今回は漢方薬の呉茱萸湯(ゴシュユトウ)について解説します。

呉茱萸湯の名前の由来

 

構成される4種類の生薬(次項参照)のうち、主薬である呉茱萸をとって呉茱萸湯と命名されています。

呉茱萸湯の作用機序と特徴

 

呉茱萸湯は頭痛・肩こり・嘔吐など、上半身に向かう症状に対して用いられる強い苦みが特徴の漢方薬で、含まれて生薬は大棗(タイソウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、人参(ニンジン)、生姜(ショウキョウ)の4種のみとなっています。

 

呉茱萸湯には即効性があり、切れ味良く効果を発揮することができます。

 

ちなみにうちの嫁は妊娠中に呉茱萸湯を処方されていました。「ただでさえ気持ち悪いのにこんなもん飲ますな!」とキレていましたが、その効果については満足していたようです(笑)。

 

東洋医学では漢方薬の適応を判断するため、個別の患者の状態を判断する「証」という概念を用います。

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呉茱萸湯に適応のある証は虚証・寒証・湿証で、手足が冷えやすく体力が低下気味、胃の辺りに停水がある患者に適しています。特に足が冷えている方により効果的で、体を温めて不要な水分を発散し、血流を改善することで効果を発揮する漢方薬です。

 

添付文書には以下のように記載されています。

効能又は効果
手足の冷えやすい中等度以下の体力のものの次の諸症:
習慣性偏頭痛、習慣性頭痛、嘔吐、脚気衝心

用法及び用量
通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。

ツムラ呉茱萸湯エキス顆粒(医療用)の添付文書より引用

 

漢方薬の科学的な作用機序は明確にされていないことが多く、呉茱萸湯も例外ではありません。ただし、その片頭痛に対する効果は既存の西洋薬よりも顕著であるという研究成果もあり、一部で作用機序の解明が進められています。

 

まず、呉茱萸湯を服用することによって体温維持作用、脳血流増大作用、鎮痛筋弛緩作用が発揮されることが、動物実験によって判明しています。

 

片頭痛を起こしている患者では、健常人に比べてセロトニンの分泌量が低下し、MHPG(ノルアドレナリンの代謝物)が増加している傾向にあります。

 

そこで呉茱萸湯を服用することによって脳血流増大作用がみられ、セロトニンの分泌量が改善してMHPGが低下することがわかっています。

 

セロトニンは疼痛抑制に働く神経伝達物質でもあるため、鎮痛筋弛緩作用も加わって、生理痛などの痛みも緩和できることが考えられます。

 

また、呉茱萸湯には胃内に停滞している水毒が逆流するのを抑える効果があり、東洋医学では胃内停水がしゃっくりの原因と考えているため、しゃっくりの治療に呉茱萸湯が用いられていました。

 

科学的には、呉茱萸湯の持つ筋弛緩作用と血流改善作用によって横隔膜周囲の筋痙攣が緩和し、しゃっくりを改善させていると考えられています。

セロトニン:神経伝達物質の一種で、精神安定効果を持つホルモンです。うつ病などの治療で標的とされているものであり、平滑筋の収縮にも関与して痛みを緩和する効果も併せ持っています。

MGHP:臨床検査値の一つで、尿検査などによっても測定される物質です。ノルアドレナリンの代謝物であることから、脳におけるノルアドレナリン作動性神経の働きを測る指標として用いられています。ノルアドレナリンは交感神経で多く活動しており、血管の収縮などの働きに関与しています。

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呉茱萸湯の副作用

 

呉茱萸湯では副作用の発現頻度は明確になる調査が行われていないため、どの程度の確率で副作用が発現するのかは不明です。しかしながら、重篤な副作用の報告もないために、比較的安全に使用することができる漢方薬と言えるでしょう。

 

その他の副作用として、肝機能検査値の異常、発疹・蕁麻疹などの過敏症状が報告されています。服用中にこれらの症状が現れた場合は、かかりつけの医師、薬剤師に伝えるようにして下さい。

呉茱萸湯の飲み方と注意事項

 

呉茱萸湯は1日2~3回に分けて空腹時に服用するのが効果的です。もし服用を忘れて食事をしてしまった場合には、効果は減弱してしまう可能性はありますが、気づいた時点で服用しても構いません。

 

呉茱萸湯は生薬をお湯に煮出して服用するタイプの薬でしたが、使い勝手を考慮した結果として煮出した薬液を加工し、散剤としたものです。そのため、服用する時には元の形に戻した方が効果的だと言われています。

 

あまりに熱いお湯では、薬効成分が揮発してしまうため、約60℃程度のぬるま湯で溶かして服用するのがよいでしょう。

 

妊娠中の服用に関しては、「治療上の有益性が危険性を上回る場合に使用すること」となっています。

 

呉茱萸湯に含まれている生薬である呉茱萸は、過量投与によって子宮収縮の可能性がわずかに存在します。そのため、妊婦には積極的には用いられない漢方薬です。

 

ただ冒頭でお話したうちの嫁のように、強い吐き気や片頭痛がみられる際には一時的に使用する場合もありますが、自己判断ではなく医師の判断の元に服用するようにしてくださいね。

 

それでは呉茱萸湯については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。