今回は脂質異常症の治療薬でフィブラート系の「パルモディア」についてお話します。薬価で行政と揉めているという話は聞いていましたが、8月収載は見送られたようですね。

パルモディアとは?

 

パルモディアPARMODIAと表記されますが、これは選択的PPARαモジュレーター(Selective Peroxisome Proliferator-activated receptor-α modulator:SPPARMα)として作用を発現することから、下線部を組み合わせて命名されています。一般名はペマフィブラートです。

 

パルモディアの作用を簡単に説明すると「リポ蛋白リパーゼを増やすことでトリグリセリドの分解と尿酸の排泄を促進する」 となります。

 

それではまず脂質異常症について説明します。

脂質異常症とは?

 

脂質異常症は以前は高脂血症と呼ばれていた病気です。詳しくはこの後説明しますが、悪玉であるLDLコレステロール、中性脂肪の多くを占めるトリグリセリドが高いと、一方善玉のHDLコレステロールが低いと動脈硬化を生じやすくなります。

 

HDLは低いと問題なのにそれを高脂血症と呼ぶのはおかしいですよね。そこで脂質が異常値を示している病気という事で脂質異常症と改められたのです。

 

脂質異常症は脅すわけではありませんが、動脈硬化の原因となるため非常に危険です。動脈硬化が進行すると狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こす可能性が高くなります。

 

脂質異常症は採血しないと値がわからない上自覚症状がほとんどなく、気付いた時にはかなり進行しているといった事が少なくないため、サイレントキラーと呼ばれることもあります。

 

ただコレステロール自体は細胞膜の構成成分であったり、ホルモンの材料であるなど私達の体になくてはならないものなのです。

 

私達の体内のコレステロールの内訳は通常食事から2~3割、肝臓での合成が7~8割となっています。仮にコレステロールを食事から多く摂り過ぎた時は肝臓での合成が抑制され、一定の値になるよう調節されています。

 

しかし何事もほどほどが大切。不規則な食生活やアルコールの過剰摂取、運動不足、喫煙、ストレスなどにより脂質異常症が引き起こされます。

 

それでは脂質の値がどれくらいだと異常なのか。下の診断基準をご覧下さい。

脂質異常症の診断基準(空腹時)

LDL(悪玉コレステロール) 140mg/dL以上 高LDLコレステロール血症
120~139mg/dL 境界域高LDLコレステロール血症
HDL(善玉コレステロール) 40mg/dL未満 低HDLコレステロール血症
TG(中性脂肪) 150mg/dL以上 高TG血症

※日本動脈硬化学会編 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版より

 

LDLについては140mg/dL以上で高LDLコレステロール血症、120~139mg/dLでは境界域、要は予備軍という事で必要に応じて治療を行います。

 

HDLについては40mg/dL未満で低HDLコレステロール血症、中性脂肪の多くを占めるトリグリセリド(以下TG)については150mg/dL以上で高TG血症となります。

 

これらは空腹時に採血を行うことで判定します。

リポ蛋白とは?

 

続いてリポ蛋白についてお話します。コレステロールは脂質、つまり油ですから水と馴染みません。このままでは血液中を移動する事ができないのです。

 

そこで登場するのがアポ蛋白と呼ばれるタンパク質です。アポ蛋白はよく船に例えられ、アポ蛋白に乗客が乗った状態をリポ蛋白といいます。

 

リポ蛋白にはカイロミクロン、VLDL、LDL、HDLなどがあり、それぞれ乗客が異なります。

■リポ蛋白の種類

カイロミクロン(CM) 乗客にTGが多い
超低比重リポ蛋白(VLDL) 乗客にTGが多い
低比重リポ蛋白(LDL) 乗客にコレステロールが多い
高比重リポ蛋白(HDL) 乗客にコレステロールが多い

かなりザックリですがこんな感じで認識して下さい。

 

ここではまずLDLとHDLの役割についてお話します。LDLとHDLはどちらもコレステロールを運びますが、運び方が異なります。

 

LDLは体の各組織にコレステロールを運ぶ。HDLは組織で余ったコレステロールを回収して肝臓に運ぶ。つまり我々にとってはLDLが悪、HDLが善となります。

 

LDLに乗っているコレステロールを悪玉コレステロール、HDLに乗っているコレステロールを善玉コレステロールと呼ぶのはここからきています。

 

続いてカイロミクロンについて。カイロミクロンの主な乗客はトリグリセリドでしたね。これは食事から摂ったものが多くを占めます。

 

カイロミクロンはリポ蛋白リパーゼ(LPL)という酵素の作用を受けると、トリグリセリドの一部が脂肪酸とグリセリンに分解されます。

 

このカイロミクロンからトリグリセリドが少なくなった状態をカイロミクロンレムナントといいます。カイロミクロンレムナントは肝臓に取り込まれ、VLDLとなり再び血液中に分泌されます。

 

ただ過剰になると肝臓が受け付けず、血液中に残ります。カイロミクロンレムナントは中性脂肪が少なくなった事で小さくなっており、血管壁に侵入しやすいため動脈硬化の原因となる危険性があります。

 

そしてVLDLについて。VLDLも主な乗客はトリグリセリドであり、カイロミクロンと同様にLPLの作用を受けると、トリグリセリドの一部が脂肪酸とグリセリンに分解されます。この状態をVLDLレムナントといいます。

 

