今回は高血圧治療薬カルシウム拮抗薬の『アダラート』についてお話していきます。

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アダラートとは?

 

では名前の由来からいきましょう。英語で”Ader”は血管、脈管を、”adult”は成人の、などの医学関連用語をコンピュータ合成してできたのがAdalat:アダラートになります。一般名はニフェジピンです。

 

アダラートにはカプセル、L錠とCR錠があります。カプセル剤は作用時間が短く1日3回の服用が必要でした。そこで登場したのがL錠です。L錠は”Longacting”のLongに由来します。急激な血中濃度上昇を抑え、また長時間(12時間)血中濃度を維持できることで有効性と安全性を兼ね備えた薬です。

 

続いて登場したのがCR錠です。CRは”Controlled Release”に由来します。CR錠は内層と外層の二層構造になっており、外層はゆっくり溶けるように設計されています。これにより24時間血中濃度を維持することでき、副作用の軽減とアドヒアランスの向上が期待できるのです。

 

ちなみにアドヒアランスとは患者様自身が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けることを意味します。

 

さてアダラートの作用を簡単にお話すると『血管の平滑筋細胞の中にカルシウムイオンが入るのを邪魔して血管を拡げることで、血圧を下げる』となります。それでは作用機序の前に、まず高血圧についてお話していきましょう。

高血圧とは?

 

まず血圧についてお話します。血圧とは血(液)が血管の内側の壁を押す圧の事です。

 

一時的に血管に強い圧がかかる位なら問題にはなりません。しかし過度の圧力がかかる状態が長い間放置されると血管壁が圧力に抵抗して厚くなっていきます。つまり血管内が狭くなります。

 

すると更に圧がかかりやすくなり、血管が痛みます。そこにコレステロールなどが加わると更に血管壁が厚くなり、ますます血管内が狭くなります。その結果血管が疲弊して弾力性がなくなることで硬くなり、またもろくなっていきます。これが動脈硬化です。

 

高血圧は自覚症状に乏しいため、気付いた時にはかなり動脈硬化が進行していることもあります。これがサイレントキラーと言われる所以です。

 

動脈硬化が進行すると血液の流れが悪くなることで血の塊、いわゆる血栓ができやすくなります。これが心臓の血管で起こると心筋梗塞、脳の血管で起こると脳梗塞を引き起こします。

 

またこの動脈硬化は腎臓にも悪影響を及ぼします。動脈硬化により腎臓の血管が狭くなると、体に不要な老廃物をろ過する機能が低下してしまいます。また狭くなった腎臓の血管の血液の流れが悪くなると狭くなった先の部分の血圧が低下します。

 

すると腎臓は『血圧が低い!早く上げなければ!』と勘違いしてしまい、ニンと呼ばれる酵素を多く出すようになります。

 

作用機序の部分でお話しますが、レニンは血圧を上げる原因となる物質を作り出しますので更に高血圧が進行する。本当に悪循環を作り出してしまうのです。

 

症状がないからと高血圧を侮ってはいけません!今までお話したような合併症を予防するためにも、血圧は適正に管理する必要があります。

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アダラートの作用機序と特徴

 

血管は平滑筋と呼ばれる筋肉からなり、その筋肉が収縮すると血圧が上がり、伸びると血管が拡がることで血圧が下がります。

 

この血管平滑筋の収縮、拡張に関与しているのがカルシウムイオンです。平滑筋細胞にはカルシウムイオンの出入口であるカルシウムイオンチャネルという部分があります。

 

細胞内にカルシウムイオンが入ると血管が収縮し血圧が上がる。だったらカルシウムイオンが細胞内に入らないようにしてあげればいいですよね?

 

そこでアダラートの登場です。

 

アダラートはカルシウムイオンチャネルに結合し、カルシウムイオンが細胞内に入るのを邪魔します。これにより血管の収縮が抑えられ血圧が下がるのです。心臓の血管も拡張するため狭心症に対しても処方されます。

 

アダラートは冒頭お話した通りL錠が12時間、CR錠が24時間作用が持続します。そのため基本的にL錠は1日2回、CR錠は1日1回の服用で済みます。ただ厳格に血圧を管理したい場合はCR錠でも1日2回で処方されることがあります。

 

アダラートCRは反射性頻脈が少ないのが特徴の1つです。即効性はないもののゆっくりと薬の作用が現れまた長時間持続するため、血圧の変動が少ないのです。これがアダラートCRに反射性頻脈が少ない理由です。

 

反射性頻脈とは例えば降圧薬を服用して急に血圧が下がると血圧を上げようとして、交感神経末端よりノルアドレナリンが放出され心拍数が上昇することをいいます。

 

またアダラートをはじめとする多くのカルシウム拮抗薬は肝臓の代謝酵素CYP3A4で代謝されるのですが、グレープフルーツやスウィーティー、ザボンなどの一部の柑橘系にはフラノクマリンという成分が含まれています。

 

このフラノクマリンは肝臓の代謝酵素CYP3A4の働きを邪魔する作用を持ちます。つまり服用中にグレープフルーツ等を摂取すると血中濃度が上昇し、過度の血圧低下を引き起こす可能性があります。

 

そのためアダラート服用中は可能ならばグレープフルーツやスウィーティー等(ジュース含む)は摂取しないようにしましょう。仮にこれらを摂取した場合、酵素の働きが復活するには3~4日程度かかることも覚えておいて下さいね。

 

ちなみにレモンやバレンシアオレンジ、温州みかん、かぼすにはフラノクマリンは含まれていないとされています。どうしても柑橘系を摂りたい方はこれらで我慢して下さいね(笑)。

アダラートの副作用

 

めまい、ふらつき、頭痛、動悸、ほてり、顔面紅潮、などの副作用があり、これらは血管の拡張により引き起こされます。他に便秘、浮腫(むくみ)、歯肉肥厚などが現れる場合もあります。

 

歯肉肥厚についてお話します。アダラートによりカルシウムイオンの細胞内流入が邪魔されると、歯肉の線維芽細胞でコラーゲンの分解が邪魔されてしまい、歯肉が増殖して腫れてしまいます。これを歯肉肥厚といいます。歯肉肥厚は口の中を清潔に保つことで多少は予防できます。

アダラートの注意事項

 

アダラートは妊婦(妊娠20週未満)又は妊娠している可能性のある方には投与する事ができません。禁忌です。動物実験において、催奇形性や胎児毒性が報告されています。

 

妊娠20週以降の方についても禁忌ではありませんが、基本は服用を控えます。過度の血圧低下なども報告されているためです。

 

またアダラートは母乳に移行する事が知られており、服用中は授乳も控えて頂く必要があります。

 

そしてL錠、CR錠の粉砕について。両剤形ともに作用を持続させるため製剤的工夫を施されています。錠剤を粉砕するとその構造が破壊され血中濃度が急激に上昇する可能性があります。そのため粉砕はできません。

 

どうしても錠剤の服用が困難な場合はセパミットR細粒(12時間持続)がありますのでそちらで対応します。

 

それではアダラートについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。