今回は漢方薬の茯苓飲(ブクリョウイン)について解説します。

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茯苓飲の名前の由来

 

構成される6種類の生薬のうち、主薬の茯苓の名前をとって、茯苓飲と命名されています。

茯苓飲の作用機序と特徴

茯苓飲は胃炎・胃アトニー・溜飲に適応を持つ漢方薬で、含まれている生薬は茯苓(ブクリョウ)、蒼朮(ソウジュツ)、陳皮(チンピ)、人参(ニンジン)、枳実(キジツ)、生姜(ショウキョウ)です。

 

本来の配合では蒼朮ではなく白朮が用いられるものですが、目的とする症状に対しては発散効果に優れる蒼朮の方が効果的だと言えるでしょう。

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東洋医学では漢方薬の適応を判断するため、個別の患者の状態を判断する「証」という概念を用います。

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茯苓飲に適応のある証は虚証・寒証・水滞で、体力が低下気味で冷え性、むくみやすく尿量が低下しており、胸やけがある人に向いている漢方薬です。

 

添付文書には以下のように記載されています。

効能又は効果

吐きけや胸やけがあり尿量が減少するものの次の諸症:
胃炎、胃アトニー、溜飲

用法及び用量

通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。

ツムラ茯苓飲エキス顆粒(医療用)の添付文書より引用

 

漢方薬は薬理的な作用機序が解明されていないものが多く、茯苓飲も例外ではありません。そのため、含まれている生薬からその効果を推察する必要があります。

 

茯苓飲に含まれている生薬は、体を温めて余分に溜まった水分を排泄させる働きを持つものです。

 

体内の水分量を調節して適正量となるように調節する茯苓、体内に溜まった水分を発散させる蒼朮、滋養強壮効果の人参、体を温めて胃腸の状態を整える陳皮・生姜に加え、特に胃部付近の緊張を緩和する効果をもつ枳実が配合されており、総じて胃腸の働きを賦活化して炎症を抑え、効果を発揮すると考えられます。

 

同様の効果を持つ漢方薬に、六君子湯という漢方薬があります。六君子湯は茯苓・蒼朮・陳皮・生姜に加えて、半夏・大棗・甘草を含む方剤になります。

 

茯苓飲では茯苓・蒼朮・陳皮・生姜に加え、枳実が配合されているため、効果の差は半夏・大棗と枳実の違いによって生まれていると考えることができます。

 

六君子湯では茯苓飲と比べ、胃腸虚弱があって悪心・吐き気が出ている症状に効果的となっています。茯苓飲では六君子湯にはない枳実の働きにより、蠕動運動を活性化させる効果が期待できるため、胃部膨満感が顕著な場合に効果的だと言えるでしょう。

 

また茯苓飲は逆流性食道炎に効果が期待できる漢方薬として考えられており、適応症にも溜飲(りゅういん)が記載されています。溜飲とは「消化不良で胃部に溜まった飲食物により、胃酸がせりあがる症状」を指していて、これは逆流性食道炎の症状にも当てはまります。

 

西洋医学では逆流性食道炎の原因となる胃酸の分泌を抑え、逆流したとしても胃酸によって食道に炎症を起きないようにする対処療法が第一選択です。

 

ただしこの治療では、服薬を中止すると胃酸の分泌が再度活性化してしまい、逆流性食道炎の再発が多いことも問題となっています。

 

茯苓飲は蠕動運動の活動を正常化させる効果があるため、胃内部に溜まった消化不良の飲食物の消化促進効果を発揮し、逆流性食道炎の起きる根本的な原因を改善する可能性が示唆されています。

 

この効果により消化不良の飲食物による胃壁への刺激がなくなるため、げっぷや胃部膨満感の緩和や胃酸の過剰分泌も緩和すると考えられ、食べ過ぎ・胃もたれにも効果を発揮すると考えられています。

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茯苓飲の副作用

 

茯苓飲では副作用の発現頻度が明確になる調査を行っていないため、その詳しい発生頻度は不明です。ただし、重大な副作用の報告はないため、比較的安全に使用できる漢方薬だと言えるでしょう。

 

報告されているその他の副作用は、発疹・蕁麻疹などの過敏症状などがあります。服用中にこれらの症状が現れた場合は、かかりつけの医師、薬剤師に伝えるようにして下さい。

茯苓飲の飲み方と注意事項

 

茯苓飲は1日2~3回に分けて空腹時に服用するのが効果的です。もし服用を忘れて食事をしてしまった場合には、効果は減弱してしまう可能性はありますが、気づいた時点で服用しても構いません。

 

服用に当たっては、約60℃のぬるま湯で溶かして服用する方が効果的だと言われています。あまりに熱いお湯では薬効成分が揮発する可能性があるため、注意してください。

 

妊娠中の使用に関して、添付文書では「有益性が危険性を上回る場合に使用すること」となっています。ただし、含まれている生薬が胎児や母体に悪影響を与える可能性は低いと考えられます。とはいえ、自己判断ではなく医師の判断の上で使用するようにして下さいね。

 

それでは茯苓飲については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。