今回は新規経口抗凝固薬(NOAC:novel oral anticoagulants)の「リクシアナ」についてお話していきます。

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リクシアナとは?

 

まずは恒例名前の由来からいきましょう。リクシアナは”LIXIANA”と表記するのですが、これは以下2つの言葉が組み合わさってできています。

 

前半の”LI”はReliable(信頼できる)から。後半はリクシアナが作用するFXa(activated coagulation factor X:活性化血液凝固第X因子)からきています。一般名はエドキサバンになります。

 

リクシアナの作用機序を簡単に説明すると「第Xa因子に作用することで血栓の形に関与するトロンビンが作られるのを抑える」となります。

 

リクシアナの適応は以下3つです。

効能又は効果/用法及び用量

○非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制
通常、成人には、エドキサバンとして以下の用量を1日1回経口投与する。
体重60kg以下:30mg
体重60kg超 :60mg なお、腎機能、併用薬に応じて1日1回30mgに減量する

○静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制
通常、成人には、エドキサバンとして以下の用量を1日1回経口投与する。
体重60kg以下:30mg
体重60kg超 :60mg なお、腎機能、併用薬に応じて1日1回30mgに減量する。

○下記の下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制
膝関節全置換術、股関節全置換術、股関節骨折手術
通常、成人には、エドキサバンとして30mgを1日1回経口投与する。

リクシアナの添付文書より引用

それではまず心房細動と心原性脳塞栓症について簡単にお話していきましょう。

心房細動と心原性脳塞栓症について

 

心房細動は不整脈の1つです。心臓は洞結節と呼ばれる部分から発せられた電気的刺激により収縮するのですが、この刺激が消失せず心房内で旋回(リエントリー)し、心臓が興奮しっぱなしの状態になることにより起こるのが心房細動です。

 

ある意味心臓はけいれんを起こしたような状態になってしまいますので、不規則に収縮することになり、血流が悪くなることで血栓ができやすくなってしまいます。

 

この心臓でできた血栓により起こるのが心原性脳塞栓症です。文字通り心臓にできた血栓が脳に運ばれて、脳内の血管が詰まってしまうタイプの脳梗塞になります。

 

脳ではなく心臓でできた血栓が原因のため突然発症します。また症状は重いことが多いため、なんとしても予防する必要があります。

静脈血栓塞栓症について

 

静脈血栓塞栓症とは文字通り静脈に血栓ができてつまってしまう病気であり、深部静脈血栓症肺血栓塞栓症があります。

 

深部静脈血栓症は下肢に血栓ができてつまってしまい、腫れ、痛み、発赤、表面の静脈が拡張するなどの症状が現れる病気。肺血栓塞栓症は下肢でできた血栓が血流に乗って肺に到達し肺を詰まらせてしまう病気で、胸が苦しい、痛い、呼吸が苦しい、冷や汗が出るなどの症状が現れます。

 

深部静脈血栓症は入院など、ベッドで寝ている時間が長くなることなどが原因で血流が悪くなることに加え、血液が固まりやすくなる条件(妊娠や出産、癌など)や血管壁の障害(外傷や手術など)などが合わさって起こるとされています。

 

肺血栓塞栓症は例えば手術後ずっと寝ていたのに、はじめて立ち上がったりした時やトイレに起きた時など、血流が一気によくなることで血栓が肺に運ばれることにより起こりやすくなります。

凝固系と線溶系について

 

続いて凝固系と線溶系についてお話していきます。例えば血管が傷ついて出血したとします。するとその出血を止めるため傷ついた場所に血小板が集まって塊を作りとりあえず止血します。これを一時止血といいます。一時止血はいわば応急処置であるため、これだけでは血液に流されてしまいます。

 

そこで血液を固めるのに必要な成分である凝固因子がやってきて次々に活性化することでプロトロンビンがトロンビンになり、トロンビンはフィブリノーゲンをフィブリンにすると同時に第XⅢ因子を活性化(第XⅢa因子に)する作用を持ちます。

 

フィブリンは網目状の膜であるフィブリン網を作り、その中に血小板等を取り込み、更に第XⅢa因子の働きにより安定した血栓が作られることで止血が完了します。これが二次止血です。

 

凝固系と線溶系

今お話した一連の流れを凝固系といいます(上図左側。クリックで拡大します)。さて止血したのはいいですが、そこには血栓ができているため正直邪魔ですよね。このままでは血流が悪くなってしまいます。そこで登場するのがプラスミンです。

 

血管内に血栓ができるとt-PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)がプラスミノーゲンをプラスミンにします。プラスミンはフィブリンを分解、つまり血栓を溶解する作用を持っています。この一連の流れを線溶系(上図右側)と言います。

 

プラスミンは通常プラスミノーゲンとして存在しており、必要な時だけプラスミンになります。当然ですよね。血が止まらなくなってしまいますから。

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リクシアナの作用機序と特徴

 

凝固系と線溶系

先ほどの図をもう一度見てみましょう。最終的にフィブリンが作られるのを抑えれば血栓の形成を抑えることができます。

 

「ここに作用すればいいのでは?」と思われる部分がたくさんありますが、リクシアナが作用するのは第Xa因子です。第Xa因子はプロトロンビンをトロンビンにする働きを持っています。

 

リクシアナにより第Xa因子の働きが抑えられるとトロンビンの生成が抑えられるため、結果的にフィブリンの生成が抑えられることになります。これにより血栓が作られるのを抑えることができるのです。

 

リクシアナはCYPの代謝を受けるものの、その割合は10%以下とされています。服用後吸収された薬物のうち約50%が未変化体として腎臓から排泄されます。つまり腎機能が悪い方では血中濃度が上昇し、出血のリスクが高まります。

 

そのため、非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制、静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制では腎不全(クレアチニンクリアランス15mL/min未満)の患者、下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制では高度の腎機能障害(クレアチニンクリアランス30mL/min未満)のある患者には禁忌となります。

リクシアナの副作用

 

血液をサラサラにするわけですから、出血しやすくなるというのは想像に難くないと思われます。そのため出血している方は禁忌となります。

 

青あざができたり、鼻血や歯茎からの出血、血尿などがみられた場合は医療機関を受診して下さい。当然ですが、他の血液をサラサラにする薬と併用する場合特に注意が必要です。

リクシアナの相互作用と注意事項

 

リクシアナはP-糖蛋白を阻害するHIVプロテアーゼ阻害剤、アゾール系抗真菌剤、マクロライド系抗菌薬などは併用注意となっており、両者を併用する場合はリクシアナを減量する場合があります。

 

P-糖蛋白とは細胞内の薬物を細胞外に排出するポンプであり、これが阻害されるとリクシアナの血中濃度が上昇し、出血のリスクが高まるため、お薬手帳は忘れずに医師、薬剤師に見せるようにして下さい。

 

また妊婦又は妊娠している可能性のある女性についてはイグザレルトと違い禁忌ではありません。ただ動物実験において、胎児への移行が認められており、妊婦にして使用経験がないため安全性は確立しておらず基本は使用を控えます。

 

授乳についても動物実験いて乳汁中への移行が報告されていますので服用中は授乳を避ける必要があります。

 

またリクシアナはその作用から出血しやすくなるわけですから、手術前に一時的に服用を中止します。添付文書上では手術の24時間以上前とされていますが、これは医療機関によっても異なる場合があります。主治医の指示に従って下さいね。

 

それではリクシアナについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。