今回は潰瘍性大腸炎治療薬のリアルダについてお話していきます。

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リアルダの名前の由来

 

リアルダはアメリカでは既に販売されており、その名称はLIALDA:リアルダとなっています。国内の名称はアメリカの販売名をそのまま使用しています。一般名はメサラジンになります。

 

リアルダの作用機序を簡単に説明すると「大腸粘膜に直接作用することで炎症を抑え、下痢や血便、腹痛の症状を改善する」となります。

 

それではまず潰瘍性大腸炎について簡単に説明していきます。

潰瘍性大腸炎とは?

 

潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に炎症を起こしている炎症性疾患です。その症状の特徴は、下痢や血便、腹痛です。重症化した場合には発熱や体重減少、貧血などの全身症状を起こす場合もあります。炎症部分が途切れることなく広がっていく性質があり、肛門側から口の方向に向かって広がります。

 

実は潰瘍性大腸炎になる原因は明らかになっていません。遺伝が原因という説や腸内細菌が関与している説、自己免疫疾患や食事の影響などの説がありますが、どれも決め手に欠けており、結局の原因は不明のまま現在に至っています。

 

潰瘍性大腸炎の患者さんの多くは治療により、症状を改善することが可能です。ですが、再発する危険性が高く、症状がない状態を維持するためには継続的な治療が必要とされています。

 

日本での発症率は人口10万人あたり100人程度で、アメリカの半分以下というデータが存在しています。発症年齢のピークは男性で20歳から24歳、女性で25歳から29歳ですが、それ以外の期間にも発症の恐れはあり、若年者でも高齢者でも発症する可能性はあります。男女で発症の偏りはないのも特徴としてあげられるでしょう。

 

潰瘍性大腸炎の治療は、腸の炎症を抑える対症療法的なものが中心になります。主なものはペンタサやアサコールに代表される5-ASA(5-アミノサリチル酸)薬、副腎皮質ステロイド薬、免疫抑制・調節薬、抗TNFα受容体拮抗薬などになります。

リアルダの作用機序と特徴

 

リアルダは、ペンタサやアサコールと同じ成分である”メサラジン”を主成分とする5-ASA製剤です。大腸の細胞内で炎症性物質が作り出されるのを阻害してその作用を発揮します。

 

細胞を傷害する活性酸素を除去する効果と、免疫に関与して炎症物質に関与するロイコトリエンの産生を抑制する効果を併せ持っています。

 

特殊なコーティングが施された錠剤で、小腸の下部のpHに反応して溶解を始め、大腸で薬剤の放出が開始されます。コーティングが溶解してからも薬剤は親水性基剤と親油性基剤に包まれており、その基剤により薬剤の放出が緩やかに調節されます。

 

これにより、大腸入口から直腸まで大腸全域に渡って持続的に薬剤が放出されていくメカニズム(MMX:Multi Matrix System)が施されているのです。

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アサコール、ペンタサとの違い

 

大腸性潰瘍炎に効果がある成分として、5-ASA製剤で初めて作られたのがサラゾスルファピリジン(SASP)(商品名:サラゾピリン)です。サラゾスルファピリジンが体内に入り代謝されることで、スルファピリジンとメサラジンが作り出されて抗炎症作用を発揮していると判明しました。

 

ただスルファピリジンは副作用の原因となる物質でもあったため、「スルファピリジンを取り除いたメサラジンのみを投与すればいいのではないか?」、ということになったのです。

 

しかしメサラジンには欠点があり、そのまま服用したとしてもほとんどが小腸で吸収されてしまい、大腸の病変部位に到達することができません。そこで薬剤の放出速度を遅くすること(徐放性)で大腸に到達できるようにした製剤がペンタサになります。

 

ただしペンタサは徐放性製剤とはいえ、大腸に到達する前、つまり小腸から薬剤の吸収がはじまってしまうため、大腸に到達するメサラジンが減ってしまうという欠点がありました(ただこれは逆に小腸にも作用できるということでクローン病にはメリットになります。)。

 

そこで可能な限り大腸で限定して作用できるように、pH7以上で薬剤が放出されるように改良したのがアサコールになります。

 

今回新たに発売されたリアルダですが、その成分に違いはありません。ですが、今まで使用されていたアサコールとは異なる画期的な部分があるのです。

 

まずアサコールの用法・用量ですが、

用法・用量

通常,成人にはメサラジンとして1日2,400mgを3回に分けて食後経口投与するが,活動期には,1日3,600mgを3回に分けて食後経口投与する。なお,患者の状態により適宜減量する。

アサコール錠400mgの添付文書より引用

となっています。服用回数は1日3回となっており、アサコールは1錠400mgなので1日6~9錠服用する必要があります。

 

一方のリアルダですが、

用法・用量

通常、成人にはメサラジンとして1日1回2,400mgを食後経口投与する。活動期は、通常、成人にはメサラジンとして1日1回4,800mgを食後経口投与するが、患者の状態により適宜減量する。

リアルダ錠1200mgの添付文書より引用

となっています。服用回数は1日1回、錠数も1日2~4錠。MMX(マルチマトリックス)により、少ない服用回数、錠数で効果を発揮できるようになったのです。

 

アサコールの1日3回の服用はアドヒアランスの低下が治療の妨げとなっていました。リアルダの発売で潰瘍性大腸炎の治療はさらに充実していくでしょう。

※アドヒアランス:患者様自身が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること

リアルダの副作用と注意事項

 

リアルダの主な副作用ですが、下痢、腹痛、腹部膨満感、全身倦怠感、頭痛などが報告されています。

 

重大な副作用として注意しなければいけないのは、無顆粒球症や血小板減少などの血液障害、心筋炎、間質性肺炎、膵炎、間質性腎炎などの腎障害、肝炎などの肝機能障害です。これらはリアルダに限らず、ペンタサ、アサコールでも同様に注意が必要な副作用です。

 

リアルダ服用中は定期的な検査が実施されると思いますので、医療機関ですぐに対応できるでしょう。

 

最後に、リアルダは徐放性製剤のため噛み砕かないように注意して下さい。また冷所(凍結を避けて15℃以下)保存となっていますので冷蔵庫で保管するようにして下さい。ただし室温でも1週間程度であれば放置しても問題ありません。

 

それではリアルダについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。