうことが経験的に判明しています。

 

薬物療法に合わせて精神療法やリハビリテーションを加えることにより、良好な経過となる可能性が高いことが知られています。治療をする上で大切なことは、決して治療を焦らないことです。正しい知識と正しい治療、周囲のケアも含めて総合的に治療していくことが望まれます。

 

統合失調症は精神に変調を起こしてしまう病気であり、自分では気づきにくい病気です。一人で悩まず、違和感を感じたなら周囲と相談してみましょう。

 

それではピーゼットシー・トリラホンについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。