VLDLレムナントも肝臓に取り込まれます。そして肝性トリグリセリドリパーゼ(HTGL)という酵素によりLDLになります。

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パルモディアの作用機序と特徴、リピディルとの違い

 

カイロミクロンとVLDLはLPLの作用を受けると、トリグリセリドの一部が遊離脂肪酸とグリセリンに分解され、遊離脂肪酸は体内の脂肪細胞などに取り込まれます。つまり血中のトリグリセリドの量は減るわけです。

 

そこで登場するのがパルモディア。パルモディアは糖質や脂質の代謝に関与している核内受容体の1つPPAR(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体)のうちPPARαに作用します。

 

PPARαに作用することでLPLの合成が促されることで、カイロミクロンとVLDLの代謝が促進されトリグリセリドを低下させることができます。またPPARαはHDLの構成成分であるApoA-1、ApoA-2というタンパク質も増加させるため、HDLが増加します。

 

続いてリピディルとの違いについてお話していきます。

 

パルモディアはリピディルと比較してPPARαに選択的に結合することができ、さらに結合したPPARαの構造を変化させることで副作用リスクを低減させた、効果・安全性ともに改善された製剤となっています。

 

パルモディアはリピディルよりもトリグリセリドの低下作用・HDLの増加作用が高いとされており、PPARαの負の効果であるクレアチニン増加や肝機能異常の発生が低減されているのが特徴です。

※ただ効果についてはお互いフルドーズ(パルモディア0.4mg、リピディル160mg)の場合、正直あまり差がない感じではあります。

 

また、クレストールなどのHMG-CoA還元酵素阻害薬との併用も安全性が高められ、併用による横紋筋融解症の発生も今のところ報告はされていません。

 

LDLコレステロールが高いタイプの脂質異常症の場合にはスタチン系薬剤を第1選択薬として用いますが、動脈硬化を改善するためには、トリグリセリドの低下やHDLの増加が必要とされています。

 

スタチン系薬剤のみではトリグリセリド・HDLに対する効果が弱いため、状況によってはフィブラート系薬剤を併用することとなりますが、現在発売されているフィブラート系薬剤では副作用のリスクが高く、安易にできる治療ではありませんでした。

 

しかし、パルモディアでは副作用のリスクが低減されたことから、今まで副作用のリスクのために控えていた併用療法も考慮することができるのです。

 

あとは代謝経路。リピディルの腎排泄型に対し、パルモディアは胆汁排泄型になります。

 

さて、リピディルに比べて副作用リスクが低減されたパルモディアですが、リピディルの方が優れている点がいくつか存在します。

 

まずは服用回数。リピディルの1日1回投与に対して、パルモディアは1日2回投与になります。またリピディルにある尿酸排泄促進作用が認められていません(ありそうな感じはしますが)。

 

そして代謝について。パルモディアでは代謝酵素(後述)が関与するために、リピディルにはない併用禁忌の薬剤も存在します。

 

対してリピディルは代謝酵素を介さないため、注意するべき併用薬が少ないというメリットがあります。

パルモディアの副作用

 

主な副作用として胆石症、糖尿病(悪化を含む)、CK上昇が報告されています。重大な副作用として横紋筋融解症の記載はありますが、パルモディアでは使用経験は限られるものの、横紋筋融解症の報告は今のところありません。

 

ただし他のフィブラート系では報告があるため、一応注意しておきましょう。

 

横紋筋融解症は骨格筋の細胞が壊死することで、筋肉の成分であるミオグロビンやクレアチンキナーゼが血液中や尿中に流出する病気です。

 

これらの成分により腎臓の尿細管が傷害され、急性腎不全を起こす可能性があります。また腎機能が低下していると薬の排泄が低下し、横紋筋融解症が発生する可能性が高まります。

 

またスタチン系との併用により、急激な腎機能悪化を伴う横紋筋融解症が現れやすくなるため、腎機能が低下している方は原則禁忌となっています(こちらについても今のところ横紋筋融解症の発生報告はありません)。

 

横紋筋融解症の初期症状としては

筋肉の痛み、手足のしびれ、こわばり、だるい、力が入らない、尿の色が赤くなる

などがあります。これは覚えておきましょう。

パルモディアの注意事項

 

パルモディアでは血清クレアチニン2.5mg/dL以上の検査値を示す腎機能障害がある患者には、横紋筋融解症の発生の可能性があるために禁忌とされています。重篤な肝障害や胆石症のある患者でも悪化の恐れがあるため、同様に禁忌となっています。

 

実際に腎機能低下者において横紋筋融解症が発生した例は今のところありませんが、同系統薬剤にて報告されているために記載されました。

 

パルモディアはCYP3A、CYP2C9、CYP2C8によって代謝され、OATP1B1、OATP1B3の基質となるため、これらを阻害する薬剤と併用するとパルモディアの血中濃度が上昇する可能性があります。

 

ネオーラル、サンディミュン、リファンピシンは禁忌、クラリスやフルコナゾールなどは併用注意となっています。また、CYP3Aを誘導する(増やす)作用を持つフェニトインやカルバマゼピンなどと併用すると血中濃度が低下する可能性があるため同様に注意が必要です。

 

他にも注意すべき薬剤があるため、お薬手帳を忘れずに提出するようにして下さいね。

 

妊婦への安全性は確立されていません。また、ラットにおいて乳汁中への移行も報告されています。以上から妊婦、授乳婦の方は禁忌となっています。

 

それではパルモディアについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。