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βラクタム系抗菌薬の構造・作用機序とポイント|抗菌薬の基礎1

ペニシリンG

不定期になりますが、抗菌薬の基礎についてお話していきたいと思います。初回はβラクタム系抗菌薬の作用機序とポイントについて解説していきます。

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βラクタム系抗菌薬とは?

 

βラクタム環

βラクタム系抗菌薬にはペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系、モノバクタム系、ペネム系などがあります。いずれも上図のようなβラクタム環と呼ばれる構造を有しているのが特徴です。

 

抗菌薬と抗生物質はほぼ同じと思って頂いて結構です。色んなところで書かれていますが、ちょっとかじっている人は抗菌薬と言う人が多いですね。一応説明しますと、抗生物質は天然物(又はそれを加工した物)を指します。

 

つまり…「天然物(又はそれを加工した物)+人工的に作った物=抗菌薬これでOKです。

βラクタム系抗菌薬の作用機序

 

βラクタム系の作用機序は細胞壁合成阻害となっています。これだけだとよくわからないと思いますのでもう少しだけ詳しく見ていきましょう。

 

細胞壁は細菌の最も外側にある丈夫な膜で、主にペプチドグリカンという物質で構成されています。そしてペプチドグリカンを合成する酵素の一つにペニシリン結合タンパク(PBP:penicillin‐binding protein)があります。

 

細胞壁を合成するにはペニシリン結合タンパクが必要です。ペニシリン系をはじめとするβラクタム系はペニシリン結合タンパクと結合し、ペニシリン結合タンパクを不活化(働きを失わせる事を)します。

 

ペニシリン結合タンパクの本来の働きはD-アラニル-D-アラニン(細胞壁合成酵素の基質:D-Ala-D-Ala)と結合してペプチドグリカンを合成すること。

 

しかしβラクタム系抗菌薬とD-Ala-D-Alaの構造が似ているため、ペニシリン結合タンパクはβラクタム系抗菌薬をD-アラニル-D-アラニンと誤認して結合してしまうのです。

 

もう少しわかりやすく言いましょうか。例えば釣りで使用するルアーなどの疑似餌を使うと魚が餌と勘違いして喰いつきますよね?あれみたいなものです。

 

つまり…

魚:PBP

本物の餌:D-Ala-D-Ala

疑似餌:βラクタム系抗菌薬

こんな感じです(笑)。ちょっと両者の構造を見てみましょうか。

ペニシリンG-D-Ala-D-Ala

めちゃくちゃ似ていますよね。こりゃ体も間違うわけです。ちなみにこのような阻害の仕方を競合阻害といいます。これにより、細胞壁合成の最終段階の過程が阻害されることで細胞壁が薄く、脆くなっていきます。

 

細胞壁が正常であれば細胞内外の浸透圧(濃度の低い方から高い方へ水が移動する力)の差に耐えられますが、細胞壁が薄くなるとそれに耐え切れず破裂してしまうのです。これを溶菌といいます。

 

さてβラクタム系は細菌を死滅させるため、殺菌的抗菌薬に分類されます。よく目にする殺菌性、静菌性について簡単に説明しておきましょう。

 

殺菌性とは「細菌を死滅させる事」、静菌性とは「細菌の増殖を抑制する事」を意味します。

 

通常、体内に侵入して感染を惹起(引き起こす)した細菌は好中球等により貪食される(飲み込んで死滅させます)わけですが、どちらのタイプの抗菌薬を使用するにしても、患者さん自身の生体防御能(免疫力)が重要になってきます。

 

ただ静菌性抗菌薬はあくまで増殖抑制のため生体防御能が特に重要だという事がご理解頂けると思います。

 

 

またβラクタム系抗菌薬は細菌に選択的に作用することができますが、その理由をご存知ですか?それは細胞壁はヒトには存在しないから

 

同様に細胞壁を持たないマイコプラズマ、細胞壁にペプチドグリカンを含まないクラミジア等に対してもβラクタム系抗菌薬は無効のため注意が必要です。

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βラクタム系の注意事項

 

有効菌種ですが、ここではβラクタム系とざっくりまとめてしまっていますので別項で解説したいと思います。

 

βラクタム系抗菌薬は半減期(薬成分の血中濃度が半減するまでの時間の事)が1時間程度と短いため、頻回の投与が必要となります。

 

未だに行われている”なんでもかんでも1日2回 朝・夕”、”CRPが少し下がったから1日1回に減量”といった使い方では抗菌薬の効果が十分発揮されないどころか耐性化にもつながるため、可能な限り避けなければなりません(ただし例外的に1日1回でよいものもあります)。

 

中途半端が一番良くないのです。使う時はMAXで、止める時はスパッと止めるこれが基本です。しかしそれを実現するには医師だけでなく、看護師の協力が必要不可欠です。実際患者に1日4回とか投与するのは看護師ですからね。ただ最近は結構理解してもらえるようになりました。

 

またβラクタム系に限りませんが、国内の保険用量は海外と比較して少ない物が多々あり、その量では十分な効果が得られない場合があるのです。例えばペニシリン系のピペラシリン(商品名:ペントシリン)なんてようやく1日16gまで使えるようになりましたよね。それまでは1日8gまでしか使えませんでしたから。

 

感染制御部門で著名な先生方が適正使用を推進されており、少しづつですが改訂されつつあります。サンフォード感染症治療ガイドを見てその通り処方したら査定されることもあります(コメント付けても!)。

 

最近の支払基金の査定はすごいですよね。何でも請求内容と添付文書の内容を照らし合わせて、少しでも相違があると自動的に弾くようなシステムが導入されているとか…そりゃ査定件数も増えるわけだ。

 

さて、愚痴はこの辺にしておきましょう。以上がβラクタム系の作用機序になります。最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

βラクタム系抗菌薬についてもう少し詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。

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