ヒルドイド外用剤(一般名:ヘパリン類似物質外用薬)の保険適応について、厚生労働省でも議論が重ねられ、一般メディアでも話題に上がっています。

 

「美容目的での処方が一定割合を超えており、治療を目的とする処方でないのであれば、保険適応とするべきではない」というのがそもそもの発端です。

 

なぜここまで大きな話題になっているのか考察していきたいと思います。

そもそもヒルドイドとは?

 

ヒルドイドは様々な剤型で発売されている血行促進・皮膚保湿剤です。

 

保険適応では「血栓性静脈炎(痔核を含む)、血行障害に基づく疼痛と炎症性疾患(注射後の硬結並びに疼痛)、凍傷(しもやけ)、肥厚性瘢痕・ケロイドの治療と予防、進行性指掌角皮症、皮脂欠乏症(乾燥肌)、外傷(打撲・捻挫・挫傷)後の腫脹・血腫・腱鞘炎・筋肉痛・関節炎、筋性斜頸(乳児期)」となっています。

 

ヘパリン類似物質は文字通り、血液をサラサラにするヘパリンという薬物と類似の作用を持つ物質です。外用であるためにそれほど強力な作用ではありませんが、塗布部において血液凝固抑制作用と血流促進作用により、鎮痛・腫脹改善効果を発揮します。

 

また、ヘパリン類似物質は多くの親水基によって構成されているため、塗布部において水分保持作用を発揮し、乾燥肌を改善する効果も発揮します。

 

他にも、適応のあるケロイドなど傷痕が盛り上がってしまっている状態は、傷が治っていく過程でコラーゲンが以上に増殖してしまったことによって起きています。

 

ヘパリン類似物質はこのコラーゲン合成の素になっている繊維芽細胞の増殖を抑える作用によって、ケロイドなどの症状の予防・改善にも用いられます。

 

皮脂欠乏症に対して用いる場合は、アトピーなどの基礎疾患がある場合の過度の乾燥肌や、加齢に伴って自然に皮脂が欠乏してしまっている状態に対して保険適応となるでしょう。

なぜここまで大事になったのか?

 

医療費の増大が問題となり、その削減に向けて急務で政府が様々な政策に取り組む中、ヒルドイドの処方量が年々増加している事実が発覚したのです。その額なんと年間93億円。

 

ヒルドイドは古くから美容雑誌や美容ブログで話題にされてきました。「無人島にひとつだけ持っていくならヒルドイド」よくもまあこんなキャッチコピー考えるなと。

 

治療が必要とは考えにくい患者に対して気軽に処方されたり、子供に処方されたヒルドイドローションを母親が乳液代わりに使用し、その効果を絶賛するSNS投稿を行ったりと、明らかに薬機法違反と考えられる事案も見受けられます。

 

子ども医療費助成制度を悪用し、無料でヒルドイドを手に入れて使っている人、生活保護受給者が大量に処方してもらって周りに配ったり、なんて事例も実際にあります。さすがにこれは問題です。

 

この現状に対し、某新聞がヒルドイドの美容目的での使用に対する厳しい意見を掲載したのを皮切りに、多くのメディアでヒルドイドに対する特集が組まれて火種が拡大していったというわけです。

 

医療費削減のため、診療報酬の改定のたびに多くの処方制限が設けられている現状(最近では湿布薬の枚数制限もありました)では、次に処方制限がかけられる可能性が最も高いものはヒルドイドではないかと考えられます。

関連記事平成28年度診療報酬改定~1処方につき湿布薬70枚制限

 

厚生労働省でもヒルドイドの不必要な処方に対しては否定的であり、健康保険組合からも「一部保険適応外とするべきもの」という意見がみられます。

スポンサーリンク

ヒルドイドに美容効果はない?

 

ヒルドイドに美容効果があるのか、実際のところは不明です。

 

美容雑誌や美容ブログでは、美白・美肌・しわを消す・肌に弾力を持たせる・アンチエイジングといった効果を謳っており、大物女優やハリウッドセレブ御用達と書かれている媒体もあります。

 

「化粧品は医薬部外品で効果が弱く、ヒルドイドは医薬品だから効果が高い」というのが根拠のようですが、そもそもの目的としている部分が違うために、ミスリードしているだけだといえるでしょう。

 

確かに保湿効果は高く、皮脂欠乏症に対して効果は期待できますが、美白・美肌を促進する作用はありません。一部の効能効果を過大に表現し、悪意を持って歪められた情報となっているのではないでしょうか。

 

まあそうした方が雑誌は売れるし、ブログやSNS媒体にもアクセスが集まりますからね。

保険適用外はいつから?そうなった場合の購入方法は?

 

ヒルドイドが保険適応外となるのは、早くても2018年4月の診療報酬改定が実施される時になると思います。

 

ただ皮膚科学会から「ヒルドイドの保険適応を外すことは、日常の診療に著しい不利益が生じる」という反対意見も多く、実際にアトピーなどの難治性の疾患を抱える患者にとっては、保険適応外となれば治療に大きな不利益が生まれることになります。

 

本数の制限を設けるのか、単独での処方制限となるのか、それとも適応症を改定し、皮脂欠乏症のみでは適応とならないようにするのかは、今後の検討の結果次第ですね。

 

保険適応外になった場合ですが、自費診療として全額負担でヒルドイドの処方を受けることもできますが、これは現実的ではないでしょう。

 

自己負担は増えますが、OTC医薬品でも同じ成分をもったものが販売されています(例えば下のピアソンHPローション)ので、こちらで対応は可能です。

まとめ

 

ヒルドイドは効果が穏やかな薬であり、副作用も少なく使い勝手が良いことから、多くの疾患に対して処方されてきました。

 

ただ本来必要のない患者に処方され、美容目的での処方が増加したことにより、今後は本当に必要な人にも行き届かなくなってしまうかもしれません。

 

保険適応外となったとしても、同様の成分が含まれたOTC医薬品も販売されているため手に入らないことはありませんが、継続使用が必要な患者では負担が大きくなってしまうことは否めません。

 

できることなら、患者からの求めに従って漠然と処方するのではなく、本当に必要な人にだけ、必要な量が処方されるように検討していただくことを願うばかりです。

 

それではヒルドイドの保険適応については以上となります。最後まで読んで頂きありがとうございました。