今回は骨粗鬆症治療薬で活性型VD3製剤の「エディロール」についてお話していきます。

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エディロールとは?

 

それでは名前の由来からいきましょう。

 

”革新的創薬技術による新世代活性型ビタミンD3製剤”という事でEffective(効果的な) Vitamin D、Innovative(革新的な)からそれぞれ”E”、”D”、”I”を抜き出し、中外製薬の活性型ビタミンD3ブランドの語尾である”ROL”を組み合わせEDIROL:エディロールと命名されました。

 

エディロールの作用機序を簡単にお話すると「腸からのカルシウムの吸収を促し、破骨細胞の形成を抑えることで骨を丈夫にする」となります。それではまず骨粗鬆症についてお話していきましょう。

骨粗鬆症とは?

 

骨粗鬆症は”骨がもろくなることで骨折しやすくなる病気”のことをいいます。

 

私達の体は毎日古くなった骨を壊し、壊した部分を新しく作った骨で修復しています。これにより健康で丈夫な骨を維持することができるのです。これを骨の新陳代謝、または骨代謝と言います。

 

古くなった骨が壊されることを骨吸収といいます。そしてこれを行っているのが破骨細胞です。逆に骨が新しく作られることを骨形成といい、これを行っているのが骨芽細胞になります。

 

骨吸収と骨形成のバランスが崩れる、つまり骨吸収が骨形成を上回ってしまうと、壊した骨の分を補いきれなくなります。この状態が続くと骨量が減少してしまい、スカスカのもろい骨になってしまうのです。

 

骨粗鬆症は高齢者、そして女性に多く見られます。高齢者は個人差はありますが、一般的に食事量が低下する上、腸管からのビタミンやカルシウムなどの吸収が低下する傾向にあります。

 

また運動は骨に適度な不可がかかり、骨芽細胞を活性化させる物質の分泌を促すのですが、高齢者は運動量が低下するため、骨粗鬆症になりやすいと言えます。運動量の低下は筋力の低下にも繋がるため転倒による骨折のリスクも上がります。

 

女性については閉経後に卵巣の機能が低下すると、女性ホルモンであるエストロゲンが減少するためです。

 

エストロゲンは破骨細胞を活性化する物質、インターロイキン1、インターロイキン6(IL-1、IL-6)や腫瘍壊死因子(TNF-α)などが作られるのを抑える作用を持っています。

 

エストロゲンが減少することで破骨細胞が活性化してしまい、骨粗鬆症になりやすくなる、というわけですね。

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ビタミンD3の代謝について

ビタミンDの代謝について

上の画像をご覧下さい。ビタミンD3の代謝をまとめたものです。

 

ビタミンD3は2つの経路から供給されます。皮膚に紫外線が当たると7-デヒドロコレステロール(別名:プロビタミンD3)がビタミンD3(以下VD3)になります。

 

もう一つが食事由来。牛乳や魚などに多く含まれ、食事によりビタミンD3を摂取します。

 

VD3は肝臓において25-水酸化酵素の働きにより25位が水酸化され、25ヒドロキシビタミンD3[25(OH)D3]に変換されます。

 

続いて腎臓において1α-水酸化酵素の働きにより1α位が水酸化されると1,25-ジヒドロキシビタミンD3[1,25-(OH)2D3]に、24-水酸化酵素により24位が水酸化されると24,25-ジヒドロキシビタミンD3[24,25-(OH)2D3]に変換されます。

 

この1,25-ジヒドロキシビタミンD3[1,25-(OH)2D3]がいわゆる”活性型VD3”になります。つまりVD3は肝臓と腎臓両方で代謝されてはじめて効果を発揮することができるのです。

 

活性型VD3は腸管からのカルシウムの吸収や腎尿細管におけるカルシウムの再吸収を促す作用があります。また骨形成と骨吸収を調整する作用も持っています。

エディロールの作用機序と特徴

エディロール構造

上の図をご覧下さい。ロカルトロールとエディロールの構造になります。ロカルトロールは活性型VD3そのものですが、そこに赤丸で囲った部分(ヒドロキシプロピルオキシ基)を結合したものがエディロールなのです。

 

エディロールは従来のビタミンD3製剤と同様、腸管からのカルシウムの吸収や腎尿細管におけるカルシウムの再吸収を促す作用を持っています。

 

更にヒドロキシプロピルオキシ基が加わったことで破骨細胞が作られるのを阻害し、骨吸収を抑える作用も持ちあわせており、骨折の頻度、骨密度の低下を抑える作用がアルファロールと比較して有意に強いという特徴があります。

 

後半の破骨細胞の形成を抑える作用は、アルファロールやロカルトロールも一応持ちあわせているものの非常に弱く、骨代謝異常に対しては効果は期待できませんでした。

 

エディロールはカルシウム代謝、骨代謝の両方に改善効果が期待できる製剤になります。

 

エディロールは添付文書上、高カルシウム血症又はビタミンD中毒症状を伴う患者には禁忌ではありませんが、ロカルトロールと同様注意が必要です。高カルシウム血症が出現した際には休薬します。

エディロールの副作用

 

特に注意が必要なのは高カルシウム血症です。3~6カ月に1回程度、定期的にカルシウムの測定をします。カルシウム剤を併用している場合は特に注意が必要です。

 

高カルシウム血症の初期症状として吐き気や口の渇き、イライラ感、体がだるくなる、などがあります。このような症状が現れた場合は医療機関を受診するようにして下さい。

エディロールの妊婦、授乳婦に対する影響

 

動物実験において胎児の奇形、乳汁中への移行が報告されているため妊婦、授乳婦の方は禁忌となっています。

 

それではエディロールについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。